2016年07月07日 (木)どうすれば見つけられる?30代の乳がん
※2016年6月27日に放送されたものです。
ことし6月、歌舞伎俳優の市川海老蔵さんが、妻の小林麻央さんが、乳がんの治療を続けていることを明らかにしました。
麻央さんは33歳です。
乳がんにかかりやすい年齢のピークは4、50代ですが、30代から徐々に増え始めます。いま、30代の女性の間で、乳がんへの関心が高まっています。
どうすれば早期での発見につながるのでしょうか。
【とても忙しい女性の30代】
東京都内に夫と6歳の双子と一緒に住む38歳の女性は、ことし3月、右の乳房に、2センチほどの乳がんが見つかりました。がんは初期の段階で、女性はがんの部分だけを切除する手術を受けました。7月から、再発を防ぐための放射線の治療が始まります。
女性は正社員として働きながら、2人の子育てや家事に追われる日々を送ってきました。
出産以降、病院に行くと言えば子どもの検診や予防接種ばかりで、自分の健康を気にかける余裕はありませんでした。
女性は「子育てをしながら自分の体のメンテナンスとかをする余裕がなくて本当に全て後回しにしていました」と話しました。
【30代女性に広がる不安】
家事に育児、そして仕事。
自分の健康に向き合う余裕のない30代の女性たちの間では、小林さんの報道を受け、不安の声が広がっています。街で30代の女性に話を聞くと、
「30代は乳がんになるというイメージがなかったので怖いと思いました」
「人ごとではないと思いました」などと話していました
1歳の子どもを持つ母親たちが育児サークルを訪ねると、いずれも、報道後、乳がんの話をよくするようになったということで、「乳がん検診を受けた方がいいと思った人は?」と問うと、ほとんどの人が手を上げました。
【30代には有効でないマンモグラフィ検診】
30代の母親たちの間で、
乳がん検診への関心が高まっています。
しかし、国が推奨しているマンモグラフィと言われる乳がん検診は40歳以上向けで、30代は対象になっていません。
マンモグラフィは乳房を平らにし、X線で撮影する検査です。左側は40代の女性の画像。乳がんは白い塊のようにうつります。
一方、右側は30代の女性の画像。
30代以下では母乳を分泌するための乳腺の密度が濃いため、
全体的に白く写ってしまい、がんを見つけにくいのです。
【検診ではなく、まずセルフチェックを】
では、どうすれば良いのでしょうか。
日本乳がん学会の理事長、中村清吾医師を訪ねると、「乳房のがんは体表にあり自分で触ってわかります。自分の普段のコンディションを知っておくことが非常に大切です」と話し、30代の女性は、まず自分の乳房の状態を日ごろからチェックし、何か異常を感じたら、乳腺の専門医の診察を受けるようにする必要があると説明していました。
【チェックポイント①時期】
乳房のチェックの仕方も聞きました。
まず、チェックの目安は月に1回程度で、
重要なのは、そのタイミングです。
生理の前は胸が張りやすいので避け、生理が終わった後4日~1週間目の胸が柔らかい時期に触って確認します。
【チェックポイント②目で確認】
具体的なチェックの方法です。まず、両手を挙げて、鏡を見ながら、引きつれやくぼみが無いか、また、乳首から分泌物がないか確認します。
【チェックポイント③触って確認】
そして、乳がんの症状として代表的なしこりがないか、手で触ってチェックします。
入浴時、石けんなどをつけて滑りやすくした上で、少し強めに指の平で、かたいしこりがないか確認します。乳がんのおよそ半数は、乳首を真ん中に四分割した時の外側の上に最もできやすいということで、乳がんができやすい場所を中心に全体をチェックします。
また、脇の下にできる場合もあるので、胸から脇にかけてもしっかりチェックします。
中村医師は、しこりの見極め方について、「指の平にこつんと当たるようなしこりがあったときは、そこに本当のしこりがある可能性があります。ガンの場合はゴツゴツした感じ、表面がなめらかではないのです」と説明しました。
【妊娠・授乳中もチェックを】
妊娠中や授乳中の人も月に1回程度チェックします。頻繁に胸が張る授乳中の人は、しこりを見極めにくいので、授乳直後の胸が柔らかい時に確認するのがよいということです。中村医師は「少なくとも、自分の乳腺に関心を持つ。しこりがあったら乳腺の専門の先生に相談することが必要だと思います」と話し、若いうちから自分の乳房をチェックし、異常に早く気付くことが、何より大切だと繰り返していました。
【検診、メリットとデメリット】
乳がんが心配になると、まず、検診を受けた方がいいのではないか、という気持ちになると思いますが、メリットやデメリットもあります。『マンモグラフィ』は見たり触ったりしただけでは分からないしこりや小さな乳がんを見つけることができます。ただし、若い人など乳腺の密度の高い場合はがんを見つけにくくなります。
『超音波検査』という方法もあります。乳房の表面に機器をあてて超音波で調べる検診のことで、こちらは乳腺密度の高い若い人などに適していると言われています。ただ、マンモグラフィと比べると治療の必要のないしこりなども「がんの疑い」として拾い上げ過ぎるという調査結果もあり、検査の有効性について検証が行われているところです。
こうした検診のメリット・デメリットや若い女性が乳がんにかかる確率はあまり高くないことなどから、中村医師は、「30代の女性に関しては、神経質になるのではなくまず、自分でチェックして異常を感じたり、また、不安に思ったりする場合は乳腺の専門医に検査方法などを相談して欲しいと」と話していました。
一方、家族が乳がんにかかっている場合一般の人より乳がんになりやすい人がいることが分かってきています。このため中村医師は、「家族に乳がん患者がいる場合には二十歳前後からセルフチェックをし、気になる場合は、専門医に遺伝のリスクについて相談するといい」と話していました。
【妊娠・出産、治療との両立も】
30代というと、妊娠・出産の時期と重なる人も多いと思います。
高齢出産の増加で妊娠中に乳がんが見つかるケースも今後さらに増えると考えられています。ただ、最近は、妊娠を継続しながらがんの治療を行ったり、乳がん治療の後、妊娠できるようにサポートしたりする動きも広がっています。
いずれも、乳がんの早期発見がカギとなります。
今回、取材をした乳がん患者の方の多くが、自己チェックで異変に気づき、早期の発見につながっていました。日ごろから自分の胸の状態に関心を持つことが大切だと思いました。
投稿者:清有美子 | 投稿時間:16時36分