2012年01月31日 (火)歯科インプラントの取材を続けて


失った歯を補うために広がっている「インプラント治療」。
インプラント治療を巡るトラブルの実態について取材を始めて、およそ5か月になります。「おはよう日本」、「クローズアップ現代」、「あさイチ」などで放送しました。
放送に反映できなかった情報も含めて、まとめてみました。

取材を通して、患者や歯科医師、それに、インプラントメーカーの担当者など、多くの方々に話を聞きました。そのうえで思うのは、「インプラント治療は、自分の歯でかむ感覚を取り戻せる画期的な治療法。しかし、その一方で、多くの患者がトラブルによって悲しい思いをしている」ということです。
(記事中の各画像はイメージです)

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インプラント治療によって、後遺症が残っている60代の女性を取材しました。
インプラント治療は、あごの骨に穴を開けて、ネジ状の金属を埋め込んで土台を作り、そこに人工の歯を取り付けるものです。入れ歯やブリッジなどよりも、しっかりと固定されます。
しかし、女性は、治療であごの骨の中を通る神経が傷つき、3年たった今も、唇からあごにかけてしびれた感覚が消えていません。女性が治療を決めた理由は、使っていた入れ歯が合わなくなり、再び、おいしいものをしっかりとかんで食べてみたいというものでした。
期待を抱いて治療を受けたものの、別の治療が必要になってしまったのです。

ip4.jpgこうしたインプラント治療を巡るトラブルは、全国でどのぐらい起きているのか。
取材を始めたところ、国も学会も全体像を把握していませんでした。
インプラント治療は、一部を除いて保険が適用されません。歯科医師と患者との契約に基づいて行われる「自由診療」のため、行政機関がトラブルを把握できないのです。

そこで、私たちは独自にアンケート調査を行いました。
歯学部のある大学病院など38の施設のうち、76%に当たる29施設から回答がありました。その結果、別の医療機関で治療をしたあとに不具合を訴えて「再治療」に来た患者は、この2年半で2700人以上いたことが分かりました。

「トラブルの要因として医療機関側の課題は何か」複数回答で聞いたところ、「歯科医師の技術・知識不足」が86%。「治療が難しい患者への無理な治療」が76%に上りました。

インプラント治療によるトラブルは、起こるべきして起きているのではないか。
私たちは、さらに取材を進めました。そして、歯科医療の構造的な問題が関係しているのではないか、と思うようになってきました。

まず、教育や技術指導の態勢が不十分だということです。
インプラント治療は、特別な資格などは必要なく、歯科医師であれば誰でも行うことができます。しかし、インプラント治療を行うには、幅広い知識や技術が必要です。 「かみ合わせや歯周病の知識」、「外科的な技術」。それに「全身的な疾患などを見極める能力」。高い専門性が求められるのです。
それに対して、歯科医師を養成する大学で、学生などにインプラント治療の本格的な実習が始まったのは、この2、3年です。以前から開業している歯科医師は、大学で講義も受けていない人が多いのです。そのため、歯科医師の間で、インプラント治療に関する知識や技術などに大きな差が生じています。

ip3.jpgでは、インプラントを始めようする歯科医師は、どのようにして知識や技術を習得しているのか。頼りはメーカーが主催する「講習会」です。
取材した、あるメーカーの講習会には、インプラントを始めようという10人余りの歯科医師が参加していました。スライドでインプラントの歴史などを学んだあと、穴を開ける機器を使って、実際にインプラントを埋め込む実習が行われました。講習の時間はおよそ5時間。最後に全員に「サティフィケート」と呼ばれる「修了証」が与えられていました。
また、別の機会に取材した、ある歯科医師は、4日間の「講習」を受けただけでインプラント治療を始め、結果的に治療に失敗してしまった経験を話してくれました。

そして、インプラント治療を巡るトラブルの背景には、歯科医院の厳しい経営環境があることが分かりました。歯科大学の増設などで歯科医師が増え続け、歯科医院の数は全国で7万件に迫っています。この数は、国内のコンビニエンスストアの1.7倍です。
私が住んでいる都内のある地域にも、15メートル間隔で歯科医院があります。しかし、患者の数は横ばい。保険診療だけでは歯科医院の経営が厳しいとして、インプラントのような自由に治療費を決められる「自由診療」に頼らざるをえない歯科医院もあるのです。

取材の中で、ある歯科医師から「保険診療の報酬が低いことがインプラント治療のトラブルにも関係している」という声も聞きました。
日本歯科医学会の調査によると、例えば、入れ歯を作る場合、技術料は1万円余りのコストがかかるにも関わらず、保険の診療報酬はその4分の1の2500円程度。開業している歯科医師の中には、「時間をかけて治療をすればするほど、赤字になる」と実態を話していました。

では、トラブルに遭わないために、私たち患者はどうすればいいのか
患者側が歯科医師の知識や技術を見極めるというのは、非常に難しいことです。

安全に治療をしてくれる歯科医師を選ぶ際のポイントについて、今のインプラント治療を29年前に日本に紹介し、クローズアップ現代に出演していただいた歯科医師の小宮山彌太郎さんに聞きました。

▽患者に考える時間を与えてくれ、インプラントを強く勧めない歯科医院を
インプラント治療は緊急を要する治療でありません。1週間、1か月、じっくり検討することもできます。家族や友人に相談したり、セカンドオピニオンなどを求めることも必要だということです。また、事前の検査を入念に行い、利点だけでなくリスクについても説明してくれる歯科医院がいいそうです。

▽症例件数を誇示した り、歯科医院の待合室などに「認定証」がたくさん飾ってあったような歯科医院は慎重に
インプラント治療は、あごの骨の状態など人によって全く違います。これまで多くの患者を治療をしたからといって、その経験によって安全性が向上するとは限らない場合があるということです。また、メーカー主催の「1日講習」でも「修了証」はもらえます。日本で開かれた講習会でも、英語で書かれたものなどもあり、本当に知識や技術が携わっているかどうかは見極められないそうです。

最初にも述べましたが、インプラント治療は、 歯を失っても、自分の歯のように、しっかりかむ感覚を取り戻せる画期的な治療法です。
私たちは、治療法自体を批判しているわけではありません。
この治療法が安全に行われ、トラブルが無くなるよう、さらに取材を続けていきたいと思います。

投稿者:鈴木章広 | 投稿時間:06時00分

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コメント

クローズアップ現代拝見しました。正しくやれば効果的な治療であると言いたいようでしたが残念ながらこの方法は犯罪と言って良いほど酷いもので国は即刻中止を指導するべきです。一見上手く行ったように見えた治療でも後年老齢化した時に負うリスクが余りにも高いものだからです。人は必ず老化しますし人工的なものを埋め込んでいるのでその土台である顎の骨は弱くなって行きます。すると待っているのはあご骨の骨折です。こうなってしまうことは多くの歯科医が知らないはずがありません。きちんと患者に説明していますか?歯科医はこの方法を自らの体に行いたいと思いますか?次に番組を作る時は医師の技術を問題にするのでは無く、この治療の是非を考える番組を期待しております。

投稿日時:2012年01月31日 10時30分 | sarureo

 再発・再治療は、何もインプラントだけに限ったことではありません。
 きっと、多くの方が経験されているはずです。以前、虫歯や歯周病の治療を受けたのに、また同じように治療を繰り返したり、最終的には歯を抜かなければならなくなってしまったという方が。
 歯科医師の治療に対する知識、技術は確かに大切です。そしてそういった高度な治療技術をもった歯科医師は沢山います。また、最新といわれる技術、道具、薬品も次々と出てきています。しかし、虫歯、歯周病の患者さんはなかなか減りません。それはなぜか?
 
 虫歯や歯周病は、予防のできる病気です。予防できるということは、原因がわかっている、ということです。
 原因を排除せずに「治療」という結果をいくらいじってみても、その原因が改善されなければ、また同じ結果にたどり着いてしまうということなのです。
 
 インプラントの治療トラブルを減らすためには、インプラントをしなければいけないような患者さんを作りださなければ良いのです。

 日本の歯科医療界全体の見直しが、今後必要になってくるはずです。

投稿日時:2012年01月31日 15時55分 | コガデンタルオフィス

インプラント治療
記事の中で、、「インプラント治療は、自分の歯でかむ感覚を取り戻せる画期的な治療法」とありますが、噛む感覚は、天然歯の歯根膜と歯髄神経が担う。インプラントは、歯根膜がないため噛む感覚は天然の歯と比べて全くない。スウエーデンはインプラント先進国で、インプラント歯科医師は特別な法律で規制されているはずです。患者側から診て、インプラント教育の前にまず規制すべきです。歯科医院の経営向上のためにインプラントを行う状況をまず止めるべきです。
インプラントの成功率は、トロント会議で明確に示されています。1年間に0.2mmづつの骨の後退は容認する趣旨ですが、日本のインプラントは、その条項をクリアできていません。患者のために保険適応の歯の移植を歯科医師は行うべきです。広島大学「歯の銀行」があるように聞きます。歯科医師は、まじめに患者の口腔衛生管理を履行し、それでも治療へと転落する患者に対し、インプラントではない歯科治療を開発すべきだと思います。

投稿日時:2012年01月31日 18時31分 | 匿名でお願いします。

インプラントをすすめる歯医者が多い。

インプラント学会の認定医は、いいかげんのようだ。
インプラント認定医は、以下の処置ができません。
インプラント治療中 舌の動脈(舌イン動脈、舌下動脈)を切断する可能性が多い。
その時全身マスイだと総頸動脈の枝の外頸動脈を結ぶ事が出来ます。
しかし、局所麻酔のみでのインプラント治療中ですと止血できません。すなわち、失血死です。
認定医は、あらゆる事態も想定して治療ができる歯科医師にインプラント認定医を与えるべきです。歯科の認定医は、でたらめです。
下歯槽官近くにインプラントを無理して埋入するのは、そこの骨がかたく、インプラントが安定するからです。しかし、人のコツは経年変化するのと、インプラントは100%さびます。また、歯ぎしりくいしばりで下歯槽神経を圧迫くしているのです。唇がしびれるのは、当然の結果です。歯源病です。
生体の経年的変化を無視し、人工物で治療する事に慣れている歯医者の勉強不足の結果です。


投稿日時:2012年02月02日 22時20分 | 匿名希望

「インプラントが錆びる」ですか・・・

何処の何方か存じませんが、あんまり適当な発言はやめていただきたい。
自分の不勉強を歯科医のせいにしないでください。

投稿日時:2012年02月21日 17時46分 | 匿名希望

インプラント治療が是か非か?
ということを議論しても意味がありません。

インプラント治療をするべき場合としてはいけない場合について
議論するべきなのです。


さらに言えば、
そもそも歯を失わなくて良い方法から考えなければなりません。

老化による生体の変化につては、
各個人差があるので、一概に言えません。

老化現象によって歯が失われるという理論はありません。
歯を失う原因は多岐にわたるからです。


もし老化によって歯を失うのであれば、各年齢ごとに残存する歯の数は近似するはずですが、そのような事実は存在しません。

歯を失う原因は各個人の背景によるものなのです。

だからこそ、計画的な歯科予防管理が必要不可欠であり、
スウェーデンでは、これを行政で実践しているのです。


インプラントで大変な目に合っている患者さんが存在する一方で、インプラントのおかげで快適な日々を手に入れた患者さんがが存在することを認識していただきたいと思います。


問題はインプラントというよりは、
日本の無知な歯科医師にあるのです。
その無知な歯科医師を生み出している社会の背景から考えなければなりません。

歯科医療の技術が進歩しても、それを扱う歯科医師の倫理や道徳性の進歩については、いまだろくに議論されていないのです。

歯科界の問題を根本から見直す時期にきているのですが、社会全体で是正されるには、今から全力で取り組んでも、何十年もかかるだろうと思っています。

それほどまでに、今日まで歯を失う問題を、日本人は軽視しているのだということを自覚してもらいたいと思います。

                 モウリデンタルクリニック
                        毛利 啓銘

投稿日時:2012年02月23日 18時25分 | 毛利 啓銘

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