番組活用コラム~しまった!を教科等の学習で効果的に活用するために~

情報をまとめるためのふせんの指導

国立教育政策研究所 総括研究官 福本 徹

「ふせん」って何だろう?

授業風景

今回のテーマは「情報を整理する」。
ふせんは非常に便利で、たくさんの情報を整理するには大変効果的なのはご案内の通りである。
ところで、そもそもふせんの使い方について、ご自身が指導を受けた経験のある先生方はどれぐらいいらっしゃるだろうか。「なんとなく使っているうちに使えるようになった」とか「改めて使い方と言われてもはっきりはわからない」という先生方もいらっしゃるのではないかと思う。
この「なんとなく使える」というのは曲者で、ふせんをポンと渡されていきなり使ってしまうと、番組にあったような「キーワードで書かずに長い文章で書いてしまう」とか「たくさんの情報を1つのふせんに書き込んでしまう」といった、整理できないふせんがたくさんできてしまうことになる。
例えば、学校などで行われる研究授業の事後検討会といった場で、授業について気づいたことをふせんに書き込むといったような、情報を表現する場合のふせんはこれでもよいかもしれないが、情報を整理する場合には使い方に関するお作法が必要となる。

ふせんの使い方には指導が必要

「そもそも、ノリがついた場所をどこの位置にするか、縦書きなのか横書きなのか、何色のふせんにどういう意味を持たせるのか、などツールとしてのふせんについて、指導すべき事項は何点かある。
個人で思考するために利用する場合にはそこまで統一する必要はないだろうが、少なくとも「1枚のふせんには1つの情報のみを書く」とか「キーワードのみを簡潔に書く」とか「表面のみに書く」といったことはお作法として指導すべき事項である。また、グループやクラス全体で何かを分類したりまとめ上げたりするためにふせんを共有しようとする学習活動を行うのであれば、一定の約束事は必要となる。

以上のような話を、行く先々の学校で話題として提供すると「確かにそうだ」「言われてみると指導したことがない」などの声を先生方から頂戴する。
そこでこの番組を紹介すると、非常に関心を持って下さる。このシリーズに共通して言えることだが、一見すると地味なように見えて、意外と待ち望まれている教材の最たる例かもしれない。

情報をまとめるにはふせんが効果的

授業風景

似ているものをまとめていく際には、ふせんが効果的である。あれこれと試行錯誤しながら、視点を定めつつ似ているかどうかを比べて、分類をして、似ているものの同士でグループ分けして、そのグループにラベルを貼る、というのは、情報整理の王道である。
川喜田二郎は『発想法』の中で、紙カードに情報を書き出して、似たもの同士をまとめ上げていく形で整理すると述べられた。紙カードでもできなくはないが、平面で行う必要があったり、何度もはがしたりして試行錯誤する、というのはなかなか難しい。ふせんであれば、番組にあったようにホワイトボードに貼ってみんなで確認することも容易である。

例えば、小学校3年生社会科「昔のひとたちのくらし」の単元の導入で、洗濯板や井戸の実物や見て、気づいたことは黄色のふせん、もっと知りたいことは赤のふせんに書き出して、グループで似たふせんをまとめ、クラス全体で共有し、学習問題を立てる。
国語科の意見文を書く言語活動で、友達が書いた意見文にふせんを用いてコメントし、意見文の書き手はふせんを元に似たようなコメントをまとめて推敲し、より良い意見文にしてゆく。
変わった例では、体育科におけるゲームで、作戦を立てる際にも使うことはできる。あくまで例示ではあるが、意見をまとめ上げていく場面や、多くの情報を整理する場面では非常に有効であろう。
こうした活動を、教科等をまたいで何度も繰り返すことで、ツールとしてのふせんの使い方に習熟していくのである。

ふせんの役割を一言でまとめると「試行錯誤ができるツール」である。使い方の自由度が高いがゆえにベースとなる指導はきちんとする必要があるし、みんなで使ったりまとめたりするときには約束事が必要となる。
ぜひこの放送教材を使って、ふせんの指導に取り組んでみてはいかがだろうか。

参考文献

  • ・川喜田二郎 『発想法 – 創造性開発のために』中公新書 1967年