2020年03月17日 (火)"忘年会スルー"ってなに?


※2019年12月9日にNHK News Up に掲載されました。

師走に入り、忘年会シーズン真っ盛り。でも毎日飲み会続きで胃腸がつらい…というのは、もう過去の話かもしれません。日本のお父さんたちが大切にしてきた“飲みニケーション”が、若手になかなか受け入れられなくなる中、忘年会の姿も変わりつつあるようです。皆さんの会社は、忘年会する?それともスルー?

ネットワーク報道部記者  成田大輔・大窪奈緒子
前橋放送局記者  西山典男

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忘年会はあった方がいい?

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忘年会シーズンまっただ中、皆さんがどう思っているのか、先週の金曜日、サラリーマンの街、東京・新橋で聞きました。

新人サラリーマンは…  
「忘年会は古くさいけど交流の場は必要」
24歳女性は…
「部長と踊って仲良くなった」
別の新人サラリーマンは…
「上司に気を遣うのが嫌です」

“忘年会スルー”

ネット上には職場の忘年会に参加しない“忘年会スルー”という声が多くみられます。

bounennkai.191209.3.jpg「忘年会0回」が31%
少し驚いたデータもありました。時計メーカー、「シチズン時計」がビジネスマン400人に今年の職場や取引先との忘年会の見通しを尋ねたところ、1回が50%、0回が31%だったそうです。10人に3人が忘年会ゼロなんです。

bounennkai.191209.4.jpgまた、忘年会の適切な時間について尋ねると、およそ90%の人が、「2時間以内」と回答。

一方で、プライベートな忘年会の場合は、70%以上の人が「2時間以上」でした。どうせ飲むなら気の合う仲間とじっくり話したいという傾向がうかがえます。

飲み代、会社が払ってくれるってよ

職場での「飲みニケーション」は消えていくのか。そう思って調べていくと、なんと会社が飲み会の費用を負担してくれる”飲んべえ”にはたまらない会社が見つかりました。

東京・港区のIT企業「Chatwork」です。従業員はおよそ100人。

ビジネス用のチャットサービスを提供しているこの会社では、従業員同士のやりとりの多くがチャットを通じて、行われています。さらに、2年前にオフィスの移転で開発部門と営業部門のフロアを分けたため、社員同士の対面でのコミュニケーションをどう進めていくかが悩みの種でした。

bounennkai.191209.5.jpgそこで、この会社では、お互いのフロアの真ん中にバーカウンターを配置。仕事が終わった後で、酒を飲みながら交流できるようにし、月に1回、1人1400円まで会社が費用を負担します。また、3か月に1回開かれる会社全体の飲み会は、1人4000円まで補助されるということです。

bounennkai.191209.6.jpg20代の女子社員は、「前の会社では飲み会に参加しないタイプだったんですけれど、社内で開かれているので仕事終わりでも来やすいです。自分で4000円、5000円払って上司の話を聞かなくちゃいけないというのは、すごいハードルが高いんですけれど、お金も出るし、ごはんを食べられる感覚で来られるのは大きいです」と話していました。

飲み会が頻繁に開かれ、多くの人が参加することで、部署を越えた横のつながりができ、お互いに仕事の相談などもしやすくなったといいます。

bounennkai.191209.7.jpgChatwork人事部の内田良子マネージャーは「飲み会も福利厚生の一環です。対面でコミュニケーションを取るということで、楽しく創造的に働くというのを体現していきたい」と話しています。

ランチ忘年会 急増中!

bounennkai.191209.8.jpg一方で、最近、注目を集めているのが「ランチ忘年会」です。料理の宅配サービスを行う「マンチーズケータリング」によりますと、一年で最も注文が多いのが、忘年会シーズンの12月。注文は去年の2倍に増えていて、半数近くがお昼の注文だといいます。

bounennkai.191209.9.jpg発熱材を使って社内でも簡単に熱々にできる「おでん」や、「ありがとう2019」というプレートがついたカップケーキなどが忘年会の雰囲気を盛り上げます。

bounennkai.191209.10.jpg「マンチーズケータリング」を運営する「ノンピ」の光山徹圭 執行役員は、「ここ2、3年で一気に増えているように感じます。移動時間もかからないので、限られた時間でできるし、社内で開くことで、情報漏えいのリスクも軽減できると考える人が多いようです」と話していました。

酒は無くともコミュニケーションは可能

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毎月2回、ランチ会を開いているのが東京・港区にある企業の広報などを扱う「PR TIMES」です。子育てなどで夜の飲み会に参加出来ない社員が増えてきたため、みんなが参加出来る昼の時間に社員同士のコミュニケーションを図ろうと、取り組んでいます。

bounennkai.191209.12.jpg2歳の子どもがいる小林保さんは、子どもの送り迎えや夕飯を作るため、時短で働いていて、夜の飲み会は参加することが出来ません。ランチ会は午後の仕事もあるため飲み物はお茶ですが、その分、会話に集中することができる感じが楽しいと言います。

小林さんは、「夜の飲み会に参加出来ないのは少し悔しい思いもあったので、昼でカバーできるのはいいと思います。今は働き方がすごく多様化しているので、今後も広がっていくといいなと思います」と話していました。

bounennkai.191209.13.jpg「PR TIMES」の名越里美 執行役員は「若い人が上司と飲むのに抵抗がある気持ちもすごく分かります。必ずしも飲み会の場で誰かに連れて行かれて話を聞くというのではなくて、今はもっと個人と個人がコミュニケーションをフラットに取った方がいいと思います。飲み会の形にこだわらなくても同じテーブルで一緒になった人たちが、会話できる場所が作れればいいのかなとも思っています」と話していました。

面倒な幹事業務は“外注”で

外部パワーを借りることでなんとか忘年会を開こうという動きも広がっています。

東京・品川区にあるブライダル事業を展開する会社のイベント代行サービス部門「イベモン」では、「幹事代行サービス」を行っています。

幹事業務を若手や新入社員に頼むことが、「パワーハラスメントにあたるのでは?」「景品を買いに行かせるのは残業になるのでは?」などと懸念して、リスク管理のひとつとして企業からの依頼が年々増えているそうです。

コミュニケーションを図るため、「上司と部下」、「役員と新人」など立場の違う人材でチームを組んでゲームをするイベントも用意しているということです。歩数計をつけて制限時間内に歩数を競うゲームもあるそうです。

bounennkai.191209.14.jpgまた、渋谷区のイベントプロデュース会社「マックスプロデュース」にも結束力を高めたいという企業からの忘年会の依頼が複数入っていて、桑原裕文社長は「転職が当たり前になる中、会社のビジョンを社員と共有して働く意欲につなげたいというねらいがあるのではないか」と話していました。


結局はふだんのコミュニケーション!

“忘年会スルー”について取材をしていると「その気持ちすごくわかる」という声をよく耳にしました。

さらに忘年会の幹事については、なんとか会を盛り上げようと頑張っても参加人数が集まらずに大変な思いをしたという人も何人もいました。

その一方で会社を取材すると、働きやすい職場作りのために忘年会をきっかけに社員同士のコミュニケーションをはかろうとする動きが広がっていると思いました。

1年に1度の忘年会くらいはみんなで集まって飲んでもいいじゃないかという声も聞こえてきそうですが、結局はふだんのコミュニケーションをどうとっていくのか、みんなが楽しい雰囲気で働けるよう、アイデアを出し合うことが求められているのではないかと感じます。

投稿者:成田大輔 | 投稿時間:15時00分

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