NHK札幌放送局

命をつなぐアイヌの人々 抗いの歴史~シリーズ北海道150年 第2集「アイヌモシㇼに生きる」 #アイヌ

北海道スペシャル

2018年10月15日(月)午後4時30分 更新

明治2年、北の大地が「北海道」と名付けられ開拓が始まると、アイヌ民族は過酷な同化政策にさらされました。それから150年。同化政策や差別に直面しながらも苦難を乗り越え、アイヌの人々はどう命をつないできたのか。闘いの歴史を見つめます。

伝統文化の復活へ、博物館の闘い

アイヌ民族への過酷な同化政策に明治の頃から抗ってきたのが、今も旭川に住む川村さん一家です。

川村家が同化と闘うために作ったのが、今年で開館から102年になる川村カ子トアイヌ記念館です。アイヌ伝統の品々が展示されており、川村兼一さんは三代目の館長です。

過酷な同化政策。中でも明治32年に施行された北海道旧土人保護法は決定的な打撃となりました。法律で同化が強制され、アイヌは伝統文化を根こそぎ奪われたのです。

大正5年、最初に博物館の看板をあげたのは兼一さんの祖父、イタキシロマさんです。昭和になっても同化の勢いがとまらない中、兼一さんの父・カネトさんは、二代目となった昭和30年代、同化政策で実質的に禁じられていた古式舞踊や歌を「観光用の芸能」として見せるという策に乗り出します。アイヌの芸能は日本中に知られることになりました。

さらにカネトさんは、当時の常識を覆す催しを企画します。昭和39年8月、カネトさんを中心に総勢300人が集まり、当時禁止されていた熊送りの儀式イヨマンテをはじめ、失われかけていたアイヌの祭礼を堂々と実施します。アイヌの文化や誇りを改めて世に知らしめたのです。

しかし過酷な差別はその後も長く残り続けます。あるときなど、日本人の子どもが車にひかれ、アイヌの子どもが救急車に同乗し輸血をしたところ、それを知った親が「うちの息子にアイヌの血が入った」と大騒ぎしたと兼一さんは強い感情をにじませながら語りました。

そして平成9年5月8日、悲願であった旧土人保護法の廃止がついに決まりました。それまで実に98年間もの間「旧土人」と呼ばれてきたアイヌ。これを機に法律上伝統文化や風習を禁じられることはなくなったものの、一度失われかけた文化を取り戻すことは容易ではありません。

差別や同化に立ち向かって

3年前に複数のがんを手術して以来、闘病が続いているという兼一さんは、体調の悪い中、アイヌの祈りに欠かせない大切な柳の木を手に入れるために、河原の雑木林へ入りました。この木を使ってイナウを作ります。

息子の晴道さん(18)がイナウ作りを手伝うのは今日が初めて。兼一さんはがんの闘病をしながらも息子に後を継いでほしいと言ったことはありません。この日、兼一さんはイナウの作り方を教えることにしました。

育ってきたこの場所が好きだ、と語った晴道さん。両親の頑張る姿を見てきた晴道さんの中にも、アイヌ民族の歴史は受け継がれていました。ここをなくさないために自分も頑張りたい。晴道さんは古式舞踊の練習も始めました。

美しく削れば削るほど神様に願いが届くとされるイナウ。親子で作る初めてのイナウは、この地の先祖を弔うためのものでした。

その先祖は、北海道大学にあるアイヌの納骨堂に安置されていました。明治から昭和40年ごろまで、人類学の研究のために各地から収集されたアイヌの遺骨およそ1,000体の中に、兼一さんの地元から70年ほど前に持ち出された骨が複数あったのです。

骨を実際に掘り起こした学者の手記によれば、留守を狙って墓地を掘り起こすなど盗掘さながらの行為もあったと言います。

去年7月旭川のアイヌを代表して兼一さんは裁判を起こしました。相手は遺骨の返還に応じない北大です。裁判は和解で決着し、遺骨は旭川の墓地に返還されることになりました。

今回新たに返還されたのは3体の遺骨とその副葬品です。まず遺骨の確認作業が行われたものの、研究で重要とされた頭蓋骨以外の骨はほとんど見当たらない上、身元も分からなくなっていました。

北大を代表して長谷川晃副学長が来ていました。謝罪を求める兼一さんに対し、副学長は北海道大学からの言葉を読み上げます。それは、アイヌ民族の苦労に思いをいたすとともに、アイヌ民族の尊厳に配慮し、これからも誠意を持ってご遺骨・副葬品の引き渡しに努めていくといった趣旨のものでした。

一度埋葬した骨が持ち去られ、再び埋葬しなければならないという現実。ここで、同席していた北海道大学・丹菊逸治准教授から声が上がりました。

丹菊「一緒に謝りましょうよ、何で、謝罪できないんですか。こんな風に人間が扱われていいはずがない。我々が掘り起こしたんじゃなくても、北大で、北大で働いているのであれば、我々にも責任があると思います。これは、本当に私も申し訳ない」

大学からの正式な謝罪は、ありませんでした。

その後、旭川では半世紀ぶりにアイヌの伝統にのっとった埋葬が行われました。遺骨をふるさとの土に返します。北の大地が「北海道」と名付けられて150年。差別や同化に立ち向かってきた川村家の闘いはまだ終わっていません。

2018年7月27日放送
北海道スペシャル
シリーズ北海道150年 第2集「アイヌモシㇼに生きる」より

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