2016年01月29日 (金)発達障害という"個性"に理解を求めて


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 発達障害という言葉を聞く機会が多くなったと感じる方も多いと思いますが、今回は、私が番組を通じて出会った二人の若者を通して、発達障害への理解の大事さについて考えたいと思います。

■ 出会ったのは

 音楽を通じて発達障害について理解を広めようと活動している双子の兄弟、その名も「発達インズ(はったついんず)」。ノブさん、アキさんの兄弟です。二人とも広汎性発達障害と診断されています。アマチュアのミュージシャンとして、ギター1本でデュオを組んで自分たちの経験をユーモラスに歌っています。

■ その歌詞を紹介しましょう

 「広汎性発達ショータイム」(一部省略)

 レジのバイトしてるとき
 やたら僕に並ぶ人が居る
 後から知ったことだが
 いつもオツリが多めだった
 店に自腹切る

 “ 真面目・天然・大人しい ”
 職場の人によく言われる
 それを皮肉と気付かず
 真に受けしかもちょっと照れてる
 裏を読めないから
 拍車かかっちゃう

 バリアフリー、労働のバリアフリー
 バリアフリー、会話のバリアフリー
                     (ISRC:TCJPB1481105)

 この曲は、アキさんの実体験に題材をとったものだということです。
 アキさんは、もともと計算は得意な方だと言います。しかし、二つのことを同時にこなすのが苦手。バイト先で、忙しくなってくると混乱してしまい、つい釣り銭を間違えてしまう。差額は月に数千円にもなり、自腹で支払っていたという体験談に基づいています。お客さんは、オツリを多めにもらえるから、アキさんの方に好んで並んでいたというわけです。発達障害ではない人にも理解できて笑える、そして発達障害の人にも「あるある」と思ってもらえるような失敗談を選んで歌詞にしたのだということです。

■ 曲を作るきっかけは

 Eテレの番組 バリバラ のSHOW-1グランプリに出場したことでした。過去の思い出したくもないような失敗ではあるけれど、それを笑いに転化することで自分たちにとって意味のあるものにできるのではないかという思いもあって、書き下ろしたということです。
 その後、私が出演している大阪の番組 学校再発見バラエティー あほやねん すきやねん  でも、この曲を披露してくれました。
 そもそも人前に出るとあがってしまうという二人にとって、ステージに立つとはどういうことなのか。相当なストレスではないかと想像したのですが、ミュージシャンにあこがれていたので、当然のことだと案外気負いはありません。高校生時代からギターを練習してきたアキさんは、「いつか認められる時が来る」と音楽で自分を表現し続けてきたのだということです。
番組は、ナマ放送、しかも、客席には大勢の若者がいて、その目が二人を見つめています。演奏に続いて、出演者とのかけ合いが続きました。ほどよい緊張感の中、歌詞の独特のユーモアが聞く人の心に伝わり、はにかみながら話す二人の言葉にスタジオにはあたたかい空気が流れました。

■ 現在は、活動休止中

 しかし、二人は、去年4月の世界自閉症啓発デーのイベント以来、ステージには立たず、活動を休止しています。アキさんは、その理由を「音楽で発達障害について理解を広められたらとも思っていたのですが、発達障害は障害の内容や程度は人それぞれなので、一人の発達障害者がそれを語るには範囲が広すぎると思いました。それに不特定多数の人に向けて自分の体験を一般化というか普遍化して語ることの難しさを思い知ったというのもあります」と述べています。音楽に人生を傾け過ぎてきたことでおろそかにしてきた日常生活をまずは立て直し、そして自分たちを見つめ直そうと考えたと言います。ノブさんは作業所に通いながら、アキさんは専門外来に通いながら、しばらくは日常生活の中で音楽を楽しみながら、いつかまたステージに立てる日が来ることをめざしています。

■ 二人の音楽活動が受け入れられるには

 まだまだ社会の側の理解は十分ではないように思います。空気が読めないことが、ありふれた日常の中の一つの個性なんだと、だれしも受け入れられる社会になるまでには道は遠いのかもしれません。しかし、二人がこうして種をまいてくれたことは、いつかきっと花開いてくれると信じています。二人が訴えかけた「心のバリアフリー」が実現する日がやってくることを期待したいと思います。

■ 学校教育では

 文部科学省が、4年前(2012年)に行った調査では、通常のクラスに通う子の6.5%が発達障害の可能性があり、特別な支援が必要なことが明らかになっています。ことしの4月には「障害者差別解消法」が施行されることになっていて、国公立学校では、差別を生まないための「合理的配慮」が法的に義務づけられます。たとえば、読み書きが苦手でノートをとれない子のために、あらかじめプリントを用意したり、黒板の撮影や先生の発言の録音ができるようにしたりする配慮が必要です。こうして、社会的バリアーをなくしていくことが急務になっています。

hayakawa.jpg  早川信夫(はやかわのぶお) 

1953年福島県生まれ。教育・文化担当の解説委員。

臨時教育審議会以来、20数年にわたり教育一筋に取材を担当。解説番組 時論公論 や おはよう日本「ここに注目!」、「暮らし◇(きらり)解説」などの番組で、教育問題のエキスパートとして活躍中。関西地方向けの番組 学校再発見バラエティーあほやねん すきやねん にも出演、“のぶにぃ”の愛称で若者に人気上昇中。

 

 

投稿者:解説委員 | 投稿時間:13:30

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