第18弾

ゴールボール × 魔入りました!入間くん

鈴木入間役・村瀬 歩さんインタビュー

“音を見る”ゴールボールと声優業の意外な共通点

今回の「アニ×パラ」、(アニメ第3シーズンから)久しぶりに『魔入りました!入間くん(以下、入間くん)』の収録をされてみて、いかがでしたか。

村瀬:やっぱり「久しぶりに帰ってきたぞ」という感じがすごくうれしかったです。テレビアニメの収録では、コロナ禍だったこともあって、自分と掛け合うメンバーとしか一緒になれなかったんですけど、(今回)久しぶりにオペラさんとかサブノックくんとか、ほかの方とも会えたから、「なんかうれしいな」みたいな感じでした。みんな『入間くん』の世界観を体で覚えていたみたいで、始まったら「入間くん、こういう感じだったよね」というのが自然に出てきてうれしかったですね。

今回の『アニ×パラ』は『入間くん』と「ゴールボール」のコラボでしたが、最初に企画を聞いたときに、イメージできましたか。

村瀬:「ボール」っていう話を聞いたときに、真っ先に(アニメ第1シリーズのセリフの)〈ドッジボールだ、これ〉を思い出して、台本を見たら〈ゴールボールだ、これ〉といってて、「完全にオマージュ使ってる」みたいな。森脇監督らしい、原作『入間くん』のおもしろかったモチーフとか「ちょっと使えそうだな」みたいなのを、また“天丼”するギャグセンスのおもしろさもあって。『入間くん』自体がシリアスもコメディーも、ラブコメ風なこともやってる幅広い作品なので、スポーツを題材にしても、親和性はめちゃくちゃあるんじゃないかと思っていました。

今回のストーリーを演じてみて、ゴールボールの楽しさを村瀬さん自身どう感じましたか。

村瀬:ボールの中に鈴や音がなるものが入っていて、視覚が全部封じられた中で、それ以外の五感を駆使して戦うところに、ゲーム性やドキドキ感があると思いました。入間自身もゴールボールをするのは初めてで、最初まったくわからないっていう感じだったのが、ボールが来て空気がちょっと変わる感じとかボールの軌道がだんだんわかってきて、慣れてきたことで熱が入っていく感じは、スポーツ的なおもしろさなのかなと。すごく限られたリソースの中でやっていくことが、逆に「自分の別の感覚と触れ合うことになるスポーツなんだ。すごくおもしろいな」と感じましたね。

〈音を見る〉というセリフがありますが、その感覚のイメージわきますか。

村瀬:われわれ(声優)の仕事でも、台本を読んだときに「(相手の)こういうセリフはたぶんこういう感じでくるだろう」みたいな印象と(実際が)結構違うことがあって。やっぱり人間、同じもの見ていても一人一人感じ方が違うように、お芝居もそういう側面が強いので〈音を見る〉とか〈人の空気感を見る〉、あと「こういう感じでやる(演じる)んだ」みたいな〈エネルギーを見る〉とかも、職業的に日常的にやっていることだったので、〈音を見る〉ってすごく詩的な表現だけど、視覚が封じられた世界の中で、でも感じながら反応していく、みたいなのを表現する言葉としてピンときて、すごくいいセリフだなと思いました。

ゴールボールの選手が全員アイシェードするのは、ちょっと見える人もいれば全く見えない人もいるので、条件を合わせるためです。実際に見えない中で飛んでくるボールを止めているゴールボール選手についてどう感じますか。

村瀬:どうというか「すごすぎない?」って思って。僕は逆に目で見えていてもキャッチできないし、ドッジボールとかもボールを取れたことがほとんどなくて、大体ぶつかって終わりだったので、さらに視覚をアイシェードによっても制限されている中で(ボールを)捕らえるってどんな神経してるんだろう「すごすぎる」って。スポーツ選手はみんなそうですけど、日頃の練習も本当にストイックに打ち込んだり、いろんな感性を鍛えていて、自分が考えられないような努力のうえでやられてるから、ただただ尊敬というか「すごいな」と感じます。

ボールの速さも、時速60キロとか。

村瀬:僕は絶対に無理です。目で見えてても、「時速60キロのボール受けてください」っていわれたら「無理です」ってなっちゃいます。すごいですよね。(今回)参加する前に(ゴールボールを)動画で拝見したんですけど、すごく迫力があって、皆さん「本当に、これ見えてないのか?」って思う感じで、身体能力もそうですけど、チーム戦というのもあって、読み合いだったり「感じることが結構あるんだろうな」と思いましたね。

今回の作品で、見てくれた人にどんなメッセージが伝わったらいいなと思いますか。

村瀬:パラスポーツって、もちろんすごく詳しい方も多いと思うんですけど、意外とふだん、日常生活で密接に関わってくるかっていわれると、僕みたいに「パラスポーツは知ってたけど、ゴールボールは知らなかった」という方も多いと思うので、これをきっかけに「あっ、パラスポーツってアイシェードつけて、こういうふうにやったりするのもあるんだ」って興味をもって調べてみたり「じゃあ、ほかにどんなスポーツがあるんだろう」と見ていただいて、よりパラスポーツのすごさや、皆さんの輝いてる姿に触れていただけるんじゃないのかなと思ってすごくワクワクしているというか、期待しています。

『アニ×パラ』は多様性のある社会を目指しているプロジェクトですが、今後どのような社会になったらよりよいと考えますか。

村瀬:これまでパラリンピックやパラスポーツなど、名前は知っていたけど、具体的なイメージが自分の中で全然なくて。今回、お仕事いただいたときにゴールボールを調べて、スポーツ自体の熱さだったり、障害のある方がハンディキャップの中で「こんな激しいスポーツしてるんだ」って思わされたり、その姿が本当にかっこよくて、僕自身も元気や勇気をもらえるような力強さをすごくいただきました。それは、『アニ✕パラ』をきっかけにゴールボールについて知ったことで得た自分の中の体験というか。お互いに、お互いのできることやかっこいいところを知って、リスペクトできるようになると、もっともっと自分の知識も増えて、よりいろんなこと知りたくなるとなると思うんです。『アニ✕パラ』のように、お互いの「こういうことをやってますよ」とか「得意ですよ」を、共有したり知ることができる施策が増えたら、より共生社会としていい感じになるのではないかなとすごく思いました。

まずは「知る」というところなんですね。

村瀬:だと思いますね。なんとなく単語でしかわからないみたいなことって、僕自身は不勉強なので、日常的に結構多くて。そういうときに知らないままにしておくのか、それともちょっとしたきっかけがあって「ゴールボールって何だろう」って調べてみて、魅力や熱さを知って「あっ、かっこよかった」って思うのかだと、やっぱり思いも見識も全然違う。そういう「知る」ことの大事さが広まっていくといいなと思いました。

最後に、2024年のパリパラリンピックで、ゴールボールの日本代表選手が男女共に出場を決めています。東京パラリンピックでは、男子が5位入賞、女子は銅メダルという成績を収めています。選手への応援メッセージをお願いします。

村瀬:いろんなスポーツアニメの作品に関わらせていただくなかで、選手やスポーツをお仕事にしている方のすごさを聞く機会があって、素地とか才能だけじゃなくて、信じられないぐらいの努力や挫折、苦労を抱えている中で、(大会に)出るだけでもめちゃくちゃすごいと思うんです。(さらに)表彰されるっていうのは本当に誉れというか、とんでもないことだと思いますし、いろんな人の希望にもなっていて、めちゃくちゃ尊敬しています。あとは、僕は運動神経が全然ないので、そういう意味でもかっこいいなと思うし、ぜひ自分自身との闘いというか、結果もそうですけど、何よりも応援してる人たちが勇気をもらえると思うので、すごくいい意味で、期待を背負っていただいているというか。そのうえでぜひ、羽ばたいていってほしいなと思いますね。すごく応援してます。

ありがとうございました。