第14弾

パラスノーボード × 島本和彦

スノーボードクロス選手・岡本圭司さんインタビュー

“努力したからこその楽しさがある”

スノーボードクロスとの出会いはどのような形だったのですか。

岡本 はっきりとは覚えていないのですが、ポスターか何を見たのがきかっけだったと思います。自分の中でいろいろと模索している時期だったので、「こういう競技があるんだ…。1回大会に出てみようかな」と思って。もともとスノーボードはずっとやっていたので、優勝できる自信があったんですよね。でも実際にやってみたら、びっくりするくらいきれいに負けました。勝つ気満々だったので、すごく恥ずかしかったです(笑)。そのとき、たぶんケガをして2~3年たっていたと思うんですけど、「15年くらいスノーボードをやってきて、トップまで上り詰めた僕が何で全敗するんだ」くらいに思ってしまって、悔しくて本格的にスノーボードクロスを始めたという感じです。

もともとスノーボードをやっていらっしゃったということですが、ケガをされて以前のように滑れなくなったことへの“恐怖”を感じたりはしましたか。

岡本 そうですね。以前と比べたら「全くできない」といっても過言ではないぐらいなんです。目立つことが好きで、「世界ではやっている大技を日本で初めてやるんだ!」という心意気でやり続けていたんですけど、もう今はやれと言われてもできないです。頭の中でやり方のイメージはできるんですけどね…。なので後輩に教えるとき、昔は自分が滑って見せることができていましたが、今は言葉だけになってしまっています。教えるけどできないって、むなしいですね。
スノーボードが好きで、スノーボードの仕事しかできない自分だけど、教えるだけではどこか満たされなかったんです。それで、「やっぱりスノーボードは自分にとってのライフワークで、ずっと何かを追求し続けないとおもしろくない」と気がついて。今やっているスノーボードクロスは以前とはまた違う競技ではありますが、「もっとうまくなりたい」とか「突き詰めたい!」と思うことが自分にとって必要だと感じさせてくれたので、頑張っています。

具体的に“恐怖”や“むなしさ”を乗り越えるためにどのような行動をしているのですか。

岡本 それはもう、「とにかく繰り返すしかない」と思っています。そこに近道はないので、自分に負けないようにひたすら繰り返すことを楽しめるようになれたらいいなと。前までは嫌々練習をやっていることもあったんですけど、ケガをしたことで、当たり前にできることじゃない、本当は奇跡に近いことだったんだって気がついて、今はすごくありがたく感じます。

ケガを経験したあとも前を向いて頑張ることができているのには、やはり奥さまのサポートのおかげもあるのでしょうか。

岡本 奥さんには頭が上がらないです。奥さんは、「自分はやりたいことはない、あなたがやりたいことを横で応援できるのが一番楽しい」みたいなことを言ってくれてたんですよ。すごく合わせてもらっているのに、ケガをしてから奥さんに当たってしまったりとか、わがままを言ったりとかしてケンカもたくさんしてしまって…。「ケガをしたからサポートをしてもらって当然」ってどこかで思ってしまっていたような気もします。でもやっと最近、「当たり前じゃない」って気がついて、本当に心から感謝をしています。そういう大事なことに奥さんと一緒に接することができたのは、ケガのおかげだと今は思っています。

ケガをして、何もかも価値観が変わってしまったんですよ。ケガをする前の感謝が形だけだったというわけではありませんが、心の底から人に感謝をしたり、どう恩返しできるかっていうのをより考えるようになったといいますか。僕を支えてくれている人たちはもちろん、同じ障害者の人であったり、いろんな悩みを抱えている人たちに対して「一緒に答えを見つけることはできないかな」と思うようになりましたね。

岡本選手のインタビューをいくつか拝見したら、「“障害者だけど頑張ってる”と言われることが嫌だ」というお話をされていたのが印象的だったのですが、そのお気持ちを詳しく伺ってもいいでしょうか。

岡本 言葉で言うのは難しいんですけど、障害者だから特別な可能性があるっていうわけじゃないと思うんですよね。もちろんパラリンピック選手たちは健常者の方よりはできることが限られてくるから、そこに対する探究心や推進力がすごくて、「これを死ぬ気でやるんだ」っていう覚悟はあるけれども、結局は、障害者とか健常者とか関係なく、「頑張っている人はカッコイイ」ということだと僕は思っているんです。

頑張った先にある勝ち負けへのこだわりはどのくらい持っていますか。

岡本 正直に言って、そこまでないですね。もちろん勝ちたいですけど、何位だったかというよりは、「いかに最高の自分で試合に臨んで、やりきったと思えるか」というのを一番大事にしています。努力したからこその楽しさってあると思うんですよね。たとえ負けてしまったとしても、頑張っていれば「今日は自分の日じゃなかったんだな」って思えるし、いずれ必ず「今日は自分の日だったな」って思える日が来ると信じています。

岡本選手の中で、今後理想とする姿というものはありますか。

岡本 あります! 僕、体重が軽いんですよ。でも海外には普通に僕の倍くらい体が大きい選手がいたりして、テクニックの面では自分のほうが絶対に上だという自信はあるんですけど、最後の直線で出るスピードがやっぱり重いほうがすごくて。普通にサッと抜かれて、ゴールのところで「お前、早かったな」とか上から言われるんですよ。それがすごく悔しくて、体重を頑張って増やしています。今の僕としては、彼らの前に出て、コースをふさいで抜かれないように邪魔をするみたいな滑り方をするしかなくて。もちろんそういう駆け引きがスノーボードクロスのおもしろいところでもあったりするんですけど、理想はもっと、圧倒できるような、王者的な勝ち方をしたいんですよね。「最初から最後まで1位」みたいなことをやってみたいです。それで僕よりも体の大きい選手に「お前も悪くなかったよ」って言いたいです。

本日はありがとうございました。