実践リポート

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「未来広告ジャパン!」で発信型の協働学習

石井 里枝 教諭

石井 里枝 仙台市立錦ケ丘小学校教諭

『未来広告ジャパン!』は日本の国土と産業を学ぶ社会科の番組です。日本の未来を考える広告を手がける「ジャパン広告社」の企画会議と取材現場を舞台に設定し、その取材の過程での発見や、取材結果をCMの形にまとめていく様子から、日本の社会が、特徴的な自然環境や、さまざまな人々の活動によって成り立っていることを知ることができます。また、「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び」を支援することを意図し、番組及び番組ウェブサイトが構成されています。子供たちが番組から学んだことを整理し、CMを制作して発信するまでを、サイト内で提供している様々なコンテンツが支えてくれます。

未来広告ジャパン!【対象】小学校5年/社会

未来広告ジャパン!

番組では「ジャパン広告社」のCMディレクター・キラトと、ロボットのTan-Qが日本について徹底調査。現場で暮らしたり、働いたりしている人のインタビューなどを交え、調査結果を分かりやすくコンパクトなCMにまとめます。

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活用のねらい

図1
コンテンツを活用した協働学習のデザイン

社会科学習を通して、社会的な見方や考え方を育てるためには、社会的な事象を異なる立場や視点から多面的・多角的に考察していく過程を大切にして、考えたことを自分の言葉でまとめて伝え合うといった、他者との協働的な学習が欠かせません。
『未来広告ジャパン!』は、「CM」をコンセプトとし、CMの作成・投稿ができるだけでなく、多様な視点から制作された動画クリップが充実していることにより、協働学習が支援されることが期待できます。
そこで、CM作成を学習のゴールとし、「見て・考え・意見を表明する」協働学習の展開を図1のように構想しました。番組視聴によってふくらんだ疑問から課題を設定、CMの協働作成を通して意見表明する授業デザインです。
Webコンテンツが大変充実しているこの番組の継続視聴を通して、難しい問題も具体的に考えていくことができ、課題づくり、課題解決、解決結果の発信に意欲的に取り組めるとのではないかと考えました。

授業の様子

動画クリップの分担視聴

話し合いで活用したシンキングメーター

シンキングメーターを使って
理想の自給率を議論

「これからの食料生産とわたしたち」では、単元の導入場面で番組を視聴しました。子供たちは日本の食料自給率が39%であることに衝撃を受け、「これは低すぎるのではないか。」「100%を越えている国もあるのに、なぜ日本はこんなに低いんだろう。」といった疑問を持ち、「低いままでいいのか。」「低い理由は何だろう。」と問題意識を高め、「日本の食料自給率は低いままでよいのか。」と学習課題を設定し、解決していくことになりました。

課題解決のために、まず行ったのが、①輸入が支える食生活②フードマイレージ③食料輸入の問題の3つの動画クリップの分担視聴でした。NHK for Schoolのプレイリストを用いて、グループ毎に視聴する動画クリップを指定し、視聴しました。ジグソー学習を取り入れ、エキスパートグループで、それぞれの動画クリップから分かったことを基に課題に対する考えを持ちました。

その後、異なる動画クリップを視聴した結果を持ち寄って話し合うジグソーグループでの話し合いの際には、「シンキングメーター」を用いて理想の自給率について示しながら、その理由を整理していきました。

自分の理想の自給率を示し合うことで、意見の違いが生じ、なぜその自給率を目指すのか動画クリップから読み取った内容を根拠にして説明せざるを得なくなり、熱く語り合いながら食料生産についての認識を深めることにつながっていきました。

子どもの変容

タブレット端末でCM制作

CM制作の様子

子供たちは、「自給率が低いままでは良くないけど、輸入をやめることもできない。」という現実に悩みながらも、自分たちの思いを発信することで、日本の食料生産を元気にしていきたいという気持ちを高めました。そして、CMを制作してNHK for Schoolに投稿し、自分たちの熱い気持ちを全国の人たちに伝えることにしました。自分たちの思いをCMで伝えることは、それまでに調べて分かったことをもう一度見直して再吟味することになりました。CMの画像や言葉を選択したり、順序を考えたりしながら、お互いの意図を確認し合うことが、自らの主張を明確にしようとする姿につながっていきました。『未来広告ジャパン!』を活用することで、子供たちは日本の産業のこれからについて、根拠を明確にした自分の考えを発信することができるようになりました。

実践を振り返って

学習課題を設定する場面で番組を活用したことで、番組のストーリー展開に沿って児童が課題意識を高めていく様子が見られました。また、調べ学習の資料として動画資料を活用したことは、自分のペースで何度も繰り返し見ることを可能にしました。映像と解説文の両方を調べることで、社会的事象をより具体的で身近なものに感じたり、自分の生活と比較したりしながら考えることにもつながりました。多様な視点からの考えをつきあわせて課題解決に向かう活動を通して、自分の考えを主張する場合には、多くの証拠を集めて考えを決めようとする意識の高まりや、他者の考えを生かしながら、自分の考えを再構築していこうとする意識の高まりも見られるようになりました。この学習を通して、子供たちは、他者との協働の意味を見いだすことができるようになったと実感しています。

本時案(授業プラン)

「これからの食料生産とわたしたち」学習計画(全4時間)
学習活動 留意点

情報の整理
・解釈
(2時間)

1. 日本の食料自給率を知り、学習課題を把握する。

日本の自給率は低いままでよいのだろうか?

2. 日本の自給率が低い理由について動画クリップを使いエキスパートグループに分かれ調べる。

【エキスパートグループ】
A:輸入が支える豊かな食生活
B:フードマイレージ
C:食料を輸入にたよることの問題

3. 調べた結果についてジグソーグループ(ABCの混合)で整理する。

【ジグソーグループ(CM制作グループ)】

  • ジグソグループにおいてエキスパート活動で調べて分かったことを伝え合う。
  • シンキングメーターを使って理想の自給率について話し合う。

4. 学級全体で、課題に対する考えを検討する。


5. 自分の考えを記述する。

1. 第9回「どうする?これからの食料生産」の前半を視聴する。


2. 動画クリップの視聴をしながら、分かったことを付せん紙にメモさせる。





3. 「よい」「よくない」という判断を迫る課題を与えることにより、事実をどう捉え、自分たちの班の考えとしてどう生かすか、という話し合いが生まれることを期待している。それぞれの資料を踏まえ、判断したことをまとめさせる。




4. 班で出た意見、考えを構造的に板書に整理し、それぞれの発表の関連付けが視覚的に分かるようにする。

5. 学級での話合いを元に、最終的な自分の考えをノートに記述させる。

CMづくり
(2時間)

★日本の自給率を上げるために、自分たちにできることを伝えるCMを制作する

1. CMのキーワードを考える。


2. CMで使用するキーシーンを選ぶ。

3. CMを制作する。

  • グループで話し合い、4コマのCMを制作するためのキーワードとキーシーンを絞り込み、CMにする。



1. 自分たちが主張したいことをキーワードとして付せん紙に書かせる。
2. 主張とCMの構成に合うキーシーンを選ばせる。

3. 4コマで表現するという制限を設けることで、

言葉や映像を吟味させる。

稲垣 忠

「未来広告ジャパン!」を活用した石井さんの実践は…社会課題について私たちが話合う際、少しずつ認識や方向性にズレがあります。単なる思いつきや意見を強く主張する人の考えを押し通すのではなく、事実に基づき、ズレと向き合い、よりよい解決策へ向けて対話することは、社会科の学習が目指す「公民としての資質・能力」に直結します。石井先生の実践では、番組を対話する上での共通の基盤としつつ、3本の動画クリップを分担視聴し、対話することで多面的に考察し、対話する機会を設けています。さらに、長さを限定した動画でまとめることにより、多様な意見の羅列ではない、対話を通した合意形成・判断する学びを実現しています。 (稲垣 忠)

稲垣 忠

「未来広告ジャパン!」を活用した石井さんの実践は…社会課題について私たちが話合う際、少しずつ認識や方向性にズレがあります。単なる思いつきや意見を強く主張する人の考えを押し通すのではなく、事実に基づき、ズレと向き合い、よりよい解決策へ向けて対話することは、社会科の学習が目指す「公民としての資質・能力」に直結します。石井先生の実践では、番組を対話する上での共通の基盤としつつ、3本の動画クリップを分担視聴し、対話することで多面的に考察し、対話する機会を設けています。さらに、長さを限定した動画でまとめることにより、多様な意見の羅列ではない、対話を通した合意形成・判断する学びを実現しています。 (稲垣 忠)

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