2014年12月08日 (月)課題解決型の授業へ 議論始まる


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 学校の授業内容を10年ごとに見直すための議論が、中央教育審議会で10月20日から始まりました。今回は、その内容と課題について取り上げます。

■ この見直しは

 学校の授業内容を規定している「学習指導要領」が時代の要請にあっているかどうかを点検し、新たな課題を提起するために、ほぼ10年ごとのサイクルで行われている、いわば定期点検にあたるものです。小学校では3年前から、中学校ではおととしから、高校では去年から、それぞれ新しい学習指導要領に基づいて授業内容が変わったばかりですので、もう見直しの議論かと思われるかもしれません。しかし、これからの検討に2年、その後教科書検定に4年の時間がかかるため、今から議論しても、次に新しい授業内容に切り替わるのは早くても6年後になるために今から準備が必要なのです。

■ 今回の見直しの柱は

 小学校では、「外国語活動の時間」を今の5年生から3年生に前倒しし、必修教科としての英語を5年生から新たにスタートさせること。中学校では、英語の授業は英語で行うことにすること。高校では、日本史を必修にするなど地理歴史科の内容を見直すこと。また、国が国民投票の投票権年齢を18歳以上とする検討を行っていることを踏まえ、「国家及び社会の形成者」として必要な教養と行動規範を学ぶ、例えば「公共」といった新しい科目をつくる検討をすることなどがあげられています。こうした授業内容の見直しと同時に、学習指導や評価のあり方も一体的に見直すとしていて、とりわけ「アクティブ・ラーニング」という指導方法を取り入れる検討を進めることになったのが、今回の大きな特徴です。

■ アクティブ・ラーニングとは

 「能動的学習」とか「課題解決型学習」と呼ばれています。欧米の大学では広く行われている授業スタイルですが、日本の大学でも、ここ数年急速に広がりを見せています。それを小中学校や高校でも取り入れることを検討しようというのです。先生が課題を与えて生徒が議論をしながら解決していく、学び合いの授業スタイルと言えます。あるテーマについて事前に調べて、発表をして、意見交換をする。そして、解決に至る。大学のゼミを思い浮かべるとイメージしやすいかもしれません。

■ どうしてアクティブ・ラーニングの導入を

 そうした必要性が考えられたのは、日本の子どもたちは知識はよく身につけているけれど、その知識を活用したりする力が弱い、社会に出たあと学校で学んだ知識が生かされていないという批判を受けてのことです。グローバル化の時代、しかも生産年齢人口が急速に減少していく中にあって、知識偏重で頭でっかちの子どもたちばかりを育てても、このままでは世界に太刀打ちできないと考えられたからなのです。国際社会でもキチンと発言でき、交渉力を持った人材を育てたい、そんな思惑があります。しかし、欧米で広く行われているとは言っても、日本では、アクティブ・ラーニングという言葉自体まだなじみがないだけでなく、大学以外の教育現場で取り組まれている例はほとんどありません。独自に似た取り組みは行われていますが、教育方法としてまだ確立したとは言えません。その意味ではいかにも付け焼刃といった感がぬぐえません。

■ それだけに、指導方法の転換は

 そう簡単なことではありません。課題を3つあげたいと思います。
 1つめは、国が先生の指導方法までいちいち口出しするのか。学習指導要領は授業内容の大綱的な基準を示すもので、従来、指導方法までは書き込まれていませんでした。そこまで踏み込んでしまうと現場を「右向け右」「左向け左」にしてしまいかねませんので、これまでは言語活動の重視とか体験の重視という言い方にとどめてきました。現場の先生の創意をそがないようにするにはどのような示し方ができるのか。示し方の議論が必要です。
 2つめは、大学での手法が小中学校や高校で通用するのか。アクティブ・ラーニングは、正解の見つけにくい課題について議論するのには向いていますが、正解がある場合は議論しているように見えて答えを導く誘導型の授業になってしまいかねません。各教科のどの分野に適しているのか、また、どの学年から取り入れることがふさわしいのかを見極める必要があります。
 3つめは、そもそも現場の先生は対応できるのか。日本の先生は知識伝達型の授業にはたけていますが、課題解決型の授業には慣れていません。すでに行われている言語活動についても、先生の気に入る型にはまった発言をよしとする傾向が見られるという指摘も出ています。急にアクティブ・ラーニングを取り入れよと言われても指導しきれるかどうか疑問です。

■ この先の議論は

 2年先に結論を出すことをめざして進められます。このほかにも、こうした授業を取り入れた時にこどもたちの成績をどうつけることになるのかなど課題は山積しています。まさに正解を見つけにくい課題について議論を進めるわけで、こどもたちにお手本を示せるような課題解決型の大人の議論ができるのか、まさにそこが問われます。

hayakawa.jpg 早川信夫(はやかわのぶお) 

1953年福島県生まれ。教育・文化担当の解説委員。
臨時教育審議会以来、20数年にわたり教育一筋に取材を担当。解説番組「時論公論」や おはよう日本「ここに注目!」、「暮らし◇(きらり)解説」などの番組で、教育問題のエキスパートとして活躍中。関西地方向けの番組 週末応援ナビ☆あほやねん!すきやねん! にも出演、“のぶにぃ”の愛称で若者に人気上昇中。

 

 

投稿者:解説委員 | 投稿時間:11:00

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コメント

アクティブラーニングについて関心をもつ教員は多くいます。しかし、具体的な指導が見えていません。課題解決学習や問題解決学習を指すとすると、すでに多くの学校で取り組んでいます。ユネスコスクールでESDに取り組んでいる学校の多くは、児童生徒主体の学びを総合的な学習の時間を柱とした教科横断型の学習として指導しています。私の学校でも、多摩川や地域の調査活動、WEB会議による交流など、多様なテーマに児童が取り組んでいます。児童が課題を捉えて、活動計画を作り、調査活動を行い、まとめて発信します。大変意欲的に取り組む姿からは、アクティブラーニングの先取りを感じます。

投稿日時:2015年04月09日 12:09 | 匿名

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