GIGAサポ - 考える授業やるキット -

NHK for School

  • 小4
  • 理科

番組とピラミッドチャートをフル活用!
「理由のある予想を立てる」実践授業

授業者
和歌山大学教育学部附属小学校 教諭 角谷和杜
使用した学習支援ツール
ロイロノート

今回は、和歌山大学教育学部附属小学校4年生の授業の様子をお届け。より考えを深めるためのアレンジや、ピラミッドチャートを初めて使う児童に向けた工夫もご紹介します!

「考える授業」の流れ

5時間目

ステップ(1) 予備観察・問題把握 動画を確認し、予想のテーマをつかむ

授業の冒頭、モニターにプロットダイヤグラム(記入シート①参照)を出しながら前時の学習内容を振り返った先生。児童に「前回は春から秋にかけてのヘチマの様子を予想したので、今日は秋から冬の様子を予想しよう」と伝え、そのあと、動画①(0’00~2’29)を全員で視聴しました。動画を見る前に先生は「この動画を見て気づいたことを書いてもらうから、どんな動画だったか覚えておいてね」と児童に知らせます。「メモしてもいい?」という声があがり、メモを取りながら視聴する児童もいました。動画の視聴後、全員で、今回の予想のテーマである「秋に芽を出したヘチマはこのあとどうなる?」を把握しました。

ステップ(2) 予想を立てる準備 動画や班での話し合いから「予想の手がかり」「予想のカギ」を見つける

記入シート②(ピラミッドチャート)に書き込むステップに移ります。ここで先生は、班を作るよう呼びかけました。児童は「動画①を見て気づいたこと」をピンクのカードに記入し、ピラミッドチャートの下段を埋めていきます。先生は動画①の静止画も配布し、内容を忘れたときはヒントにするよう伝えました。児童たちは静止画も確認しつつ、活発に声を掛け合いながら、気づいたことを書き込んでいました。

5分後、先生は一度作業を止めさせ、「ヒントを見せます」と動画②(2’29~6’23)をモニターで全員に見せました。再生する前に「今から見てわかったことは青色のカードに書いてください」と、次の活動を伝えます。児童は、動画の中盤「ヘチマが成長したのには何が関係したんだっけ?」というキャラクターの問いかけに対し、「温度」、「太陽」などと口々につぶやいていました。

動画②の視聴後は、ピラミッドチャートの下段に情報を加えつつ、中段にまとめていく作業に移りました。「動画や体験から得た手がかり」を青のカードに書き下段に加え、さらにピンクと青のカードの情報を組み合わせながら、中段に「予想のカギ」(情報を結び付け、抽象化)として書き込みます。ここで先生は、ピラミッドチャートの使い方を説明。その際、既習の「ガラスはあたためるとどうなるか」を例に先生が作った見本をモニターに映していました。中段の「予想のカギまで頑張りましょう」と呼びかけると、児童は班での話し合いを再開。「これとこれをまとめて中段に書こう」といった声が聞こえました。

ステップ(3) 予想を立てる 「予想のカギ」を使って「理由のある予想」をする

10分後、記入シート③(予想ワークシート)に書き込む作業に移ります。ここからは班ではなく、個人での活動になりました。このとき、記入シート②は班で共有し、それぞれのタブレットで確認できるようにしておきます。先生はシート③の説明の際、「秋に出た芽はどうなるのか。予想を書いたあと、大事なのはここです。なんでそう思う?そこで今日みんなで話したことが生きてくる」と、予想の理由が大切であると伝えました。また、シート下段の「図やイラスト」が描きにくい場合は、「ノートに描いた絵を写真に撮って画像を貼ってもいいです」とアドバイスしました。

児童は記入シート②を見返しながら、それぞれに記入シート③を完成させていきます。

授業の最後、ふたりの児童が、予想とその理由を発表しました。1人目は「温度が高くなると成長するということは、温度が低いと成長しないから全部枯れる」と予想し、2人目の児童は「寒い時期は成長が止まり、暑い時期に成長する。枯れるとしたら、人間がいなかったら生き延びていけないことになってしまうから」と予想。それに対して「同じ!」「そうじゃないとヘチマが消えちゃう」といった声が上がっていました。先生は「どうなるかは次回みんなで確かめたいと思います」と授業を締めくくりました。

実践した先生から

今回初めてやるキットを使った角谷先生。児童もピラミッドチャートを使うのは初めてでした。そんな中で実践したアレンジや使い方のポイントを聞きました。

「やるキット」を活用した角谷先生の感想

ピラミッドチャートを使った授業は初めてでした。正直なところ、児童は初めてのピラミッドチャートに戸惑いもあったようなので、これまでにもっと使っておけばよかったと感じました。特に中段の「予想のカギ」を書くのが初回では難しかったようです。今後、使い慣れていけば、よりスムーズに進められると思います。
良かったのは、ピラミッドチャートに気づいたことを書いておくことで、中段を考える際にどんなキーワードがあったのかをすぐに見返したり、整理したりすることが容易になり、予想を考える手がかりになることです。また、前時で使ったプロットダイヤグラムを見返す児童もいたので、単元を通してやるキットのシートを活用することで予想の手がかりをつかみやすくなったのではないかと感じました。

和歌山大学教育学部附属小学校の実践から「やるキット」アレンジのアイデア

●班での活動で考えを深める

ピラミッドチャートの作成(ステップ(2))は班での活動になっていませんでしたが、友だちと意見を出し合うことで、気づきがあったり考えが深まったりすると考え、班活動にしました。
結果、「予想のカギ」を出す話し合いが盛り上がっていました。「成長にはこれが大事なんやで」、「ひまわりがこうだったから温度が大事なんちゃうん」など、それぞれ違う意見が出てくるから盛り上がったのだと思います。今回の授業のポイントになったと感じました。

●ピラミッドチャートの見本を見せて活動をスムーズに

今回、児童はピラミッドチャートを使った授業が初めてだったので、見本を作りました。やるキットには参考としてのピラミッドチャートが載っていますが、そのまま見せると答えがわかってしまいます。そのため、「既習内容でピラミッドチャートを使うならどのようになるのか」という例を提示し、児童がそれを見ながら作業できるようにしました。すでに使ったことがある場合は別ですが、初めて使う場合は見本があった方がスムーズに進められると思います。

●ピラミッドチャートの下段のカードは自由に動かせることを伝える

ピラミッドチャート下段「手がかり」のカードは、中段を書く際に自由に動かして整理して良いことをもっとしっかり伝えておくべきだったと思いました。あらかじめカードを置いて配布したところ、その場所から動かさずにグループ分けをしようとしており、難しそうにしていました。

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