番組活用コラム~しまった!を教科等の学習で効果的に活用するために~

新聞づくりの指導

国立教育政策研究所 総括研究官 福本 徹

身近な情報手段としての新聞

児童生徒が調べたことや体験したことをどのようにまとめて伝えるか、については先生方もいろいろな方法を日々実践されていることかと思う。調べっぱなし、やりっぱなしではなくて、誰かに伝えることを想定して、情報を整理して判断し、まとめて伝える形にすることが大切であろう。新学習指導要領の総則にも示されているように、言語能力や情報活用能力の育成が重要視されているが、新聞づくりはこの両方の能力を育成するためにはうってつけのツールである。

新聞は身近な情報手段である。新聞協会のデータによると、2016年には毎日およそ4千万部発行されており、世帯数に対する比率は0.78、つまり、4分の3の家庭で新聞を手に入れていることになる。文部科学省の調査によると、学校図書館に新聞を配備している学校は、小・中・高等学校でそれぞれ41.1%、37.7%、91.0%である。この他にも、教員が個人で購入した新聞を授業で資料として扱う場合もあるだろう。

指導事項としての新聞

学習指導要領では、新聞と明示している項目は以下の通りである。

  • 小学校総則「各種の統計資料や新聞,視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること」
  • 小学校国語科第5学年および第6学年の読むことの言語活動「学校図書館などを利用し,複数の本や新聞などを活用して,調べたり考えたりしたことを報告する活動」
  • 小学校社会科第5学年「放送,新聞などの産業は,国民生活に大きな影響を及ぼしていることを理解すること」「情報を集め発信するまでの工夫や努力などに着目して,放送,新聞などの産業の様子を捉え,それらの産業が国民生活に果たす役割を考え,表現すること」

また、新聞とは明示されていないものの、小学校国語科の「B書くこと」の各学年の各項目は、おおむね新聞づくりにおいて指導事項として含められる項目である。
国語科としては、情報と情報との関係について理解することや、情報と情報との関係付けの仕方を理解することは知識・技能である。伝えたいことを明確にすることや、書く内容の中心を明確にして文章の構成を考えたり、自分の考えと理由や事例との関係を明確にしたりして書き表すこと、などは思考力・判断力・表現力である。

社会科としては、新聞を作ることは情報産業をはじめとした学習事項である。新聞は見出し、本文等の構成要素から成り立っていることは知識・技能である。見出しをどのようにつけるか、本文の構成はどのようにするべきか、は思考力・判断力・表現力である。

新聞づくりの指導をどのように実現するか

以上みてきたように、新聞づくりは基本的な情報発信や表現手段であるが、新聞づくりには一種のスキルが必要であることきは番組の通りである。調べてきたことを羅列するだけではなくて、読み手を意識して情報を取捨選択し、文章や図・表などを用いて表現する。見出しもただつければよいというものではなくて、読み手の心に響くようにする。どこにどの記事を配置するかも考える必要がある。

逆に、基本的な表現手段だからこそ、いろいろな教科や単元で新聞を使った情報発信を行うことができる。生活科の学校たんけんで自分が気に入った場所をメイン記事として紹介する、理科では、昆虫について観察したり調べたりしたことを、記事として文章や図を使ってまとめて表現する。社会科では、歴史の一場面を新聞記事としてまとめる。情報の取り扱い方や文章構成に気を付けて書き表したり、事実と意見とを分けて記述したりすることは国語科の言語活動とて単元化できよう。

番組で紹介されたポイントにもあるが、伝えたい順序を意識して記事のレイアウトを構成したり、要約したり、見出しを工夫するなど、児童生徒は新聞づくりを通して、相手意識をもって伝えることの大切さを、身をもって体験することができる。

まとめ

新聞は身近な情報ツールであり、新聞に関する様々な事項は学習内容であることはその通りなのだが、だからこそ改めて指導事項として明確化することは大切である。
目的意識をもって調べる・体験することが大切であり、身近な新聞を活用しての新聞づくりは目的立てのために良い学習活動であろう。ぜひ番組やHP教材を活用して新聞づくりに取り組んでいただければ幸いである。