GIGAサポ - 考える授業やるキット -

NHK for School

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  • 理科

「やるキット」で“1人1台端末”に初挑戦!
「てこの決まり」をじっくり考察する実践授業

授業者
和歌山大学教育学部附属小学校 理科専科教員 山本眞喜
使用した学習支援ツール
ロイロノート

教員歴なんと48年!現在、理科を専科で教えている山本先生は、これまでプリントを使って授業をすることが多かったといいます。今回はこれまでのスタイルとは全く違う、「やるキット」を利用した、1人1台端末を使っての2時間連続の授業を実践してくれました!

「考える授業」の流れ

2・3時間目

ステップ(3) 実験結果の検証 整理した実験結果を分析することで実験の不備を見つけよう

前時で「ハサミ」を使って「作用点にはたらく力を大きくするためにはどうしたらいいか」について予想を立てた子どもたち。その予想は「A:作用点が支点に近いほど大きくなる」「B:力点に力を加えるほど大きくなる」「C:力点が支点から遠いほど大きくなる」の3つでした。子どもたちはグループごとにどの予想を確かめたいか選んでこの授業を迎えました。

山本先生は、「それぞれが選んだ予想に着目して動画を見てください」と声がけをして、「番組シーン①~④」(0'36~5'02)を見せました。視聴後に記入シート④を配布し、「番組の実験結果から言えそうなこと」や、「予想と違ったこと」などを個人でまとめていきます。番組の視聴中はシーンと静かにしていた子どもたちですが、「予想と違うことがたくさんあった」と先生に声をかけたり、グループ内で「どうだった?」とシートを見せ合ったり、気付きを共有していました。

続いて、「番組シーン⑤~⑨」(5'02~10'00)を視聴。動画からさらにわかったことや、疑問に思ったことを記入していきます。先生は「動画のように実験の途中で、実験用てこが限界まで傾いてしまったりして、みんなが立てた予想の「遠いほど」や「近いほど」というようなことが検証できない場合に、どう工夫したらいいのかよく考えてください」と伝えました。記入しながら子どもたちは、「てこが限界まで傾いてしまったからと言って、途中からおもりを半分の大きさに変えて実験すると結果が変わってしまう。最初から軽いのを使おう」など、実験の工夫について考えていました。

ステップ(4) 再実験と結果の整理 追加・改善実験を行い、結果を整理しよう



実験用のてこを使って、検証をしていきます。実験の工夫を考えられていなかったグループでも、実際にてこに触れる中で、「力点のおもりを増やすとき、外側につけて増やすとすぐに棒が傾ききってしまうから、内側につけて増やしていくといいのではないか」など、試行錯誤しながら、肌でてこのはたらきを感じていました。

ほかにも「作用点のおもりを支点のほうにつけると棒があがるし、ハサミでも作用点の位置が近づくと切れやすくなったから…」と前時までの内容と関連付けて考え、結果を整理するグループもありました。

ステップ(5) 実験結果の分析 整理した実験の結果(事実)から言えることを分析しよう

自分たちの実験から何が言えるかを記入シート⑦(クラゲチャート)にまとめます。はじめはクラゲチャートの記入の仕方がよくわからずにいた子どももいましたが、グループ同士で見せ合ったりしながら、写真や簡単なテキストで「根拠」と「事実」を結び付けていきました。

その後、3つの予想ごとにクラゲチャートを使って、クラス全体で発表。チャートを拡大して実験写真を見せながら実験内容や、条件の制御の仕方、どのような結果になったか、そして、どのような事実が言えるかを具体的に共有しました。

発表を受けて自分たちで行わなかった2つの予想について追実験を行い、今回の授業を終えました。

実践した先生から

「22歳から続けてきた教員生活で、71歳にして新たな授業スタイルに挑戦した!」という山本先生。授業の感想を本音で語ってくれました!

「やるキット」を活用した山本先生の感想

「やるキット」は内容がボリューミー。実験の時間をしっかり確保するためにも、どこを中心にして子どもたちとやっていくのかというところが大事だと思いました。自分が着目したのは番組の考察編にあった、「おもりを増やすと支柱にあたってこれ以上実験できないので確認できない」など、実験方法の課題に気付くというところ。本当にこの実験で検証できたといえるのか、どうしたらその実験の方法を改善できるのか、考えるのが肝だと感じました。

考察するためには、子どもが動画を見ているときに「おや?」と疑問や気付きをもってくれるようにしなければなりません。そこで、「どの予想について自分たちは検証していくのか」というところを番組の前に強調したり、やるキットのシートに予想の内容を記入する欄を加えたりして、子どもたちに意識づけをさせました。

ふだんの授業では、教科書の流れを意識して、プリントに実験の結果を埋めていくということが多かったのですが、「やるキット」を使うと、実験のしかたや結果をじっくり考察できるというのは良いことだと感じました。クラゲチャートのような図表はただ一覧表にまとめるよりは変化があって、子どもたちも楽しんでいたと思います。

これから「やるキット」を使うという先生には、「頑張ってください」と伝えたい。何事もトライです。使えるものは使っていくと、良さも見えるし問題も見える。問題点は、それを自分なりにどう改良したらいいか考えるきっかけになります。それを繰り返すうちにその先生の力量が高まっていくのではないでしょうか。

わたしも今回の授業は今までやったことのないスタイルだったので、非常に面白かったです。

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