2015年10月15日 (木)相次ぐ事故 どうする?組み体操


この秋の運動会や体育祭でも、多くの学校で、組み体操が披露されました。そんななか、子どもたちが何段にも積み上がる「ピラミッド」や「タワー」などで事故が相次いで報告され、問題となっています。
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【10段ピラミッド崩れ骨折】
9月末、大阪・八尾市の中学校で開かれた体育祭で、1年生から3年生の男子生徒157人が参加した10段ピラミッドが崩壊。1人が腕を骨折したほか、5人が軽いけがをしました。

kumi2015-10-15-2.jpgこの学校では、去年も2人の生徒が10段ピラミッドによる事故で足首や足の指を骨折していたほか、1人がタワーから落ちて指を骨折するなど、去年組み体操で合わせて4人が骨折していました。学校では今年の組み体操をどうするか教員の間で議論しましたが、生徒に達成感を味わってほしいとして、ピラミッドの周りに配置する教員を増やすなど安全対策を強化した上で、10段のピラミッドを継続することを決めたということです。横川一敏校長は「組み体操で起きるけがへの認識が甘かった。生徒に申し訳ない。リスクの高い技に挑戦させてしまったことは判断が誤っていたと反省している」と話しています。

【タワーから落下で後遺症も】

kumi2015-10-15--5.jpg全国の学校で、組み体操の最中に起きた事故は、1年間だけで8500件以上。そのうち2200件あまりが骨折です。頭部や首、腰などの体幹部のケガが多いのも特徴で、中には深刻な後遺症が残るケースもあります。

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千葉県に住む小学6年生の男の子は、ことし5月、組み体操の練習中に大けがをしました。3段タワーの1番上から転落したのです。転落時の状況について男の子は、「ポーズをとった後、しゃがむ時に下の段がぐらぐらして耐えられず、左後ろに勢いよく落ちました。自分はもう死ぬんだなと思って、すごく怖かった」と振り返ります。男の子は頭の骨が折れて頭蓋内で出血し、事故の翌日、緊急の手術を受けました。

kumi2015-10-15--6.jpg事故から5か月ほど経ちましたが、頭にけがをした影響で、男の子は左耳の聞こえが悪くなり、難聴と診断されました。耳鳴りも続いていて、ざわついたところでは人の声が聞こえないといいます。母親は、「今、息子はこうして元気にしていますけれども、一歩間違えば死んでいたかもしれない。半身不随だったかもしれない。組み体操で事故にならなければ難聴になることもなかったし、本人もこんなに苦しむことはなかったので、とても残念です」と話しています。

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【組み体操相次ぐ事故】
男の子の手術を行った松戸市立病院小児脳神経外科の宮川正医師は、今年春の運動会シーズンに、組み体操の事故で運ばれる子どもが相次いだことから、頭にけがをして、この病院で治療を受けたケースについて過去にさかのぼってカルテを調べました。

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その結果、今年春までの9年間に治療を受けた子どもは24人。けがの原因で最も多かったのは、子どもたちが円形に積み上がるタワーだったことがわかりました。なかには、後頭部から地面に落下し、その上に別の子どもが落ちたケースも、カルテに記されています。転落や転倒で頭を強く打って脳しんとうを起こしたり、頭蓋骨を骨折したりするなど、命に関わるケースもありました。

0915_06_ishi.jpg宮川医師は調査結果について、「多くの場合は軽傷ですむが、生命に危険が及んだり、後遺症を残したりする外傷を負う危険性があるので、重大な事故が起きる前に組み体操は止めた方がいい」と話しています。

投稿者:松岡康子 | 投稿時間:12時40分

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