第14弾

パラスノーボード × 島本和彦

真山敬 役・寺島拓篤さんインタビュー

“本気であることがカッコイイ”

寺島さんが演じた真山敬に対してどんな印象を持ちましたか?

寺島 架空のスーパーヒーローじゃなくて、等身大のヒーロー感がある人物だなと思いました。敬にはどこか軽さもあるのだけど、根底にはスノーボードに対する本気の思い、そして、自分を支えてくれる人たちへの熱い思いがあるんですよね。自分1人で立っているわけじゃないというところが、すごく人間らしいです。「アニ×パラ」では「あなたのヒーローは誰ですか」という問いかけがありますが、人間が努力して何かになろうとすることはカッコイイですね。

役作りで何か意識されたことはありますか。

寺島 島本和彦先生の画(え)に力があり、持っていらっしゃる作家性がすごくいい方向に作用していて5分のアニメの中ですごくメリハリが利いていたので、とっても役を作り込みやすかったです。ただ、最初は勝手に熱くつくってしまって(苦笑)。「前半はもうちょっと普通の青年らしく」というお芝居の演出を受けて、「ああ、そうか。ちょっと力抜いたほうがいいんだな。そうすることで逆に後半とのメリハリがつくんだな」と思い直し、そこをわかりやすくしました。妻のはるかとのやりとりもそうですが、感情の吐露の仕方がものすごく激しいので、アップダウンがわかりやすくなるように工夫して演じています。

妻のはるかとの掛け合いは一番激しかったですよね。

寺島 そうですね。僕も結構メンタルが弱いほうなので、敬の気持ちはわかるんですよね。すごく頑張っているのにダメな状況や、これ以上、何を頑張ったらいいのかわかんなくなる状況というのは、自分にも通じるものがあります。
でも、そんな挫折して諦めかけているときに叱咤(しった)激励してもらうと、やっぱり自分1人じゃ出てこない力が出てきますよね。僕も結婚しているので、もし同じような状況なってしまったときには、きっと妻がそうやって叱咤激励してくれるんじゃないかなと思います(笑)。周りに支えてくれる人がいることのすごさを感じたシーンでした。

今回のアニメのテーマの1つが「カッコよさ」なんですが、真山がこだわる「カッコよさ」について、どう感じましたか。

寺島 僕は“本気であることがカッコイイ”ということなのかなと思いました。もちろん表面的なカッコよさも大事だとは思うんですよ。特にスロープスタイルみたいに、トリックを決めるとか、点数になってくる競技をやっていると、当然、表面的なカッコよさがすごく大事になってきますし。でも今回、敬が見せたのは、人生におけるステージや自分の身体的な面のステージの変化を受け入れ、本気で生き方を変え、本気で競技に向き合うことで生まれるカッコよさだと思います。はるかに「それが敬の限界なの?」と言われたことで、さらに本気になることができて、それが結果としてカッコよさにつながったんじゃないですかね。意識的に気づいてるわけじゃないと思うんですけれども。

「アニ×パラ」はパラスポーツの普及や共生社会とかを目指していますが、どのような印象を持たれていますか。

寺島 とてもいい企画だと思います。東京パラリンピックのときに、いろんな障害のある方が1人のアスリートとしてオリンピックと同じように競技をされているのを拝見し、そのすごさに目を奪われました。車いすの競技でのチェアワークとか、本当にすごいですよね。

価値観とか認識の問題だと思うんですけど、ハンディキャップがあることがマイナスであるっていう先入観が、そもそも間違いなんだなと思います。ハンディキャップは、きっと誰しもが持っているもの。それは事故で負った障害かもしれないし、生まれた時からある障害かもしれないけど、例えばバスケットボールで考えたら、僕は身長が167センチしかないので背が低いことがハンディキャップになるんですよね。だから、そういうのは当たり前に“誰しもが持っているもの”という認識でいなきゃいけないのかなって。社会だけじゃなくて、ご本人や周りにいる僕たちが意識改革をして、ハンディキャップがある方々がいることが当たり前という時代にしていかなきゃいけないと思いました。ハンディキャップがある方々への意識というものが、自分の中で1歩前に進めた感じがします。

最後に、視聴者の皆さんへメッセージをお願いします。

寺島 見ている人の胸を熱くさせるような競技が、パラスポーツにもたくさんあります。僕が参加させていただいたのは「パラスノーボード編」ですが、選手たちにどんな思いがあるのか、どんな熱を持って競技に向かっているのか、そして、どんな努力をしているのか、この作品から皆さん伝わったらうれしいです。ぜひ楽しんでください。

本日はありがとうございました。