GIGAサポ - 考える授業やるキット -

NHK for School

  • 小3
  • 理科

やるキットを使って、身近な現象を簡単に可視化&整理!
“じしゃくのふしぎ”に夢中になる実践授業

授業者
仙台市立金剛沢小学校 教諭 青沼和子
使用した学習支援ツール
ロイロノート

授業者・青沼先生が自ら実践リポートを執筆! 実は今回の授業で、児童が「じしゃくのふしぎ」に夢中になるあまり、思いがけないこともあったのだそう。「やるキット」を初めて使ってみて感じた“生の声”をお届けします!

「考える授業」の流れ

3時間目

ステップ(1) ふしぎ探しのための材料集め 磁石同士を近づける実験をして、結果の写真を撮る

前時に学習した「じしゃくのはたらき」について確認します。「鉄とくっついた」「引き寄せられる」と意見を共有した後、番組を視聴しました。「ふしぎエンドレス じしゃくのふしぎ」(0’00~3’46)を見ながら「え?なんで?」「すごい!」とつぶやく児童たち。中には自分の経験を思い出し「知ってる!離れていくんだよ」と話す児童も。「磁石には鉄を引き寄せる力以外にも、ふしぎなことがありそうだね」と投げかけ、今回の授業テーマを確認しました。
実験の手順を確認し、児童の端末に記入シート①を配付します。磁石が引き合う場合と退け合う場合を実験ごとに比較できるデータチャートです。児童は実験の記録を書き込んでいきます。実験の様子を自分の端末で写真に撮り、貼り付ける児童もいました。

ステップ(2) ふしぎの手がかりを整理 差異点と共通点を探して整理する

児童は、実験結果を記録した記入シート①を見て、気が付いたことを書き出します。「違うところや似ているところを書き出そう」と声を掛けられると、シートをじっと見て考え始めました。「同じ色同士は離れる」「白と黒は引き合う」「手に持っていない方が近づいてきた」「磁石を立てた時と寝かせた時では動きが違う」などの考えがシートに書き込まれていきました。

ステップ(3) ふしぎを見つける1 「ふしぎの手がかり」を使って「ふしぎ」を見いだす

児童は、気が付いたことから「ふしぎ」を見つけ、どうしてふしぎに思ったのかを記入シート②に貼り付けた実験結果の記録から振り返ります。どんな「ふしぎ」が見つかったのか、それは何に注目して見つけることができたのか、「ふしぎ」に思った理由は何か、それぞれの項目に書いていきます。
実験の結果や考えがシートに整理されることで、自分の考えが可視化されていきます。

書き終えたらシートを先生に提出。途中、番組を視聴(3’47~6’12)しました。考えを自分の言葉で書き表せないでいた児童も、番組内の児童の考えを聞くことで安心して書くことができました。早く書き終わった児童は提出された他の友達のシートを見比べて、自分と似ている考えを見つけたり、自分とは違う考えに驚いたりしていました。
最後にクラス全体で考えを共有していきます。教師が「ふしぎに思った理由と注目ポイントも教えてね」と投げかけてから意見を聞きます。「なぜ色が同じだと引き合わないのか」「違う色だと引き合うのはなぜか」など多くの児童が色に注目する中、「形が同じでも引き合う場合と退ける場合があるのはなぜ「クルっと回ってつくのがふしぎ」と形や動きに注目する児童もいました。
互いの意見を聞き合うことで同じ実験でもふしぎに感じるところや注目ポイントの違いがあることに気が付き、考えを広げることができました。

ステップ(4) 新たなふしぎの手がかり探し これまでの体験と比べて、差異点を探して整理する

「じしゃくのはたらきにはまだまだふしぎなことがありそうだね。もっとふしぎを探してみよう」と教師からの投げかけで新たな実験がスタートします。児童の生活の中で身近にある粘着テープと磁石のつき方を比べていきます。教師から記入シート③が配付され実験開始です。シートには実験方法が4つ指定されています。児童はひとつひとつ実験に取り組みました。自分の実験の結果を友達に撮影してもらい結果を記録していきます。
しかし、ここで問題発生。児童は磁石のふしぎに夢中になり、なかなか粘着テープの実験に取り組もうとしません。粘着テープの実験にも取り組むよう声をかけますが記録しきれないまま時間になってしまいました(実験前の指示の出し方や順序に工夫が必要でした)。全体で実験方法を再確認してからもう一度時間を取り粘着テープの実験結果を記録しました。

ステップ(5) ふしぎを見つける2 「ふしぎの手がかり」を使って「ふしぎ」を見いだす

ステップ(3)と同様に実験結果を記入シート④に貼り付け、ふしぎを書いていきます。「テープはつかないけど、じしゃくはちょっと離してもつくのはなぜだろう」「テープは間に紙があるとつかないけど、じしゃくはつく」「紙が間にあってもクリップがプカプカうくのはなぜだろう」とさまざまなふしぎが書き込まれていきます。意見を共有する場面では、注目ポイントに「距離」や「浮かんでいるところ」、つるつるとベタベタといった「感触」など新たな考えが出ました。

ステップ(6) 予想と実験の計画 ふしぎについて決まりを予想し、さらに何を調べたいか考える

「今日の実験やみんなのふしぎから、じしゃくにはどんなきまりがあると言えるかな。予想を書いてみよう。それを確かめる実験方法も考えよう」との教師の投げかけに、「えー!」と戸惑いながらも、「たぶんこうじゃないかな!」「当たってないとは思うけど…」などつぶやきながら記入していく児童たち。「色が関係していると思うから、全部の色の磁石で実験する」「力には限界があると思うから、紙を何枚はさめるかやってみる」「5センチくらいは離れてもつく力があると思うから、はかってみたい」など多様な考えが出ました。友達の意見を聞いて「それもやってみたい!」の声も上がりました。

実践した先生から

「やるキット」を活用した青沼先生の感想

磁石は身近にあるので、現象自体(引き寄せられる、退け合うなど)は見慣れていると思います。今回キットを活用することで、現象を細かく分類して実験することができ、普段は気にとめなかったことに目を向けることができていました。また、シートを活用し何となく感じていたことを言葉で書き表す活動を通して、考えが可視化・整理されていきました。今回の授業で予想していた以上のたくさんの「ふしぎ」が生まれたことに驚いています。表を活用して記録することで実験結果を比較しやすくなり、予想し仮説を立てやすくなったのだと思います。ステップ(6)で「じしゃくのきまり」を予想する際に、わくわくした表情で自分の考えを書き込む児童の表情が印象的でした。友達の意見を聞くときも、自分の注目ポイントと比較しながら聞くことができ、再考している児童もいました。理科の学習は楽しさが先行してしまい、実験の目的や結果から分かったきまりへの意識が薄くなることがあります。今回の授業のようにふしぎを探し、「ふしぎを確かめたい」という気持ちを持って取り組むことが、児童の主体的な学びにつながると感じました。

金剛沢小学校の実践から「やるキット」アレンジのアイデア

●キット活用のタイミングを児童の実態に合わせて自由にアレンジ

今回は、4時間目と5時間目を続けて取り組みましたが、4時間目の後に「極の性質」を、5時間目の後に「離れていても鉄を引き付ける」を学習する方法も考えられます。その場合、ふしぎを確かめたいという意欲をもって取り組めると思います。また、「授業の流れ」の中で軽重を付けるのもいいなと感じました。今回は児童から出された考えを共有して終わってしまいましたが、児童同士で出された意見を検討し合う時間を取ることで、さらに意見が出て盛り上がったのではないかなと思いました。考えの理由を詳しく聞き合ったり、聞いたことから新たに感じたことを話し合ったりすることで、考えが広がったり次時への意欲が高まったりしたのではないかと思います。

●「注目ポイント」を全体で共有

考えを共有する場面では、ふしぎを見つけるときにどこに注目して考えたかという「注目ポイント」を確認しました。授業を振り返ると、ここでクラス全体の「注目ポイント」を可視化して共有してみてもよかったのではと思いました。今回は色や形、磁石との距離など児童から出された意見を、教師が板書してクラスで共有しましたが、共同編集のように1枚のシートにクラス全体の意見を書き出す活動を行えば、どんなところに注目している人が多いのか、他にはどんな意見があるのかが一目で分かったと思います。本単元だけではなく年間を通して「注目ポイント」を確かめながら学習を進めることで、理科の見方・考え方が身に付いていくのではないかと感じました。

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