2012年06月07日 (木)"治る虫歯"の診断基準


高血圧の人がなぜ薬で血圧を下げるか、ご存じですか? そう、高血圧は血管に負担をかけ心臓病や脳卒中など命に関わる生活習慣病の引き金になるので、そうならないために「入り口の段階」で治療しておこうというものですよね。

では、虫歯も“歯に穴が開く前に”分かったら・・・。実はそんなことが世界の歯科医療では主流になっていて、日本も追いかけようとしている、というお話です。

20120607_1.jpg

取材に訪れたのは、千葉県八千代市の歯科医院です。この歯科医院、一風変わった虫歯の診断基準を使っています。

20120607_2.jpgこれまで、虫歯は学校で検診の時に使う診断基準として、虫歯を指すCと数字を組み合わせて、
 C0(虫歯になりそう)
 C1(表面に穴が開いた)
 C2(虫歯が中まで到達)
 C3(虫歯が歯の神経まで到達)
 C4(虫歯で歯が崩壊)
となっていました。

しかし、この歯科医院は違います。

20120607_3.jpgまず、歯をきれいに磨いたうえで、空気を吹き付けます。そして、歯の表面に異常がないか7段階で診断します。
 コード0(健康な歯)
 コード1(空気で乾燥させると表面が白濁する)
 コード2(目で見て白濁している)
 コード3(穴が開いている)
 コード4(歯の内部にも虫歯の陰がある)
 コード5(歯の奥まで穴が開いている)
 コード6(コード5が更に拡大)

注目されるのはコード1とコード2です。

20120607_4.jpg20120607_5.jpg歯に穴が開く前の初期の虫歯を診断し、この時点で治療を開始します。実はこの段階だと、表面のエナメル質が修復される「再石灰化」によって健全な歯に戻すことができるのです。

今の診断基準はどういう状態を「初期」とするかがあいまいで、ほとんどの場合、歯に穴が開いてから治療を始め、ドリルで周辺を削り、樹脂や金属の詰め物をしています。新しい基準は、「虫歯が治る段階で発見し治療してしまおう」という、歯科医療の大転換なのです。

この医院の杉山精一歯科医師によると、虫歯で歯を失っていく典型的なパターンは、以下の通りです。
(1)10代に虫歯で詰めものをする
(2)20代で詰めものの周辺が虫歯になり、神経を抜く
(3)30代で再発
(4)40代、50代でどうにもならなくなり、歯を抜く。
思い当たりませんか?
私にも(3)の段階が1本あります。

20120607_6.jpg特に10代から20代前半は永久歯が生えたばかりで虫歯になりやすく白濁する傾向が顕著にあらわれるということで、若い段階で予防することがきわめて重要なのだそうです。

では初期の虫歯の治療は、というと、▼フッ化物の塗布、▼歯磨きの励行、▼食習慣の改善で、再石灰化が促され、半年程度で元の健康な歯に戻っていくケースが多いそうです。実際私が取材した10代の女の子は、4か月後にはコード1が健康な歯に、コード2はコード1になっていました。

20120607_7.jpg虫歯の予防などを専門とする日本口腔衛生学会によりますと、国際的にはこうした診断基準が主流になりつつあるそうで、学会としても今の基準を変更して、虫歯の初期の症状をより明確に定義する方向で検討を始めたということです。

20120607_8.jpg削って詰める時代から、早期に診断し健康な状態に戻す時代へ。こうした予防的な歯科医療に取り組む歯科医院は、徐々に広がっているそうで、私も子どもにはこうした治療を受けさせたいと思います。

(参考)
新基準=ICDAS。
新基準を導入している学会=「日本ヘルスケア歯科学会」。
 

投稿者:米原達生 | 投稿時間:06時00分

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