本校には、外国にルーツをもつ生徒が48名在籍しており、日本語教室で日本語と教科を勉強しています。
日本語教室で勉強する“公民”では、私は、日本では当たり前のように教えられていることを、自分のルーツの国の社会や文化と比べながら理解したり、どちらの国のことも自分事として考えたりすることで、日本の“公民”の中に隠れている日本の社会や文化構造に気付き、それを言語化できる力を身に付けることを目標にしています。日本語教室に通う3年生の生徒を対象にした今回の授業では、外国にルーツをもつ者という視点で公民の動画「グローバル化、キミには関係ない?」を理解し、それぞれの考えをまとめて伝えられることを目標としました。
【1時間目】
初めて動画を見た生徒全員が「日本の労働力不足を補うために外国人労働者を増やすべきだ」という趣旨の感想を書きました。
【2時間目】
次の時間には、コロナ禍にハケンで働く多くの日系人が「労働力の調整弁」として解雇された新聞記事を読み、自分の周りの社会と“公民”の外国人労働者を繋げて考えながら、どうしたら多文化共生ができるのか意見を話し合いました。
【3時間目】
最終授業である3時間目には、これまで考えたことを元に、もし自分が番組制作者だったらどんな番組を作るか、番組制作者を宛てにお手紙を書きました。
ある生徒は、日本国政府と日本企業が日本語の学習環境を、日本語学校と賃金の保障の面から整備し、日本語ができるようになったら職業選択の自由があることを約束したうえで、日本語学習を促進するために仕事で活躍する外国人労働者を取り上げたテレビ番組を作りたいとまとめました。また、他には、母親が外国人であるが故に、職場で苦しい思いをしたことをまとめ、「外国人が〇〇で困っています。どうしたらよいでしょうか」という問題のクイズ番組を作ることで、日本人に外国人労働者のことを考えてもらう機会をつくりたいと書きました。さらに、多言語に対応したバラエティー番組を作り、一緒に座って、一緒に笑うことで親しい関係をつくることが重要だとまとめた生徒もいました。
3年生の生徒にとって、自身が“外国人労働者”になる日は決して遠くありません。この動画を通して、日本の雇用体制の中にある社会構造を知り、共生のための手だてを考えたことは、かれらの今後のキャリアに生かされると願っています。