2013年03月16日 (土)「短時間勤務で保育園退園」見直しを


待機児童問題が一向に解消しない中、保育園に入る競争は激化し、より長い時間働く親、そして子どもがより小さい時期に職場に復帰する親が優先される状況になっています。
こうした中、育児中の保護者が勤務時間を短縮できる「短時間勤務制度」が事実上、利用できなくなるような行政のルールがあり、東京・世田谷区では先月、親の会が区に対し見直しを求めました。
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【自治体に見直し求める動き】
東京・世田谷区では育児休業明けに保育園への入園を希望する保護者が短時間勤務を利用する場合、入園の選考で4年前から特別なルールを設けています。
それは
  ・短時間勤務の利用が4歳までの場合、
   入園選考でフルタイム勤務の人と同様の優先順位とする
  ・ただし、5歳になっても短時間勤務を続ければ退園を求める   というものです。
つまり4歳までならば短時間勤務は使えるけれど、5歳になったらフルタイムに戻ってくださいね、ということです。20130316taisho05.jpg

入園選考の際に「5歳になっても利用する」とした場合は優先順位が下がります。これは待機児童が解消できない中、より長時間働く保護者の子どもに入ってもらおうという考えに基づいています。ただ、待機児童数が786人と全国4位(平成24年4月時点)の世田谷区では、「5歳でも短時間勤務を利用する」とした場合、保育園に入るのが極めて難しくなることを意味します。

このルールについて「多様な働き方が認められない制度はおかしい」などとして保育園に通う保護者などで作る会が先月、世田谷区に対し見直しを求めました。
20130316taisho02.jpgこの会には「通勤時間が長いため、短時間勤務せざるを得ない」や「企業に対しては短時間勤務制度を設けるようによびかけている行政が、事実上、制度を使えなくするルールを作るのは疑問だ」といった声が寄せられているということです。

世田谷区の担当者は「保育園が足りず、入園を希望する人の間で公平を保つために導入している。労働と家庭生活のバランスも大事なので今の制度がよいかどうか検討していきたい」としています。
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【短時間勤務の定着と入園ルールの広がり】
短時間勤務の制度は以前は大企業のみに義務付けられていましたが、去年から中小企業も含むすべての事業主に拡大されました。国の調査によりますと去年10月の時点で短時間勤務制度がある事業所は64.5%にのぼり、このうち半数以上が子どもが3歳を超えても利用できるなど法律を上回る制度となっています。

短時間勤務制度の広がりにあわせるように、短時間勤務の利用者が保育園に入りにくくなるルールが生まれてきました。

NHKが去年4月の時点で待機児童が150人以上いる全国の自治体を調べたところ、世田谷区のほか東京・練馬区、東京・江東区、東京・府中市でも保護者が短時間勤務を長期間利用したり、入園の申し込み時点ではフルタイムとしていた人が復帰後、短時間勤務に変わったりした場合、子どもが退園となるルールを設けていることが分りました。すでに、一部の自治体では実際に退園になった子どもも出ています。


保育制度に詳しい淑徳大学の柏女霊峰教授は「いろいろな方法を組み合わせれば、待機児童の対策はできるのに、そこが十分でないまま保護者の働き方の問題に収れんさせるのは適当ではない。子どもの最善の利益は何かをもっと考えるべきだ」と話しています。
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【取材後記】
保育園に入園できなかった保護者の集団異議申し立ての際にも取り上げましたが(http://www.nhk.or.jp/seikatsu-blog/200/147724.html)本来、保育が必要な人に自治体は保育を提供する義務があります。

ところが、入園希望者が多過ぎる場合に限って選考できるとの規定が抜け道になって、待機児童はいつまでたってもなくなりません。それどころか、待機児童問題が深刻な地域では、選考の基準が年々精緻になっています。両親の労働時間に加えて、保育園に通う兄弟がいるかどうか、親の所得、子どもを認可外の保育園にどのくらいの期間預けているのか、さらには何年住み続けているのかを考慮する自治体も出てきました。

働くためにこどもを預けるのに、預けるために働き方を変えなければならないところまで来ています。

保育園の入園選考で公平性が保たれることはもちろん重要です。ただ、保育の必要な子どもはすべて入れるようにしてほしい、子育て世代の、そしてこれから子どもを持つかもしれない世代の切実な願いだと思います。

投稿者:内田明香 | 投稿時間:06時00分

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