番組活用コラム~しまった!を教科等の学習で効果的に活用するために~

学習過程の中で「表やグラフ」を学ぶ

東京学芸大学 准教授 高橋 純

子供にグラフを示して「このグラフで7月の気温は何度ですか?」と聞けば、「25度」などと正確に読めることは多い。グラフの基本的な読み書きはできる。一方で、理科の実験等で数値データを収集したときに、自らの判断で適切な「表やグラフ」に表現することや、その特徴を読み取ることに課題のある子供は多い。「表やグラフ」が、算数の問題としてはもちろんのこと、他教科や生活場面等においても、整理・分析のために活用できることが重要となる。

グラフの活用は、現行の学習指導要領解説「総合的な学習編」における記述が特徴的である。グラフは、探究的な学習過程「課題の設定」→「情報の収集」→「整理・分析」→「まとめ・表現」の中で、整理・分析や表現のために用いられると例示されている。この中で特に見過ごされがちなのは、整理・分析としてのグラフの活用であろう。例えば、実験をすると数多くの数値データが得られるが、数値データの羅列を見て考察するのでは 不十分であり、適切なグラフに整理し、分析や考察を行うべきである。
このように考えると、グラフを整理・分析に実際に活用してこそ、分かりやすく表現できるといえる。単にグラフで分かりやすく伝えようと考えても、何のためのグラフ表現なのか判然としない状況では、工夫には限界がある。このような観点から、本番組(第6回 表とグラフで表現する)で示された工夫を取り入れるとよい。

 図【学習過程の中でグラフを学ぶ】

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また、同解説には、整理・分析の配慮点として、「どのような方法で情報の整理や分析を行うのかを決定することである。数値化された情報であれば,統計的な手法でグラフにすることが考えられる。グラフの中にも,折れ線グラフ,棒グラフ,円グラフなど様々な方法が考えられる。言語化された情報であれば,カードにして整理する方法,出来事を時間軸で並べる方法,調査した結果をマップなどの空間軸に整理する方法などが考えられる。」とも示されている。繰り返しになるが、データを収集した際に(第3回 インターネット検索等)、データからそのまま考察してはならない。数値データであればグラフ(第6回 表とグラフで表現する)、言語化されたデータであれば思考ツール(第5回 考えを整理する)を用いて整理・分析する。さらに、グラフであれば、折れ線グラフ等、様々な方法を適切に選択する必要がある。その成果をプレゼンテーションなどのまとめ・表現につないでいく(第8回 プレゼンテーションを作る等)。最終的に、こういった一連の学習過程の中で、グラフの活用方法を学んでいく必要がある。図に例示したように、それぞれの番組をつなげて活用していくことが重要である。

次期学習指導要領(案)では、国語科において「引用したり,図表やグラフなどを用いたりして,自分の考えが伝わるように書き表し方を工夫すること」と示されている。現行にも同様の記述があるが、「伝わるように書くこと」となっていた。今回、より発展した「伝わるように書き表し方を工夫すること」となった記述を満たすためには、整理・分析のためにグラフで表現する考え方が一層重要となるだろう。

さらに、算数科では「D 数量関係」が、「D データの活用」に変わり、例えば、第2学年に「思考力,判断力,表現力等を身に付ける」として「データを整理する観点に着目し,身の回りの事象について表やグラフを用いて考察すること」といった記述が加わっている。データを得たらすぐに自分の考えを求めるのではなく、事実関係を観点に基づいてグラフ等に整理・分析し、考察することの重要性が、一層明確になっているといえる。

子供たちが、生活場面等でもグラフでうまく表現できるようになるためには、グラフに関する基礎的な知識や技能の習得を前提に、さらに探究といった学習過程の中で、具体的に学んでいくことが一層重要といえるだろう。本稿ではグラフの活用を中心に述べてきた。表の活用についても、同様であろう。