NHK札幌放送局

ほっとニュース通信(28)【瀬田宙大】

瀬田 宙大

2018年11月8日(木)午後1時02分 更新

この仕事をはじめて13年目。 新人時代の憧れの先輩のひとりである矢野香さんにインタビューをする機会を頂きました。 矢野さんは元NHKのキャスターで、私が放送人としてスタートを切ったNHK長崎放送局時代の先輩です。今はNHKを離れ、長崎大学の准教授として人間科学に基づくコミュニケーション術を研究されています。 

キャスターとしての矢野さんを振り返って一番印象に残っているのは徹底した視聴者目線。常に視聴者の皆さんが何を欲しているか、どうすればより確実に情報が届くのかを強く意識して放送に臨む方だなと思っていました。当たり前といえば当たり前ですが、それが周囲とはちょっと違ったんです。

例えば、朝のニュース。
挨拶に続きその日の天気の特徴や季節感を織り交ぜたキャッチコメントを挟んだ上でニュースに入る。朝、慌ただしく準備をしている人にも、番組の冒頭に情報をコンパクトに伝えようとする心配り。そして、同じ時間軸で生活している生活者としての共感がありました。
私はただただ感心するばかりで、到底真似をするスキルも余裕もありませんでした。そんな私の当時の悩み、どうすればきちんと視聴者に届くアナウンスメントになるのかという問いへの矢野さんの答えが礎となっています。

年月が経ち、先輩後輩から研究者とインタビュアーへ。まさかこんな日が来るとは当時は思いもしませんでした。この13年を振り返り当時の疑問から、その後自分なりに試行錯誤した結果を、まるで答え合わせをするような不思議な時間でした。

せたちゅーという愛称や根っこのキャラクターは変わりませんが、少しは成長した姿をお見せできたでしょうか?

放送を見逃した!!という方のために、ほっとニュース北海道でお伝えしたポイントをまとめました。皆さんもこれを参考に日々、周囲の人を巻き込んだ「実験」をして反応をみるということを繰り返すと、なりたい自分、あるいは本当の自分を見つけることができるかもしれません。それでは、また。

① そもそも好感が持てるコミュニケーションを学問にするとはどういうことなのか?
他者にどのような自分を表現してどのようなコミュニケーションをとっていくのか。
それを科学的に解明していくということ。
例えば漫画のドラえもんのジャイアンは威張っていて、怒っているからジャイアン。優しいジャイアンはジャイアンじゃないので好印象ではない。つまり、好印象はその人らしさが伴うもの。毎回ちゃんと良さを伝えて、相手の良さもわかってという「安定した再現性」が欲しいもの。そのために実験的に何回も試して記録を取り、統計に基づき分析するということ。

② 相手に「好印象を持ってもらう」ためのポイントは?
まずはいわゆる好印象(優しいやいい人など)のイメージをぬぐい、狙わない。
そのうえで3つのV、Verbal(言語、どんな言葉を使って表現するのか)、Visual(見た目、表情、服装など)、Vocal(声の高低などどんな声を出していくのか)を意識して、「やっぱり」という自分を他者に伝えることが大事になる。

③ 「やっぱり頼りになるね」という印象を目指すなら?
Vervalは一文がすごく短い。50~35文字以下。「感動した」など一言で語るなど。もう一つは言い切る。頑張ります。できます。考えます。思いますは「思うだけ」でアクションにつながらない印象を受けるので避ける。加えて「私は」など主語を入れるのも効果的。
Visualはコミュニケーションをとって会話をする場合は基本は顔を見て話すもの。故にのどぼとけより上がメイン。男性であればネクタイの結び目よりも上。そこに頼りになるものを入れる。服装以上に気を付ける。ポイントは直線的。ネクタイであればドットなどの曲線が多いものよりはストライプのほうがおすすめ。眼鏡も丸よりも四角。女性のアクセサリーも直線的なものを感じるもののほうがいい。色はダークカラーなどがおすすめ。
Vocalは低くて遅い。1分あたり300文字くらい。私の研究ではNHKのアナウンサーは1分あたり300~350文字で話す。ニュースの時の読み方が好例。そうすると頼りになるという印象につながる。

ちなみに、就職活動などで「やっぱり行動力があるね」と思ってもらうためには、過去の実績だけではなく未来を語り、表情豊かに話すことを心がけ、音の高低を上手に使う。例えば実績に対して未来の話を高い声で伝えることが効果的とも話していました。

④ 効果は理解できたけど意外と大変。日常生活でどこまで必要なの?
いつもいつもは大変。いざという時にスイッチをオンにする使い方。これらを意識すれば自信をもって堂々とわかりやすく話すことができるようになる。漠然と自信を持つのは難しいが、「私はこの視点でこれだけ準備をした」という事実があれば、その点には自信が持てる。自分の偏差値には自信を持てなくても、受験のためにこれだけ勉強したという事実には自信を持つことができるのと同じ。加えて、自分が自分を生き切っているという充実感が生まれる。その結果コミュニケーションが楽しくなる。自分を他者に理解してもらって他を理解してというような人間関係がスムーズになる。

(2018年11月8日)

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