1人1台端末環境とNHK for School活用

放送大学 教授 中川 一史

GIGAスクール構想により、1人1台端末と高速情報通信ネットワークの活用が本格化しました。文部科学省は、「GIGAスクール構想の実現へ」の中で、「学びへの活用」として、「“すぐにでも””どの教科でも””誰でも”使えるICT」「“1人1台”を活用して、教科の学びを深める。教科の学びの本質に迫る」「“1人1台”を活用して、教科の学びをつなぐ。社会課題の解決に生かす」の3つをあげ、1人1台端末活用の具体を示しています(図1)。この環境下でも、NHKfor Schoolをぜひ上手に活用して子どもたちの学びを深めたり、広げたりすることに結びつけていけたらと思います。

図1 学びへの活用

これまで多くの学校で1人1台というと、学校内で40台とか80台の学習者用コンピュータをたまに1人1台活用する「共有状態」でしたが、これが常時1人1台活用する「占有状態」になりました。この「共有」と「占有」の違いは、とても大きいのです。

文部科学省が2020年に公開した教育の情報化に関する手引(追補版)によりますと、「(略)これからの学びにとっては、ICTはマストアイテムであり、ICT環境は鉛筆やノート等の文房具と同様に教育現場において不可欠なものとなっていることを強く認識し、その整備を推進していくとともに、学校における教育の情報化を推進していくことは極めて重要である。」と、示しています。まさに文房具と同様に一人ひとりが普段使いの中で、端末を活用していくようになります。

これまで一斉に視聴していたNHK for Schoolも、子ども一人ひとりのタイミングで必要な番組やクリップを視聴しながら、個別で最適な学びのために活用する(脱・一斉オンリー)ことも想定されます。自分のペースで同じクリップを何度も確認する。そういう使い方もこれからは当たり前になっていくでしょう。もちろん、一斉視聴した前後に、自分や友達の鉄棒の様子を端末で撮ったり、デジタルワークシートに意見を書き込んだりするという使い方もできます。また、端末によるNHK for Schoolの活用は、授業時間に限ったことではありません。朝の会や放課後の時間に、持ち帰りができるのなら家庭学習で活用する(脱・授業オンリー)ことも可能です。

1人1台端末は、これまでの学校で40台程度の共有での活用とは違い、授業で効果的に活用(図2の①)するだけではなく、日常的にも活用(図2の③④)し、さらには授業以外でも活用(図2の②③)することになるのです。コロナ禍において、NHK for School「おうちで学ぼう」も公開されましたが、アフターコロナにおいても、授業と連動しながら、今後も家庭で活用することが考えられます。

以上のように、子ども自身による課題の発見、情報の収集、整理・分析、まとめや表現などに、1人1台占有の端末によるNHK for Schoolの活用は、さまざまなツール・コンテンツの強力なOne of themとして日常的に威力を発揮します。

そして、1人1台の端末は、個別に使うだけではありません。協働での意見整理や協働制作、遠隔学習にも活用できます。この協働的な学びと個別で最適な学びをNHK for Schoolを絡めながら、子どもたちが相乗的に学びを深めていく(図3)のです。

そのような際に参考になるのが、「実践データベース」に掲載されている豊富な端末活用事例です。様々な教科・学年において、さらには活用シーンにおいての事例が満載です。ぜひ参考にしてみてください。

図2 二軸での活用

図3 協働的な学びと個別で最適な学び

【参考文献】
・文部科学省(2020)GIGAスクール構想の実現へ
 https://www.mext.go.jp/content/20200625-mxt_syoto01-000003278_1.pdf(2021.02.15取得)
・文部科学省(2020)教育の情報化に関する手引(追補版)
 https://www.mext.go.jp/content/20200622-mxt_jogai01-000003284_001.pdf(2021.02.15取得)
・NHK for School「おうちで学ぼう」
 https://www.nhk.or.jp/school/ouchi/(2021.02.15取得)

中川 一史 先生

中川 一史 プロフィール
放送大学教授、博士(情報学)。専門領域は、メディア教育、情報教育。全国の学校のSTEAM教育、プログラミング教育、端末活用、情報活用能力育成の授業づくりの指導・助言に関わっている。GIGAスクール時代のNHKfor School活用研究プロジェクト統括。「ツクランカー」「テキシコー」「プロのプロセス」番組委員。