「しまった!」では情報活用スキル「しらべる・まとめる・つたえる」方法が分かりやすく紹介されており、様々な教科の学習や生活場面につなげることができます。たくさんの「しまった!」は、子どもたちの失敗とつながります。失敗から学ぶことで、より良い調べ方、まとめ方、伝え方を考えていくことができます。
※この実践および所属は、2016年度のものです。
調べ学習や協働的な活動で、タブレットやパソコンを使うとき、子どもたちが情報活用の基本を知らないことから思わず「しまった!」と声を出してしまうような場面がよくあります。そんな失敗例を取り上げ、その回避・解決方法をわかりやすく、楽しく導き、「情報活用スキル」を育てます。
「自分の考えを分かりやすく伝えましょう」と、様々な学習場面で私たちは子どもたちに声かけしています。しかし、ただ単に「分かりやすく」と声かけしているだけで、「どうすれば分かりやすくなるのか」ということを指導できているでしょうか。やる気と気合いだけでは「分かりやすく」伝えられるようにはなりません。まずは、思考を整理する型(思考ツール)を学ぶことによって、日常生活に発展させていくことができます。
「説得できているつもり」「しっかりと主張できているつもり」で子どもたちはいます。まずは、「~のつもり」の自分に気づくことから学習を進めていき、多くの「しまった!」ポイントからより良い「自分の考えの整理の仕方」を学ぶことができます。
まず、放送を視聴する前に、「なぜ、スマートフォンは便利なのか」というテーマについて自分の考えを伝える機会をつくりました。放送内容と全く同じ経験です。子どもたちはメモに、思いついたことをどんどん箇条書きをしているだけで、自分の考えを相手に伝える時には、結局何を伝えたかったのかが子どもたち自身もよく分からなくなってしまっていました。
その後に放送を視聴すると、自分たちの失敗と重なるような「しまった!」ポイントが多くあったので、「僕たちと一緒だ。」「そうなんだよね、比べたらよかった。」と共感する姿が多く見られました。また、「箇条書きはダメでしょ。もっと~」と、どうすれば良くなるかまでつぶやく子が出てきました。
そこで、放送を途中で止めて、「どうすれば分かりやすく伝えることができるだろう?」と考えました。すると、「比べると良い」「根拠と理由を書く」という意見が出てきました。しかし、自分の考えを整理する方法は知りませんでした。だからこそ、放送を再開して考えを整理する方法が示されると、子どもたちは食いつくように視聴していました。放送後には、「自分たちも思考ツールを使って整理してみたい。」との声が挙がりました。
こうした子どもたちの声をもとにして、もう一度自分の考えを思考ツールを使って整理しました。「すっきりした」「分かりやすくなった」との声が挙がり、相手に伝える時にも迷いなく自信を持って伝える姿が多く見られました。
子どもたちのふり返りには、
と書いてありました。その後の理科の学習で「生物と水との関係」をテーマに自分の考えを伝える時にも、「先生、思考ツール使ってもいいですか。」という声が挙がりました。自分の道具にしようとする姿が見られます。
「比べると良い」「根拠と理由が必要」だとは分かっていても、なかなか活かすことができなかった子どもたちが、思考ツールを通してより自分の考えを整理することができるようになりました。「分かっている」ことができやすい環境が生まれたことは、子どもたちにとって意味を持つことになりました。
今回は、もともとスマートフォンについて話をする機会があり、そこから実践へとつなげていきました。また、いきなり放送を見ても、自分の「しまった!」とつなげることは難しいと考え、放送と同じ体験を子どもたちにもできるようにしました。自分たち自身が「しまった!」と感じていたからこそ、自分とつなげて放送から学ぶことができたようです。
正直、私自身簡単に「自分の考えを分かりやすく伝えましょう」と子どもたちに話していたなと反省しています。今回の放送を通して、子どもたちは考える道具を手に入れました。どこで、何をどのように使うかはこれからたくさんの経験、たくさんの「しまった!」を通して学んでいくでしょう。
時間のめやす | 学習の内容・展開・発問 | 指導上の留意点、準備 |
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0~5分 | 導入
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5~12分 | 活動例①
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13~20分 |
活動例②
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21~27分 |
活動例③
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28~38分 |
活動例④
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39~40分 | 振り返り
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「しまった!」を活用した若松さんの実践は…「しまった!」の大きな特徴である、番組に出演する子どもの「失敗」を若松先生はうまく生かされています。あえて実際の子どもたちの学習活動を先に行い、うまくいかない体験をさせた上で、番組を視聴させることで、子どもたちが確かな実感を得ることができるような学習活動を組まれているところが参考になります。また、それをただやみくもに反省させるのではなく、ツールの活用体験を通して、失敗を解決する方向へ持っていっています。報告では子どもたちのその後の別の教科での様子が紹介されていますが、ひとつの番組、特定の時間での活動を確かなものにすることで、他の学習の基礎となっていきそうな可能性が感じられます。学習スキルの基礎を学ぶ「しまった!」の活用例、それもはじめの第一歩として、好事例と言えます。(寺嶋 浩介)