NHK札幌放送局

日本で見つかった “パーフェクト恐竜” むかわ竜~これが恐竜王国ニッポンだ!

NHK北海道

2018年9月28日(金)午後7時09分 更新

長い間、日本は見つかる化石が少なく、恐竜の空白地帯と考えられてきました。しかし、研究者や化石の愛好家たちが精力的に発掘に挑んでいる近年、日本でも恐竜たちの化石が続々と見つかっています。今や、新たな恐竜王国として世界的にも注目されつつある日本。
今回は北海道で見つかった新しい恐竜「むかわ竜」発見のドラマをご紹介します。

なぜ、“パーフェクト”?

今回クローズアップする恐竜は「むかわ竜」。

主役にしては、ちょっと特徴がないというか、地味でしょうか・・・
いえいえ、実はこの恐竜、すごいのです。なぜなら、日本一の “パーフェクト恐竜” だから!

パーフェクト” とは、いったいどういうことなのでしょうか?

むかわ竜発見の現場は、北海道の中央部に位置するむかわ町。

2018年4月、これまで掘り出されたむかわ竜の化石をすべて並べ、生きていたころの姿を復元しようと、化石の発見にかかわった人々が地元の体育館に集まりました。

この日集められた化石は実に200点にも上ります。まるでジグソーパズルのように、骨の形から位置を推定し、並べられていきます。

作業が進むにつれ、だんだん巨大な生きものの姿が浮かび上がってきました。
そう、むかわ竜は日本初となる大型恐竜の全身骨格化石。日本一の “パーフェクト恐竜” なのです。

恐竜時代、この化石となった恐竜がまさに、日本の大地を闊歩していたのです。

【動画】むかわ竜CG(49秒)

「北海道で巨大恐竜の全身骨格発見!」

むかわ竜が公開されると、そのニュースは瞬く間に世界を駆け巡りました。しかしなぜ、全身骨格発見がそれほどすごいことなのでしょうか。

兵庫で見つかった「丹波竜」の研究で知られる三枝春生さんが、そのすごさを教えてくれました。

三枝さんがおよそ10年前に発掘した丹波竜。かつてないほど多くの化石が見つかり話題となりました。
しかし、それでも実際に発見されたのは全身の骨の3割以下。残りの7割の骨格は、海外の標本を参考に復元されたのです。

「3割以下って少ないように思うけど、国内的に見れば、これでもすごくよい方です。なかなかそんな全身がそろうことはないです。」(三枝さん)

事実、日本からも恐竜の化石はいくつも見つかっていますが、その殆どが全身のごく一部だけなのです。

「むかわ竜はほぼ完全であるということで、すごい発見です。おそらく、そういうすごい化石が出てきたことで、日本産の恐竜化石を使った研究がひとつ上のレベルというんですかね、そういう研究が可能になってきていると思います。」(三枝さん)

これが、日本一のパーフェクト恐竜、むかわ竜の全身骨格化石です。

4m近い尻尾、太くて頑丈な後ろ足、前足は指先までそろっています。頭も大部分が残っていました。尻尾から頭まで、その全長は10m近くにもなります。

復元作業の陣頭指揮を執る北海道大学の小林快次さんも、見つかったすべての化石を並べてみるのは、この日が初めてです。

「これだけそろっているのは日本で初めてですし、日本で最高の全身骨格。しかも大きいですよね。こんなのは日本に1個しかない、すごい標本だと思います」(小林さん)

首長竜と間違われた「世紀の大発見」

この世紀の大発見。実はある4人が、10年以上にもわたって繰り広げたリレーの結果、奇跡的にもたらされたものでした。

最初の登場人物は、堀田良幸さん。地元ではちょっと有名な化石の愛好家です。もう1人は櫻井和彦さん。地元、穂別博物館の館長です。
この二人こそが、むかわ竜の化石を最初に見つけた人物です。

2003年の春、山道の散歩をしていた堀田さんは、崖の上に化石らしきものを見つけました。

「ちょっと変わってる骨だし、博物館の櫻井さんにやるかなーと思ってね。」(堀田さん)

当時、博物館の学芸員だった櫻井さんは、堀田さんから連絡を受け、すぐ現場に駆けつけたといいます。辺りをよく探すと、同じように化石を含んだ岩がいくつも見つかりました。

むかわ町で初めて発見された恐竜化石。本来なら大発見となるはずでした。しかし、櫻井さんは博物館に持ち帰った化石を、なんと倉庫にしまい込んでしまったのです。

「堀田さんからいただいた化石を、僕としては首長竜の化石だと思いました。たくさん標本がありましたし、そのまま収蔵庫にしまってしまいました。」(櫻井さん)

恐竜とは「陸で生きるは虫類の一種」のこと。首長竜と呼ばれる海の大型は虫類は、恐竜とは別の生きものとされています。

実は、むかわ町から見つかる化石は首長竜のような海の動物の化石ばかりで、それまで恐竜が見つかったことはなかったのです。

恐竜時代の日本は、一部はアジア大陸の端っこ、残りは海の底。むかわ町も大陸沿岸の海の底で、陸地から少なくとも10キロ離れた場所でした。

首長竜の化石と間違われ、倉庫にしまい込まれた恐竜の化石は、結局そのまま7年も放置されることになったのです。

ついに日の目を見たむかわ竜

そんな状況を打開したのが、首長竜の専門家である東京学芸大学の佐藤たまきさん。日々、全国の博物館を訪ね、倉庫の中を覗いています。

「眠っているお宝がないかどうかを探しています。昔、取った人が集めているコレクションの中にも、その時には価値が分からなかった標本が眠っていたりしますので。」(佐藤さん)

恐竜に比べると人気のない首長竜の化石は、倉庫に埋もれたままになっている可能性が高い。そこで佐藤さんは、折を見ては日本各地の博物館を回っていたのです。

そんな佐藤さんがむかわ町を訪れたのは2010年。対応した櫻井さんが、佐藤さんのために用意しておいた化石の中に “あの化石” が混じっていました。

「最初見た時はですね、これはてっきり珍しい種類の首長竜だと思ったんですね。だからもう本当に宝を見つけたなという気分でいました。」(佐藤さん)

ところが化石の骨の周りを削ってみると、首長竜にはないはずの特徴が現れたのです。

それは脊椎につく血道弓という骨の形。首長竜であれば離れているはずの骨がくっついていたのです。これは陸に生きる恐竜が備えている特徴でした。

「恐竜が見つかるのは、ものすごくニュースというのはもちろんよく分かってましたから、標本を見つけることができたのはすごくうれしかったです。」(佐藤さん)

櫻井さんが急いで残りの岩からも化石を取り出してみると、長さ1メートルほどの恐竜の尻尾が現れたのです。
そこで櫻井さんは、恐竜の専門家・北海道大学の小林快次さんに鑑定を依頼しました。小林さんは、送られてきた画像をすぐにチェック。その瞬間、目を奪われたといいます。

「一目で恐竜だと分かったので、これだけ保存がいいということは・・・と思って、本物を見に行かなきゃということで、すぐに『明日伺っていいですか?』とメールを送った記憶がありますね。」(小林さん)

むかわ町に駆けつけた小林さん、間違いなく恐竜の尻尾であると断定。すぐに「もう一度現場に行こう」と主張しました。

そして2012年5月、小林さんたちが現場を調査した結果、まだ尻尾の続きが残っていることが確認できたのです。

きっと全身がここに眠っているに違いない。小林さんたちの説得で、むかわ町は6000万円もの予算を投じ、本格的な発掘を始めました。

まもなく、予想通り体の化石が続々と現れました。見つかった化石はとにかく膨大。発掘作業は2年にもわたりました。

その結果、見事に全身の骨が掘り出されたのです。

かつて、恐竜の空白地帯といわれていた日本。しかし今、むかわ竜以外にも、兵庫や熊本、鹿児島など日本各地で恐竜の化石が次々と見つかっています。

太古の日本で繰り広げられていた恐竜たちの世界。これからも、多くの人々の思いによって、恐竜王国ニッポンの全貌がより鮮明になっていくに違いありません。

2018年8月29日放送
これが恐竜王国ニッポンだ!より


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