授業例

「表とグラフで表現する」の回を活用した授業例

三重県松阪市立三雲中学校 指導教諭 楠本誠

理科の学習では、観察や実験から得られるデータを数値化し、表やグラフで表すことがあります。表やグラフを活用すると、数字などの情報を人にわかりやすく伝えることができます。棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフなど、それぞれの特徴を知り、グラフを正しく作成したり、正しく読み取ったりできることで、考察を深めることができます。
そこで、番組をきっかけに、グラフを作成する力、グラフを読み取る力の定着、活用をめざし理科の授業に活かしてほしいと考えました。

授業例

1 教科  中学校1年理科

2 単元  溶解度曲線

3 本時の目標
塩化ナトリウムと硝酸カリウムを常温、30℃、60℃の水に溶かし、結果をグラフにまとめることで、溶かす物質の溶ける量と水温の関係を理解することができる。

4 本時の流れ
第1時

時間 ・学習活動 ・指導上の留意点
5分 1. 本時の課題を知る
課題:いろいろな温度の水に食塩、硝酸カリウムを溶かして、わかったことをまとめよう
5分 2. 予想する ○これまでの体験や経験などから結果を予想させる
20分 3. 各班で実験を行い、結果をグラフに書く ○班によって扱う物質を分ける。偶数班は塩化ナトリウム、奇数班は硝酸カリウムを扱う
○各班でビーカーに入れた常温の水30ml、30℃の水30ml、60℃の水30mlに、それぞれ1gずつ溶かしていく。
※やけどに注意する
○各自で結果を表にまとめグラフを書く
→ わかりやすいグラフにするためには、どのような点を意識すればよいか考えさせる。
15分 4. 考察する ○作成したグラフを見て結果を考察する
5分 5. 振り返りを行う ○振り返りを行う

第2時(本時)

時間 ・学習活動 ・指導上の留意点
10分 1. ペアになり、前時に作成したグラフを比較する ○グラフを比較し、気づいたことを共有する
→塩化ナトリウムと硝酸カリウムの結果を比較させる
→比較しにくいグラフ、比較しやすいグラフについて考えを共有する
5分 2. 本時の課題を知る
課題:二つの実験結果をわかりやすく表すグラフ」はどのようなグラフであればいいだろう
15分 3. 「しまった!表とグラフで表現する」
を視聴する
○番組で印象に残ったことを記録する
5分 4. どのようなグラフを書けばわかりやすいかを
考える
○データを比較するためにはどのようなポイントを意識してグラフを作成すれば良いか考える
→データから何を伝えたいか考える
→最大値を確認する
→一目盛りの幅をそろえる
5分 5. 2人のデータからグラフを作成する ○二つのデータをわかりやすく比較するためにはどのようなグラフを書けば良いだろう
○同じデータを他のグラフで表すとどのように伝わるだろう
5分 6. グラフから結果を考察する ○物質の種類によって水温や溶ける量が異なることに気づかせる
5分 7. 振り返りを行う ○振り返りを行う

番組活用のワンポイント

ポイント1 タブレットで視聴しよう

番組は1人1台のタブレットで視聴しました。それぞれの生徒が、興味のある場面を一時停止させて視聴したり、何度でも再生して視聴したりすることができます。生徒は「もう一回みたいと思う場面を自分で再生できたのでよかった」「画面を止めてグラフのポイントをメモすることができた」などの意見をあげていました。タブレットで番組を視聴することで、生徒は個に応じた情報を得ることができ、学びを深めることができます。番組は10分ですが、それぞれの子が自分に合わせてタブレットで視聴するために、本時の流れで番組視聴を15分に設定しました。

ポイント2 基礎基本を学び直そう

折れ線グラフ、棒グラフなどのグラフは小学校で扱います。しかし、本実践においてもグラフの作成や読み取りを苦手とする生徒が見られました。そのような生徒にとって、番組を視聴することで、グラフの特徴や基礎基本の学び直しができます。また、番組を視聴し、その後、複数のグラフを比較したり、同じデータを他のグラフで表したりすることで、情報活用スキルの活用につながります。

ポイント3 グラフの作成と共有で学びを深める

本実践では個人で実験結果のデータをグラフにしました。その後、他の生徒が作成したグラフと比較し、意見を共有しました。伝えたい結果が正確に分かるようになっていたかを問うと、生徒は「同じ種類のグラフでも目盛の値や階級の幅の違いによって情報の伝わり方が異なること」や、「表やグラフの単位に目を向けると、比較する複数の視点があり、様々な読み取り方ができること」などをあげていました。一つのグラフの作成、読み取りから、複数のグラフの比較、読み取りにつなげることで学びが深まったと考えます。

実践の様子

実験を行い、結果のデータは個人でグラフにまとめました。「実験結果のデータをわかりやすく表したグラフ」であれば、グラフの種類や目盛りは自由であってよいこととしました。班で行った実験なので、同じデータをそれぞれが扱うことになります。しかし、生徒が作成したグラフは異なりました。「縦軸と横軸を逆にする」「適切な目盛りの値がとれない」「適切なグラフの種類を選べない」グラフが見られました。他の生徒とグラフを比較して、共通点や相違点を説明しました。
その後、番組を視聴しグラフの特徴をまとめました。

1 棒グラフ:棒の高さで、量の大小を比較する場合。
2 折れ線グラフ:量が増えているか減っているか、変化の方向をみる場合。
3 円グラフ:全体の中での構成比をみる場合。
4 帯グラフ:構成比を比較する場合。

その後、再び、二つのグラフを「二つの実験結果をわかりやすく表すグラフ」を作成しました。多くの生徒は「食塩と硝酸カリウムの溶解度曲線」として縦軸に溶解度、横軸に水温をとったグラフを作成しました。一方で、グラフの特徴を活かし、「常温、30℃、60℃のときの食塩と硝酸カリウムの溶ける量の比較」として棒グラフで量的に示す生徒もいました。
複数のデータを扱うとき、何を示すために、どこに視点をあて、どのようグラフで表現すれば良いかを考えることができました。

さいごに

理科の学習では、結果を表やグラフに表します。そして、表やグラフを読み取り、分かったことや予想できることを説明しあい、考察につなげます。つまり、正しくデータをグラフに表したり、正しくデータを読み取みとったりできると考察を深めることができます。
また、どのようなデータを扱うかによって活用するグラフは異なります。生徒自身が、扱うデータとグラフの特徴を確認し、適切なグラフを選択できるようになればと思います。
本実践では、番組はグラフの作成、グラフの読み取りの基礎基本の確認をする目的で視聴しました。小学校で学んだことを思い出した生徒や、グラフに興味を持つ生徒も見られました。
今回、二つのデータをグラフで表し比較しました。生徒は「一つのデータからグラフは書けたが、二つのグラフを見せ合うと自分のグラフの目盛りの取り方と違っていて戸惑った」「二つのグラフを比較して、一つのデータの時には気づかなかったポイントがいくつかあった」等をあげました。
今後も、番組の視聴だけでなく、番組を活用し、学びをつなげていける授業デザインを考えていきたいと思います。