番組活用コラム~しまった!を教科等の学習で効果的に活用するために~

つたえる・話す力を高めるために

国立教育政策研究所 総括研究官 福本 徹

はじめに

何かを調べまとめたとして、分かったことや見つけたことを誰かに伝えなければ、まとめたことにはならない。伝える手段はいろいろと考えられるが、話して伝えることは基本的な手段の1つである。ところが、聴衆や相手に正しく理解してもらうように話すことはなかなか難しい。大人でも事情は同じであり、研究会などで原稿を読みながら発表する先生、という光景も時々見かける。

指導事項としての「つたえる・話す」

国語科では「話すこと・聞くこと」は思考力・判断力・表現力の要素であり、これまでも育成すべき能力として重視されてきた。
平成20年改訂学習指導要領では、言語に関する能力の育成を図る上で必要な言語環境を整えて児童の言語活動を充実することが示された。
続いて、平成29年改訂学習指導要領では言語能力の育成を図るための言語活動の充実や、情報活用能力の育成を図るための情報機器等の教材・教具を活用した学習活動の充実が述べられている。また、国語科の学習過程では「話すこと」の中に「表現(発話の調整)」「他者の話すことへの評価、他者からの評価」があり、高等学校の新科目に国語表現や論理国語が導入され、多様な文章を多角的・多面的に理解し論理的に表現する能力や、自分の思いや考えをまとめ適切かつ効果的に表現して他者と伝え合う能力を育成することが求められている。

では、伝える・話すことをどの学習場面で取り入れるか、国語科はもちろんのこと、社会科で調べてきたことを発表する、理科で予想や仮説と検証方法を討論しながら考えを深め合う、総合的な学習の時間で探究してきたことをプレゼンテーションする、特別活動で学年や学級の課題についてまとめて報告する、など様々な場面が考えられる。

効果的な「つたえる・話す」指導を実現するために

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原稿を見ながら、というのはコミュニケーションの1手段を放棄していることになる。目を見て話すことは非常に重要なことである。原稿を見ていては相手の表情がわからない。「アイコンタクト」「目は口ほどにものを言い」といった言葉があるが、言葉で伝える以上のことを伝えられることになる。

間を空ける、というのは相手の興味を引き付けると同時に、相手が理解できるスピードで話すということでもある。立て板に水では話している内容は相手の心に留まらない。間を取って相手の状況を見ながら、相手の心と会話するのである。

結論から話す、というのは話の内容を構造化する、つまり、結論は何か、理由は何か、例はどういった中身にするか、ということがまずベースにあって、その上で話の組み立てを考えるということである。第4回「情報を整理する」・第5回「考えを整理する」の番組も参考にしていただければと思うが、結論や理由・例が適切に在って、そして相手が聞き取りやすい順序に並ぶことが大切である。

また、今回の内容に他の回の内容を合わせて利用することにより、より深い学びにつながる可能性もある。話すことに、スライド等を加えれば第8回「プレゼンテーションを作る」になるし、話す内容を構造化することは第5回「考えを整理する」を利用できるし、適切な例示は第10回「具体的に伝える」を取り入れることもできる。

おわりに

最後に注意しておきたいのは、この番組は「出来上がったものを話して伝える」(スピーチ)ことを学ぶものであって、話し合いや対話の中での話すスキルを扱うものではないことに注意されたい。話し合いの途中では、考えが浮かんだり整理したりしながら、どちらかといえばたどたどしく話すであろう。
どういう学習場面でどういうスキルが必要なのか、を見極めて学習活動を設計することが必要である。