2014年02月21日 (金)「特別の教科 道徳」 創設の論点


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 政府の教育再生実行会議の提言を受けて教科に格上げされることになった道徳を、具体的にどういった内容にするか議論が始まりました。

■ 道徳の教科化は

 大津市の中学生がいじめを受けていたのを苦に自殺したことから、いじめの未然防止策の一つとして教育再生実行会議が提言したものです。この提言を受けて、議論を重ねてきた文部科学省の専門家会議(道徳教育の充実に関する懇談会)は、昨年(2013年)12月に、子どもたちがこれからの時代を生き抜くためには道徳教育の充実が必要だとして、道徳を「特別の教科 道徳」(仮称)に格上げして、検定教科書を使って授業をすべきだとする報告をまとめました。また、報告では、教科にはするものの、子どもたちの成績についての評価は、国語や算数・数学などのように54321の数値にはせず、文章で記述するとしました。このように「特別の教科」とすることになりましたが、どのような中身にするのがふさわしいのかについては、議論が残されました。

■ 実施に向けて

 具体的にどういった内容にすべきなのか、下村文部科学大臣は2月17日、中央教育審議会(中教審)に審議を求めました。大きな論点は、二つです。一つは、教科としての道徳を学校教育の中にどう位置づけるのか。もう一つは、具体的な授業の中身や指導方法をどうするのか。今年の秋をメドに議論をまとめるよう求め、来年春の新学期からの実施に間に合わせる方針です。これよりひと足早く、文部科学省は、文部科学省版の教材「わたしたちの道徳」を完成させ、4月の新学期から全国の学校に配布することになりました(写真)。来年の本格実施の際に教科書として使えるようにとのねらいがあります。

■ 第一の論点は

 学校教育の中に道徳をどう位置づけるのか。どう位置づけようが同じではないか、と思われるかもしれませんが、意外に一筋縄ではいかない問題です。小学校を例にとりますと現在の学校教育法施行規則には次のように書かれています。「小学校の教育課程は、国語、社会、算数、理科、生活、音楽、図画工作、家庭及び体育の各教科、道徳、外国語活動、総合的な学習の時間並びに特別活動によって編成するものとする」。道徳は、国語や算数などの教科とは別に特別活動などと並ぶ時間として位置づけられています。これを「特別の教科」であるとして各教科の前に持ってくるのか、別枠の教科として、各教科と並べて記述するのかで、その意味合いが変わってきます。各教科の上位に位置づけるのかどうかが焦点です。この点に関しては17日の審議で、一部の委員から「各教科の上位に位置づけるとなると戦前の修身の復活ととられる心配がある」と懸念の声が上がっていました。

■ 第二の論点は

 具体的な授業の内容と指導方法をどうするのか。「特別の教科」と位置づける以上、これまでの道徳の時間とどう違うのか、明確にすることが求められます。また、議論の発端となったいじめの未然防止に有効な内容となるのかどうか、その点を具体的に説明する必要があります。これまでの道徳教育に対しては、座学中心で子どもにとって魅力に乏しいという指摘があります。たしかに、小学校の先生の3人に1人、中学校は4割近くが文科省の調査に「効果的な指導方法がわからない」と答えています。
 そのため、先に行われた専門家会議では、▽子どもたちに役割を割り振って行うロールプレイ ▽会話を通じて相手がどんなことを思っているのかを考えさせるコミュニケーション活動 など体験活動を取り入れることが検討されましたが、道徳教育に熱心に取り組んできた専門家の間から「それだけでは特活と変わらず、善悪の判断といった道徳的な価値を理解させることは難しい」といった声が上がり、トーンダウンしたいきさつがあります。では、いったいどうすればよいのか。新しい教科としてスタートさせるわけですから、より具体的な方策を示す必要があります。

■ 教科書はどうなる?

 中教審での議論がまとまり、新しい教科としての道徳の中身が固まらないことには、検定教科書づくりが進みません。そこで、当面は文部科学省が作った「わたしたちの道徳」が教科書として使われます。「わたしたちの道徳」は、これまで道徳の授業で使われてきた「心のノート」を改訂して、小学校の低学年、中学年、高学年と中学校用の4種類作られました。書き込み式になっていた「心のノート」に比べ読み物の分量が増え、1.5倍のページ数になっています。
 内容は、 ▽いじめ問題を題材にした読み物  ▽坂本龍馬や野口英世などの偉人伝  ▽イチロー選手や高橋尚子さんなどスポーツ選手のエピソード などが盛り込まれています。また、インターネットの急速な普及に合わせて情報モラルについても取り上げられています。
 いずれにしても、国が子どもたちに一定の価値観を押しつけてよいのかといった議論も根強くありますので、そうした道徳教育への不信感を払しょくできるのかどうか、改めて教科化の是非も含めて議論を尽くしてほしいと思います。

hayakawa.jpg  早川信夫(はやかわのぶお) 1953年福島県生まれ

教育・文化担当の解説委員。臨時教育審議会以来、20年にわたり教育一筋に取材を担当。解説番組「時論公論」やおはよう日本「おはようコラム」、スタジオパークからこんにちは「暮らしの中のニュース解説」などの番組で、教育問題のエキスパートとして活躍中。

 

投稿者:解説委員 | 投稿時間:10:40

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コメント

私は今、学校いじめとネットいじめを受けています。
○校受験ナビという掲示板に私のフルネームを入れられたり、悪口を書き込まれたり、あることを信じてくれなかったり、私が言っていることは全部うそと思わせたりなどされました。このままじゃ高校入学の時に困ります。私はだいたい年長からいじめを受けていて、物のいたずらや陰口、菌扱い、他人差別、集団無視、からかいなどをやられています。
私は芸能界のオーディションを受ける予定ですが、もし芸能界に入った場合、学校で嫌な目に遭いそうです。
また、コメントしますので、よろしくお願いします。

投稿日時:2014年03月10日 13:55 | 

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