NHK札幌放送局

WEBニュース特集 偽造在留カード 闇ビジネスの実態に迫る

北海道WEBニュース特集

2019年2月21日(木)午前10時30分 更新

人手不足の現場に今やなくてはならない存在となっている外国人。しかし、その裏で在留資格を証明するカード、「在留カード」の偽造が横行していることがNHKの取材でわかってきました。

【不法残留容疑で中国人逮捕】

去年12月、道南の知内町にある建設現場に派遣されるなどしていた中国人11人が不法残留の疑いで逮捕された事件では、このうち3人が偽造在留カードを所持。「就労制限なし」と偽って不法に働いていました。偽造在留カードはどのようにして入手したのか?調べてみると、知られざる「偽造ビジネス」の実態が浮かび上がってきました。

【“在留カード”の正体は】

知内町に派遣されるなどしていた中国人11人が逮捕された事件。元請け業者には、全員分の在留カードのコピーが提出されていました。私たちは今回、そのコピーの画像を関係者から入手しました。
在留カードは氏名や住所、国籍などの情報に加え、在留資格や在留期間、それに就労制限の有無が記載された写真付きの証明書です。コピーの画像は一見すると不自然な点は見当たりませんが、そこに書かれていたのは「永住者」や「定住者」、そして「就労制限なし」の文字。
逮捕された11人は短期滞在ビザなどで入国し、日本で働く資格はありませんでした。在留カードのコピーは、いずれも偽造されたものだったのです。
同じ建設現場ではあわせて58人の中国人が働いていましたが、その大半は失踪し、行方がわからなくなりました。現場から消えた彼らもみな、偽造在留カードを使っていたのか。私たちは、入手したコピーの情報をもとに取材を始めました。

【「202号室」はどこに?】

向かった先は、外国人が人口のおよそ5分の1を占める群馬県大泉町です。中国人の在留カードに書かれた住所の1つがここにありました。本当に中国人が住んでいたのか、その住所にある建物を訪ねてみました。

カードにある部屋番号は「202号室」。アパートなどの2階の部屋を想像していましたが、そこは平屋建ての1軒家が建ち並ぶタイプの集合住宅で、202号室という部屋はいくら探しても見つかりません。
そこで、ここに住むトルコ人の男性に聞いてみたところ、「このあたりでは中国人は見たことがない」と言います。
さらに、住所を確かめるため男性の在留カードを見せてもらうと、そこに書かれていたのは「G棟」という文字。この集合住宅では部屋番号としてアルファベットが使われており、202号室という部屋は存在しなかったのです。カードはやはり、偽造されたものでした。

【SNSが「偽造ビジネス」の温床に】

彼らは偽造在留カードをどのようにして入手したのか。私たちはSNSで取引されているという情報をつかみ、調べてみることにしました。中国で最も有名なチャットアプリで「在留カード」と検索し、手がかりを探します。すると、中国語で「在留カードなどの証明書の制作」「99%本物そっくり」などと、偽造を請け負う業者であることをうかがわせる投稿が次々に出てきました。

また、偽造在留カードとみられる画像や動画も投稿されていました。顔写真と氏名だけが消された在留カードや、カードの画像の中央に「在留カード専門」と表示されたもの。さらに、スニーカーの中敷きの下に在留カードを隠すという、配達の手口を紹介する動画までありました。

偽造在留カードはいったいいくらで取り引きされているのか。私たちは、動画を投稿する人物にチャット上で接触を試みました。するとさっそく、中国語で返事が。「在留カードは1枚1万円。2枚目からは半額になる」 私たちが次の質問を投げかけようとすると、突然、相手から電話がかかってきました。慣れた様子で説明を続けます。
「カードに使う本人の情報は写真だけ。あとは全部、金で買った他人の情報だ。東京に郵送する場合、国内からは2日、中国からは4~5日で届く。」
さらにこの人物は、偽造カードの販売とともに、不法滞在者向けに仕事のあっせんも行っていることを明かしました。5万円から6万円の手数料を支払えば、就労資格がある外国人として日本の工場に紹介するというのです。工場側が在留カードが本物かどうかを確認することはなく、偽造カードさえ持っていれば働けるといいます。
ここで私たちが、「違法な行為ではないのか」と問いただすと、相手は開き直ってこう語りました。
「雇用主も労働者を必要としており、不法就労者を使いたいオーナーもいる。彼らを使う人がいるからビジネスが成り立つ。すべては金のためだ。」

【背景には深刻な人手不足が…】

中国人の不法就労問題に詳しいジャーナリストの安田峰俊さんは、現場が慢性的な人手不足に陥る中、雇用する側のチェック体制が甘くなっていることが問題の背景にあると指摘します。
安田さんは、「在留カードの原本はチェックせず、コピーのみを提出させている企業は少なくない。偽造グループは、外国人を雇う企業が在留資格などをしっかり確認していないことを知り、それを悪用している。また、企業の側も明らかに偽造カードとわかって雇っているケースもあると思う。現場の人手不足が続く限り、『偽造ビジネス』と外国人の不法就労はなくならないだろう」と話していました。

人手不足の問題に対処するため、ことし4月からは外国人に新たな在留資格を設ける制度がスタートします。永住者や定住者ではない外国人の就労を事実上、単純労働の分野でも認めるこの制度。外国人材の受け入れ拡大が進むと期待される一方、悪質なブローカーの排除などが課題だという指摘もあります。「偽造ビジネス」がますます横行する結果とならないよう、今こそ取り締まりの強化が必要ではないでしょうか。

(2019年2月13日 放送)

札幌放送局 原祢秀平記者
札幌放送局 髙野浩司ディレクター
函館放送局 藤井凱大記者

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