先生・保護者の方へ

「キキとカンリ」で、
危険を予測し回避する力を身に付けよう!

昨今の子どもたちを取り巻く生活環境を見ると、残念ながら子どもたちの安全を脅かす痛ましい事件や事故は後を絶ちません。子どもたちが、安心して生き生きと遊んだり、学んだりすることができるようにするためには、まず子どもたちの安全を確保することが前提となります。そして、子どもたちには、守られるべき対象にとどまらず、幼児期や小学校の低学年から、発達の段階に応じて自分の身を守ることのできる力を継続的に身に付けていくことが求められています。

低学年の子どもたちには、安全に関してどんな発達の特徴があるでしょうか。低学年の子どもたちは、一般的に危険を読み取ることが未熟だと言われています。危険を「見える危険」と「見えない危険」に分けた場合、この時期の子どもたちは、見えるものについては危険と判断できますが、明確な危険が見えない場合は、安全だと判断してしまう傾向があります。例えば、塀があって見通しの悪い交差点や校舎のろうかの曲がり角など死角のある場所では、自動車や人が見えていないと安全だと思い、衝動的に行動して事故やケガにつながってしまうことがあります。また、知識を学んだだけでは、必ずしも安全な行動に結びつくとは限らないとも指摘されています。

では、このような子どもたちの発達の特徴を踏まえて、どのような安全教育を行えばよいでしょうか。できるだけ身近な実際の場面の中で、具体的な題材を用いて、どのような場所や物、どのような行動や状況などが危険なのかが分かり、そのときにとるべき最善の行動について体験的に学ぶ学習が効果的です。例えば、教室や体育館で段ボールを使って死角をつくり、危険を予測しなければならない場面を設定します。そのような場面で、安全だと思っていても、死角から車や自転車がきて危険があることを体験し、「止まる、見る、確かめる」の大切さを学ぶとともに実際に繰り返し行ってみます。このような学習を通して、これまでの生活では見えなかった、潜んでいる危険を予測し、その危険はどの程度危ないのか、どのようにして回避すればよいのかを判断し、進んで行動に移すことができるような力を身に付けます。そして、周りの人にも配慮できるような学習もできるといいでしょう。また、学校だけでなく家庭や地域の方々と一緒に学ぶ機会も大切にしたいものです。死角のある交差点で、保護者の方がモデルとして「止まる、見る、確かめる」を行動で示して、子どもにも実際に行わせ、確認してあげるといいでしょう。

国では、いざというとき本当に役立つ、実効性のある安全教育を推進しています。「キキとカンリ」では、身近な実際の場面を想定して、危険を予測し、危険を回避する方法を学ぶことができます。「キキとカンリ」で学んだことを、ぜひ学校や家庭においても実際にやってみてください。

子どもたちには、学校や家庭、地域で安全について学習し、安全な生活を送るとともに、生き生きと遊んだり、たくさんのことを学んだりしながら成長してほしいと願っています。

前文部科学省総合教育政策局 男女共同参画共生社会学習・安全課 安全教育調査官 森本晋也

『キキとカンリ』を通じた親子の
「安全教育タイム☆」のすすめ

子どもたちの日常には、さまざまな危険が潜んでいます。『キキとカンリ』は、子どもたちが自分自身で安全について考え、「危険を回避できる力」を身につけるための番組です。小学生キキが体験する身近な危険について、大人と一緒に考える様子を視聴しながら、主体的かつポジティブに危険とその対策を考える姿勢が身につきます。

ただし、身の回りの危険は、お子さんの暮らしている地域や学校によって異なる場合があります。例えば通学路では、雪国の道路や田んぼの中の一本道の場合、季節によって注意すべき点は異なります。番組をきっかけに、身の回りの危険を予測し、それに対する対策を親子で考えてみてください。

また、お子さんの性格や特徴に合わせた対策も必要です。低学年で背が低いお子さんであれば、大人が見えている視点とは異なった危険もあります。道路の生垣や車の影に隠れてしまい、事故や誘拐などにあうことも考えられます。お子さんと家の周りや通学路などを確認しながら、安全対策やルールを考えることもおすすめです。子どもが実際に危険な状況に遭遇したとき、おうちの人に相談できる関係性も大切です。

下記のような声かけとポイントを参考にしてください。

1. 番組を見てどんなことを思ったかな?
(親の感想も交えながら、親子で話し合う習慣が身につくといいですね!)

2. キキちゃんが体験したこと、◯◯(お子さんの名前)の周りでも起こるかな?
(「廊下で友達とぶつかった」「階段でケガをした」など、自分たちの身近な状況に合わせて考えると良いでしょう。)

3. ◯◯(お子さんの名前)だったらどうするかな?
(「廊下の右側を歩くルールを守る」「階段では足元を見る」など、自分なりの答えを考えるよう促してください。お子さんが気づいていない点があれば「お母さん・お父さんはこう考えたよ」と補足するのも良いでしょう。)

4. もし◯◯(お子さんの名前)に何かあったらすぐに相談してね。
(どんな時も親はお子さんの味方であることを伝えたいですね!)

危険を回避するために、全てのケースを予測し対策を考えるのは限界があります。さらには、大人が子どもだった頃には考えられなかった危険なケースもあります。だからこそ、未知の危険に出会ったときにも自分で考え、判断できるよう、日常的に親子で話し合うことが大切でしょう。

愛知淑徳大学人間情報学部 教授 佐藤朝美