GIGAサポ - 考える授業やるキット -

NHK for School

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  • 理科

「やるキット」を自由自在にアレンジ!
“虫のふしぎ”を探究したくなる授業デザインの工夫とは!?

授業者
神奈川県横浜市立仏向小学校 主幹教諭 東森清仁
使用した学習支援ツール
Google Jamboard

今回は、視聴覚教育総合全国大会・放送教育全国大会(2022)で大好評だった、「やるキット」を活用した模擬授業の様子をお届け!実際に児童役として授業を体験した先生方の声も紹介します。

「考える授業」の流れ

ステップ(1) ふしぎを見つける準備 身の回りにいる虫の“ふしぎ”はどうすれば見つかる?

授業の冒頭、「今日勉強していく虫の授業は、『コオロギつかまえた~!やったぁ!』ということではなく、身の回りにいる虫から“ふしぎ”を見つけて、そこからいろいろ学んでいくっていうこと」「“ふしぎ”を見つけるためには何かに注目して比べることが大事」と、「ふしぎを見つける大切さ」を強調した東森先生。続けて、「最近身の回りでどんな虫を見つけたかな?」と投げかけ、児童役となった先生方とやりとりするうちに、「アリにも大きいのと小さいのがいるよね」「ゴキブリって寒い地域にはいないんだって」と、児童が「そういえば、なんでだろう?」と“ふしぎ”に思ったり、自ら“ふしぎ”を見つけたくなったりする仕掛けがなされていました。
“虫のふしぎ”を見つけるためにはどんなことに注目したらいいのか、手がかりとして「ふしぎエンドレス3年 虫はどこにいる?」(1’00~3’43)を視聴。番組で「どんな虫がどんな場所にいたか」問いかけがあったことにふれたうえで、虫がいる場所から「虫についてのふしぎ」を見つけるという課題を共有しました。

ステップ(2) ふしぎ探しのための材料集め 校庭にいた虫を、見つけた場所ごとに入力

今回は、校庭にもWi-Fi環境が整っているという想定で、1人1台端末を使い、クラスで共有された1枚のXチャートに見つけた虫をその場で入力していきます。
Xチャートは「花だん」「木」「地めん」「草むら」に分けられており、先生は虫の名前が入力されていく様子をリアルタイムで把握しながら、「カマキリは草むらのどんなところにいた?」「アリは地面で何をしていた?」と、“虫のふしぎ”につながるような声がけをしていました。

ステップ(3) ふしぎの手がかりを整理 見つけた虫を比べて気づいたことを入力

教室に戻った想定でXチャートを振り返りながら、今度は虫(黄色い付箋)同士を比べて気づいたことを緑の付箋で書いていきます。例えば、「シジミチョウ」と「アゲハチョウ」の間に「羽がある」、「カマキリ」と「オンブバッタ」の間に「緑(色)」など。
さらに、「比べて気づいたこと」が書かれた緑の付箋から、「形」、「動き」「食べ物」「色」など、「比べるときに何に注目したのか」という視点を紡ぎ出し、水色の付箋に記入していきました。

助言者として参加された「ふしぎエンドレス」番組委員の辻健先生(筑波大学附属小)によると、「『黄色の付箋と黄色の付箋の間に緑の付箋を貼ってね』という東森先生の声掛けは、実は『比べる』の中でも『共通点』を見つけやすくしている」とのこと。辻先生いわく「子どもは違いを見つけるのは上手だが、共通点を見つけるのは案外苦手。そんな子どもたちにとって「緑の付箋を黄色の間に置く」という行為は、自然と共通点を考えやすくする」んだそうです。さらに辻先生は「これらの気づきが子ども同士で共有された1枚のシートに集約されていることで、一人一人の発見がみんなの学びになる、まさに協働的な学びになっている」と言います。

ステップ(4) ふしぎを見つける Xチャートをもとに自ら課題を設定し、深い学びを実現していく

これまで共同編集で記入してきたXチャートをもとに、児童それぞれが“虫のふしぎ”を見つけていきます。「場所」に加え「形」や「動き」などの新たな視点も交えて、理科の見方・考え方を働かせて見つけた“ふしぎ”は、その後の子どもの学習課題となり、自らどのように学習を進めていくのかを考えながら深く探究していくことが期待できます。

実践した先生から

「やるキット」を活用した模擬授業をおこなった東森先生からの活用のポイントです。

「やるキット」活用のポイント

●まずは全体を読み解き、授業のねらいを持つ!

「やるキット」活用のポイントとして東森先生がまず取り上げたのは「全体を読み解くこと」。やるキットには活用単元や、単元内の位置付けと流れ、“考える授業”の流れ案など、様々な資料が載っています。これらを読み解くことで自分がどんな授業を目指すのか「ねらい」を持つことができ、その「ねらい」に向かっていくための授業デザインが可能になります

●授業のねらいに沿って必要なものを取捨選択・自由にアレンジ!

授業デザインをする中で高評価だったのが、やるキットのアレンジ自由度の高さ。今回の「虫はどこにいる?」の「やるキット」では、見つけた虫をまとめていく場面で、Xチャートの分け方を学校の環境によって「草むら」を「池のまわり」のように変更できることや、「Yチャート」や「Wチャート」のような3種類や5種類の場所に分類するチャートも選ぶこともできます。東森先生によると、「どの資料も画像や文字のパーツごとにダウンロードできるので、授業のめあてや環境、児童の実態にあわせて、必要なものを取捨選択・自由に組み合わせることで、児童が自然な流れで深い学びへ向かっていく授業づくりに大きく役立つ」とのことでした。

模擬授業に参加した先生方の声

子どもたちに主体的に学ばせることができる授業の要素が、まさにキットになって用意されており、教材研究・準備の時間を削減しながらより良い授業を展開できるので、自校の先生たちに活用させたいと思いました。(北海道・小学校)

自分で書き込む楽しさ、先生が取り上げてくれる嬉しさ、それが学びにつながる達成感と、さまざまな思いを感じました。こんな授業ができたら、勉強が好きになりますね。拡散した思考を絞っていく、というのが良いです。(島根県・小学校)

ろう学校でなかなかお互いの意見の共有が難しいこともあったり、うまく自分の考えを出せなかったりする児童もいるため、このキットを活用して意見の共有を図ることができると良いなと思いました。(東京都・ろう学校)

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