番組活用コラム~しまった!を教科等の学習で効果的に活用するために~

なぜ「インターネットで調べる」学習指導が必要か

東京学芸大学 准教授 高橋 純

(1)学習指導要領解説では

現行の学習指導要領解説には、児童生徒によるICT活用に関する記述が多数ある。この中で、インターネットで調べるといった「情報の収集」は、最も期待されているICT活用といえるだろう。段落数で小学校23件、中学校29件の記述がある。
具体的な記述の例を以下の表に示す。多くの記述は、既にインターネットで調べるスキルを習得していることが前提となっている。加えて、新聞や雑誌など他の調べ方も習得しており、それぞれの特徴に応じて調べる方法を選択することも期待しているケースもある。

小学校

  • 社会(3・4年)「取り上げた地域の市役所などに問い合わせたりインターネットを活用したりして県内の特色ある地域に関する資料を収集し、有効に活用する」
  • 国語(5・6年)「本を中心とした資料から新聞や雑誌、インターネットなど様々なメディアへと、その活用や情報収集の範囲も広がっていく」
  • 総合的な学習の時間「情報の収集に当たっては、図書やインターネット及びマスメディアなどで必要な情報を得るにはどのようにすればよいのか、それぞれの長所や短所は何で、場面に応じてどう使い分けるのかというような、情報の収集方法についても、実際に体験する中で習得させたい」など

中学校

  • 理科(第2分野)「空中写真や衛星画像、情報通信ネットワークを通して得られる多様な情報を活用したりして、時間的・空間的に広い視野からとらえさせ、自然と人間のかかわり方についての認識を深めさせることが考えられる」
  • 数学(3年)「インターネットなどの情報通信ネットワークを利用して資料を収集したり、様々な標本調査について調べたりすることも考えられる」など

(2)「インターネットで調べる」学習活動とは?

一般に、インターネットでの検索は。単語を入力すればすぐに結果が表示されることから、簡単であり、特に指導しなくてもできると考えられることもある。しかし、検索する操作自体は簡単にできても、調べ学習として成立させるためには、前提として身に付けておくべきスキルがある。本番組でも、この部分に着目している。 「インターネットで調べる」は、少なくとも2つの活動に分けられる。

1) 調べたいキーワードを選定し検索する活動
2) 検索結果を読みとる活動

2)の活動は、例えば、小学校社会科において、教科書に記載されているグラフや写真などの資料そのものを読み取る活動と似ている。「インターネットで調べる」とは、この2)の活動に、1)のキーワードを選定し検索する活動が加わったと考えられる。

児童生徒にとっては、たった一つのグラフ資料であっても、正確に読み解くことが難しいこともある。さらに複数の資料から、自らが必要とする情報を選択し読み取るのは、より難しい。仮に適切なキーワードでインターネットを検索しても、数千、数万のWebページがヒットする。この中から欲しい情報を選択し、読み取るためには一定のトレーニングが必要であろう。換言すれば、大人向けの情報である検索結果を活かしきるには、そもそも児童向けの資料程度はすらすらと読み取れる力が必要である。

(3)学習指導のポイント

「インターネットで調べる」について、特に身に付けて欲しいことは「しまった!第3回 インターネット検索」で紹介されている。ここでは、これらの指導を行う際の背景を解説する。

1) 調べたいキーワードの選定

複数のキーワードを用意する。一つは思いついても、複数を見つけることが難しいときもある。例えば、「環境問題」について調べたいと考えた際、これをそのまま検索しても、必要な情報を得ることは難しいだろう。複数のキーワードを発想する際は、海や大気或いは国や地域など「どこ」のことなのか、今や昔など「いつ」のことなのかなど、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を軸に発想していく方法も一つであろう。

複数のキーワードは、大事な順番に入力する癖を付けることも重要である。検索結果がキーワードの順番によって異なる場合があるのみならず、キーワードの上下関係、指し示す範囲の大小など、情報には階層構造や重なりがあることを常に意識することが、調べ学習のポイントでもある。インターネットでの検索は、図書での目次と異なり、知りたい情報の階層構造や重なりを意識せずに、ダイレクトにたどり着くことができ便利である。しかし、こういった理解が不要なわけではない。検索後に情報の絞り込みを効果的・効率的に行うためにも、キーワード選定の段階から意識できることが望ましい。

2)検索した情報を絞り込む

検索後、数多くのページから必要な情報を絞り込んでいく。番組では、「見出しや説明文で絞り込む」「信頼度が高い情報を探す」といった観点が紹介された。この際、先に述べた5W1Hや、情報の階層構造や重なりを意識することができれば、より適切に絞り込んでいくことができるだろう。もちろん、こういったことすらも分からないから検索するのであるが、検索とはこういったことを学ぶよき機会でもある。

信頼度の高い情報を選ぶには、信頼度の高い組織(公共機関など)が発信している情報を選ぶことになる。しかし、そもそも市役所等のHPに何が載っているか、探索する経験も必要である。公共機関の情報には、いつの情報なのか、この情報がどのように得られたのかが掲載されていることが多い。実際に市役所のHPを見たりしながら、こういった点を常に確認する癖を付けていく。さらに、例えば「公共機関」「フリーの百科事典(Wikipediaなど)」「個人サイト」等、サイトの制作者と情報の質を比較する学習をしておくことも方法であろう。

(4)おわりに

インターネットで調べることのうち、特に検索について述べた。これらの前提として、コンピュータの操作に慣れていること、文字入力に慣れていることが必要であることはいうまでもない。さらに、インターネットで検索することと、調べ学習はイコールではない。必要な情報を入手した後に、他の方法で入手した情報も含めて、どのように整理・分析して、まとめ・表現していくかも、また重要である。続く番組を是非参考にしていただき、一連の学習の流れの中で、しっかりと、インターネットで調べる力を付けていってもらいたい。