GIGAサポ - 考える授業やるキット -

NHK for School

  • 小6
  • 社会

共同編集とYチャートで、多数の事例を整理し考えを深める!
“災害の復旧と復興”を自分ごととして考える実践授業

授業者
仙台市立蒲町小学校 教諭 佐竹直人
使用した学習支援ツール
ロイロノート

今回は、仙台市立蒲町小学校6年生の授業の様子をお届け!子どもたちの思考を深めるために行ったアレンジもご紹介します。

「考える授業」の流れ

5時間目

ステップ(1) つかむ 動画を視聴し、学習課題を確認する

初めに、単元の学習課題「災害にあった人々の願いは、どのように実現されるのだろう?」を全員で再確認したうえで、「災害にあった人々はどんな願いを持っているか」について隣の人と話し合う時間を1分ほど設けました。児童からは「地震で壊れた家を直してほしい」、「安心して暮らせること」といった意見が出ました。ここで、動画①(7'28~10'00)を視聴し、大谷(おおや)地区ではどんな願いがあったかを再度確認しました。大谷地区では防潮堤を築く計画が変更されたことを思い出した後、本時の学習課題「防潮堤を築く計画はどのように検討されたのか調べよう」を黒板に書き、全員で確認しました。

ステップ(2) 調べる 動画クリップを視聴し、分かったことをYチャートに整理する

本時の学習課題に沿って、被害にあった地域の取り組みを調べることに。3つの地域(大谷地区・女川町・田老地区)のうち、大谷地区については事前に調べ終えていたので、他の2つの地域について確認しました。児童たちは4人ずつの班を作り、まずは2つの地域の動画クリップを端末で視聴。その後、話し合いながら、分かったことを記入シート①(Yチャート)にまとめます。「実際の取り組み」はピンクのカードに、「思いや考え」は緑のカードに書き込みます。中には、2つの地域の分担を決めてまとめている班も。「少し写真動かしていい?」「写真付け足すね」など、協力しながら整理する様子もありました。

ステップ(3) 考える Yチャートで整理したことから、地域の取り組みについて分析する

Yチャートに整理し終えたら、次のステップに移ります。先生は「ここからが大切です」と呼びかけたうえで、それぞれの街づくりの特徴を話し合うように伝えました。「大谷は…」、「女川は…」、「いったんみんなで考えよう」と活発に意見を交わす児童たち。まとめる最中に新たな発見や気づきがあり、ピンクや緑のカードを修正・追加するグループもありました。
話し合いの後、二つの班が各地域の取り組みの特徴を発表しました。

発表を受けて、それぞれの地域の取り組みが違うことを確認すると、「なぜ違いが生まれるんだろう?」と話し合いを促す先生。児童からは、「住んでいる人々が違うから」、「地域によって大切なものが違うから」という意見が出ました。
違いを確認したうえで、今度は「同じところ」について話し合いの時間を設けます。「市民の意見を尊重している点が共通している」という意見に対し、先生が「市だけで推し進めてはだめなの?」と問いかけると、「ダメ」の声。「住民だけの思いでは?」「ダメ」。「では大切なのは?」と、児童の考えを丁寧に聞きながら、「市、県、国、市民全ての声をきいて納得するようにすること」で、願いが実現するのではないかと考えを深めていきます。最後に、単元の学習課題「災害にあった人々の願いは、どのように実現されるのだろう?」に立ち戻り、本時を通して考えた答えを書く時間を取りました。

ステップ(4) まとめる Yチャートを参考に自分の考えをまとめる

学習課題に対する考えをまとめるステップです。ここで先生は、「これからの自分」についても考えてほしいと強調しました。災害の復旧・復興は「他人事ではなく、みんなが大人になった時に同じことが起きるかもしれない」としたうえで、気づいたことを書く時間に移ります。児童からは、災害が起きてしまったら「学習を思い出し、自分たちの住むところをどうしたいか行政に伝えたい」といった意見が出ました。

実践した先生から

やるキットを使ったほかの先生の授業を見たことがあった佐竹先生。実際に使ってみて気づいた点や、工夫について聞きました。

「やるキット」を活用した佐竹先生の感想

やるキットを使うことで、子どもたちの中で新たな気づきができたようでした。「地域の実情によって取り組みが違うこと」、「住民の思いを大切にすること」、「住民だけではなくて行政も必要であること」、というのは番組を視聴しただけでは十分に持てなかった視点でした。Yチャートを使って、3つの地域で比較したから生まれた気づきなのかなと思います。子どもたちの反応は意欲的で、シートも抵抗なく受け入れていました。画像もあるので、イメージを明確にしながら自信をもって話し合いができたと思います。班ごとによく話し合って考え、理解が深まっていたため、こちらが質問で揺さぶってもぶれなかったように感じました。
実際に使ってみると、素材が用意されていることの安心感がありました。特にシンキングツールに慣れていない先生もいる中で、その使い方や思考の流れが分かりやすいのが良いと思います。

蒲町小学校の実践から「やるキット」アレンジのアイデア

●クラスの実態に合わせて

今回は、子どもたちがYチャートに慣れるため、大谷地区の例について、前時にYチャートを作る時間を設けましたが、共同編集をする際の役割分担を考えるのに時間がかかることがわかりました。役割分担について事前に考えたことで、本時ではスムーズに共同編集を進められているようでした。すべてを、「考える授業」のプラン通りに行う必要があるわけではなく、クラスの実態に合わせて活用することが大切だと感じました。

●子どもたちがより使いやすいようにシートをアレンジする

シートにもアレンジを加えました。Yチャートの下部に貼ってあった付箋が動かせないようになっていましたが、それを消してYチャートの外に移動させました。子どもたちが作業中に違和感を持つだろう、また、広く使ってほしいと思ったからです。Yチャートの文言の色も地域ごとに分けて、子どもが迷わないように工夫しました。やりたいことがあれば、シート自体や文言を変えてみても良いと思います。

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