授業例

「情報を整理する」の回を活用した授業例

三重県松阪市立三雲中学校 指導教諭 楠本誠

中学校理科の学習では、植物や動物、気体や岩石をそれぞれの特徴から、なかま分けしたり、同定したりすることがあります。なかま分けや同定するためには、多くの特徴の中から根拠を見つける必要があり、そのためには、情報を整理する力が必要です。ここで、有効なのが付箋紙の活用です。特徴を付箋紙に書き、付箋紙を分類し、グループで見出しをつけ、まとめていきます。この活動によって生徒は情報を整理して考えることができます。しかし、一枚の付箋紙に多くの情報を書き込んだり、長文で書き込んだりすると、その後の付箋紙を分類したりまとめたりすることが難しくなります。そこで、本番組を活用し、より効果的に付箋紙を活用し情報を整理するスキルを身につけさせたいと考えました。

授業例

1 教科  中学校1年理科

2 単元  火成岩

3 本時の目標
各班に配布された火成岩Xを観察し、色、組織、鉱物の種類などの岩石の特徴から、火成岩6種(流紋岩、安山岩、玄武岩、花こう岩、せん緑岩、斑れい岩)のどの岩石であるかを同定することができる。

4 本時の流れ

時間 ・学習活動 ・指導上の留意点
2分 1. 本時の課題を知る
課題:「火成岩X」は何岩か、根拠を示して特定しよう
10分 2. 各班に配布された火成岩Xを観察する ○個人で気づいた特徴を付箋紙に記入する
○付箋紙は火成岩Xを特定するために「情報を整理する」ことを意識して記入させる
10分 3. グループで付箋紙を分類しまとめる ○ワークシート①にそれぞれの付箋紙を張り、分類させ、まとめる
10分 4. 番組を視聴する ○「情報を整理する」ための付箋紙の活用について改善するポイントを共有する
5分 5. 自分の付箋紙を再検討する ○自分が書いた付箋紙を「情報を整理する」視点で見直す
○情報を分けたり、キーワードで書いたりする場合は付箋紙の色を変え作成し直す。
5分 6. グループでそれぞれが書いた付箋紙を出し合い分類する ○ワークシート②にそれぞれの付箋紙を出し合い分類させる
5分 7. 根拠を元に火成岩Xを特定する
3分 8. 振り返りを行う ○本時の振り返りを行う
○ワークシート①とワークシート②を比べて、どのようなことが変わったか

番組活用のワンポイント

ポイント1 生徒の体験、経験を活かそう

今回は、番組視聴の前に、付箋紙を使って「情報を整理する」活動を行いました。そのとき、「今回のやり方では情報を整理することができず、何か、すっきりしなかったなあ」と感じた生徒もいました。視聴前に、番組と同様の体験、経験をしておくことで、番組内の「しまった!」が実体験と重なります。そのことで情報活用のポイントが深まり、スキル活用の改善につながります。

ポイント2 情報活用スキルの活用場面を増やそう

本番組は情報活用スキルの「しまった!」ポイントに気づき、それを改善していくことがテーマです。今回は「情報を整理する」スキルを取り上げており、情報を整理するためのポイントを学ぶことができます。 授業の最後に生徒は「今回の情報活用スキルは、他にどのような場面で活用することができるのか」を考えました。ある生徒は部活で「次の試合に勝つために課題を出し合い練習メニューを決める」、ある生徒は「次の定期テストに向けて、今の弱点からテスト勉強の計画を立てる」などの活用を挙げました。生徒自身で情報活用スキルを活用する場面を、自分ならどの場面で活用できるかを意識させ、実際にスキルを活用する場面を増やしていくことも大切です。

ポイント3 学びの変容を実感させよう

生徒自身に「情報を整理する」スキルが本実践でどのように変容したかを実感させたいと考えました。そこで、番組の視聴前に生徒が書いた付箋紙と、視聴後に書いた付箋紙の色を変えました。授業後の振り返りで、生徒が書いた付箋紙の色に注目し、事前の考えと事後の考えを比較することで、自己変容を意識しやすくなりました。生徒の意見では「付箋紙の枚数が増えたので、自分の考えが増えたことがわかった」「付箋紙の枚数がはじめより増えたのは、自分の考えを整理して付箋紙を書くことができたからだと思う」などが見られました。

実践の様子

生徒は番組を視聴した後に、自分が事前に書いた付箋紙を見直しました。例えば、一枚の付箋紙に書いた考えを、複数に分けて書いたり、キーワードで書き直したりするなど、それぞれが事前に書いた付箋紙の内容を改善していきました。
また、実践を終えた後行った振り返りでは、生徒は自分の「しまった!」ポイントとそれを改善するポイントを以下のように挙げていました。


特徴を書くことだけを考えてしまい、何のために付箋紙に書くのかを意識できなかった

→ 今回の付箋紙活用は、情報を整理することが目的であった。目的を意識して情報を整理するためにはどのような情報を、どのように記入すれば良いのかを考える

付箋紙に特徴(情報)をたくさん書いてしまった

→ 付箋紙の分類をしやすくするために、一枚に一つの情報を記入する

付箋紙に書き込む特徴が長文になってしまった

→ 付箋紙の分類をしやすくするために、キーワードで記入する
→ 情報を整理するための付箋紙活用であるので、メモではなくキーワードで書く

さいごに

付箋紙を活用して情報を分類する、情報を整理するなどの学習活動は、中学校でも少なからずあります。今回視聴した番組では付箋紙を活用して「情報を整理する」スキルを扱っています。本実践では番組を視聴した後も理科や学活、道徳などで「情報を整理する」スキルを活用する場面を取り入れて授業を行ってきました。生徒は、「このスキルは、他にどのような場面で活用できるだろうか」、「このスキルは付箋紙を使わない方法はないのだろうか」、など、さらに広げて考える生徒も見られるようになりました。実践をきっかけにして、スキルのレベルをあげる生徒、スキルの活用場面を考える生徒、スキルを活用して学びを深めていく生徒が増えていけばと思います。