もやモ屋「く・う・は・く時間」の視聴を通して、【公平、公正、社会正義】を対象とした授業を行いました。誰にでも分け隔てなく接することの大切さについては、多くの児童が頭では分かっているものの、実際の行動につなげるということはなかなか難しいものです。このことについて考えていくため、主人公のショウタがもやもやする場面を中心的に取り上げ、議論していきます。
登場する同世代の少年少女たちの悩みや迷い、葛藤など、モヤモヤした気持ちを描くことで、視聴する子どもたちの心を揺さぶります。議論のきっかけを与え、子どもに進んで考えさせることで、自分ならではの“納得できる答え”が見つけられることを目指します。
この授業では、誰にでも分け隔てなく接することの必要性を確認した後に、そうあることの難しさ、人間の弱さについて考えていきます。オープンエンドという本番組の特性を生かし、自分がショウタだったらその場面でどのような行動をとるかということについて話し合っていく展開としました。番組によって、もやもやしているという感覚は教室全体で共有できるため、そのもやもやを言語化することによって自己を見つめ直すことが可能となると考えました。
授業導入時に事前に取ったアンケート結果を提示しました。結果から、誰にでも同じ態度で接することは難しいということを確認し、番組を視聴しました。児童が番組を視聴している最中に黒板に番組の場面図を位置づけておき、視聴後、どの場面が気になったかを確認しました。最後の場面が気になるという意見が大半であったため、迷っているショウタについて考えることとしました。ショウタがどんなことを考えていたかについて考える中で、道徳的価値についての理解を促していきました。その後、自分だったら言うか言わないかとについて、自分はどのあたりに位置づくかについて考え、その理由について交流をする中で自分を見つめ直していきました。
公平な立場で、ヨシトのことを仲間に言うことによって、ショウタにとって心配なことが起こることが考えられるものの、言わなかったらヨシトはもっと立場が悪くなってしまうことにつながってしまうということを児童はよく感じていました。その後、自分がショウタだったらどう行動するかを考えていく場面では、「ヨシトの立場がもっと悪くなってしまうのは分かってるんだけど、こっち(ヨシトのことを言わない)側になっちゃう」や「(自分が何か言われるのかもしれないという)心配はあるけど、やっぱりヨシトのことを考えたら言わないといけない」といった発言が多数あり、自己を見つめ直すことができていました。
授業後半部分では、児童が本音で話し合う姿が見られました。きれい事で終止するのではなく、心の葛藤部分を述べ合う中で、いろんな捉え方があるということに気づいていました。番組で描かれているもやもや部分が児童の心を揺さぶることとなり、結果的に深く自己を見つめ直すことにつながっていたように思います。教材によっては、表層部分で終止せざるを得ないものもあるのですが、この番組では全くそのようなことにはなりませんでした。本時の展開は、まさに、児童が自ら考え、議論する道徳となっていたように思います。
時間の めやす |
学習の内容・展開・発問例 | 指導上の留意点、準備するもの等 | |
---|---|---|---|
4分 |
課題を共有する。アンケート結果を提示し、分かっているけど、行動することは難しいことを確認する
|
事前にアンケートを行い、グラフを作成する |
|
13分 |
「く・う・は・く時間」を視聴する。番組視聴後、感じたことをペアで話し合い、気になる場面の確認を行う |
児童が視聴中に黒板に、話の概要を場面図として作成しておく |
|
10分 |
「誰にでも同じように接すること」について話し合う。発問:ショウタが迷っている場面で、ショウタはどんなことを考えているのでしょうか |
ショウタの考えていることを、「ヨシトのことを考えている内容」、「自分のことを考えている内容」の2つの観点に分けて板書に位置付ける |
|
8分 |
自己を見つめる。発問:あなたがショウタなら、どのように行動するでしょうか |
「言う」「言わない」のどのあたりに位置づくかをネームで貼らせ、意思表示をさせる。その後、理由について交流させ、多様な捉えがあることをつかむ |
|
5分 |
ふり返りを書く。 |
「もやモ屋」を活用した福田さんの実践は…小学校で、道徳が教科化されて数年が経ちました。特別の教科「道徳」の授業では、「児童一人一人が、ねらいに含まれる一定の道徳的価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を多面的・多角的に考え、自己の生き方についての考えを深める学習」が期待されます。福田先生は、そのために、授業前に、子どもたちに、「公正、公平、社会正義」に関わるアンケートに回答してもらっています。授業の導入時にその結果を示して、本時で扱う道徳的価値の思考を巧みに誘っています。また、福田先生は、番組視聴後においては、番組の登場人物の思いを観点別に整理することを子どもたちに求めています。さらに、授業の終末においても、番組の山場の場面をとりあげて、子どもたちに「自分だったらどのように行動するか」という判断を促しています。また、それをクラスの仲間間で比較検討させています。これらの工夫から、福田先生の授業は、「考え、議論する道徳」の好事例と言えましょう。 (木原 俊行)
「もやモ屋」を活用した福田さんの実践は…小学校で、道徳が教科化されて数年が経ちました。特別の教科「道徳」の授業では、「児童一人一人が、ねらいに含まれる一定の道徳的価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を多面的・多角的に考え、自己の生き方についての考えを深める学習」が期待されます。福田先生は、そのために、授業前に、子どもたちに、「公正、公平、社会正義」に関わるアンケートに回答してもらっています。授業の導入時にその結果を示して、本時で扱う道徳的価値の思考を巧みに誘っています。また、福田先生は、番組視聴後においては、番組の登場人物の思いを観点別に整理することを子どもたちに求めています。さらに、授業の終末においても、番組の山場の場面をとりあげて、子どもたちに「自分だったらどのように行動するか」という判断を促しています。また、それをクラスの仲間間で比較検討させています。これらの工夫から、福田先生の授業は、「考え、議論する道徳」の好事例と言えましょう。 (木原 俊行)