NHK札幌放送局

新たな歴史刻んだコンサドーレ 快進撃支えたチーム改革の全貌

北海道クローズアップ

2018年12月25日(火)午前10時54分 更新

チーム創設22年、ついにJ1で4位という初の快挙を成し遂げたコンサドーレ。大躍進の原動力となったのは、今季就任した名将ミシャことペトロヴィッチ監督でした。チーム全員で攻めるミシャ流「超攻撃的サッカー」はどのようにして生まれたのか。来シーズンへ向けてチームが見据える新たな景色とは? チーム改革の全貌に迫ります。

ミシャ流「超攻撃的サッカー」 キーワードは “走る” と “連動”

1998年のJリーグ初参戦以来、J1とJ2を行き来してきた北海道コンサドーレ札幌。今季はこれまでの最高順位11位から、クラブ史上最高となる4位を記録しました。

現役時代にはコンサドーレで主将も務めた経験を持つ株式会社コンサドーレの野々村芳和社長は、今季の結果を次のように受け止めています。

「コンサドーレで20年以上やっていて、ずっとこの景色が見たかったというところにようやく、多くの人を連れてきてあげられたかなとは思っています。」(野々村社長)

躍進の原動力となったのは、今シーズン就任したばかりのミシャことミハイロ・ペトロヴィッチ監督。Jリーグの外国人監督で歴代最多勝利を誇る名将です。

ペトロヴィッチ監督が打ち出した「超攻撃的サッカー」によって、チームは去年までの守り勝つスタイルから一変。この超攻撃的サッカーを実現するため、ペトロヴィッチ監督が繰り返し訴えてきたのが、すべての選手がゴールを目指して走ることでした。

守りを担当するディフェンダーも例外ではありません。そのひとり、進藤亮佑選手は、1試合平均11キロ以上を走るチーム1の豊富な運動量で、ディフェンダーながら攻撃にも積極的に参加し4得点を記録。今シーズン、フィールドプレーヤーでチーム唯一の全試合フル出場を果たしています。

そして “走る” 以上に重要なのが、選手同士の “連動” です。5本以上パスをつないで決めたゴールは昨シーズンの2倍以上にもなりました。

選手の連動を高めるために行っていたのが、独特のミニゲーム。ボールに触れられるのは1回のみ、しかもパスを出した人に戻すのは禁止というルールを設けています。あえて動かざるをえない状況を作ることによって素早い判断力を養い、テンポ良い攻撃につなげようという狙いです。

「頭と体が両方疲れるサッカー。日本一難しい練習をしてると思っている。」(駒井善成選手)

「選手が一丸となって動くという考え方が大切です。全員を1つのボールに関わらせるという意識づけを行っているのです。」(ペトロヴィッチ監督)

コンサドーレの超攻撃的サッカーを象徴するシーンが見られたのが、9月のサガン鳥栖戦です。何人もの選手同士が連動しながらパスをつなぎ、ディフェンダーも積極的に攻撃してチャンスを作るという、ペトロヴィッチ監督が目指してきたサッカーの形でした。

「ディフェンダーの福森がクロスをあげ、進藤がヘディングを合わせました。後ろの位置で守るはずの2人が決定的なチャンスを作った、とても面白いシーンです。これが、私の理想とする展開でした。チームはより攻撃的なサッカーに向かって、大きく前進しました。」(ペトロヴィッチ監督)

超攻撃的なサッカーは、データでも裏付けられています。昨シーズンと比べて、得点は39から48に、シュート数も310から416へと、飛躍的な伸びを見せました。

監督が掲げた超攻撃的サッカーについて、ディフェンダーとしての意識の変化を進藤選手は次のように説明します。

「常にやっぱりボールに関わり続けるっていう意識は持ってるので、その結果こういう数字につながったというふうに思います。」(進藤選手)

“連動” の成果を語るのは、フォワードの都倉賢選手。今季の全得点を時間帯別に見ると、アディショナルタイムの得点がリーグ最多になっています。

「いろんな要素があると思うんですけど、チームとしてボールを握っている時間が長い分、相手はそれだけ走らされる。サッカーって80分くらいから急に体力がきつくなるスポーツなので、そういったなかで相手がどんどん体力なくなって、反対に僕らはまだ脚が使える状態なので、ボールに向かうパワーが残っているんじゃないのかなと思います。」(都倉選手)

信頼関係が “戦う心” 植え付けた 監督の人心掌握術

ペトロヴィッチ監督はユニークな「選手との向き合い方」で、チームの “戦う心” も変えていました。

「大切なのはリスペクトです。選手を尊重しなければ、監督も尊敬されません。会社も同じです。社長が敬意を払わなければ、社員から尊敬されないでしょう。」(ペトロヴィッチ監督)

ペトロヴィッチ監督は、スキンシップを密にし、選手の悩みにも進んで耳を傾けることで、サッカーに集中できる環境を作ろうとしていました。

「ファミリーってことばを監督はよく使うんですけど、本当に自分たちがあの人の子どもなんじゃないかなって感じるくらい、愛されてるのを感じるんですよね。」(石川直樹選手)

また、ときに感情をあらわにするペトロヴィッチ監督ですが、やみくもに怒っているわけではありません。

「選手が挑戦した結果なら、失敗に終わっても、私は “ブラボー” と称えます。指示に従うだけではダメです。自分自身で考えなくてはいけません。」(ペトロヴィッチ監督)

選手と信頼関係を築き、その意思を尊重することが、コンサドーレ飛躍の原動力となった積極的なプレーを生んでいたのです。

「 “ブラボー” のひと言を求めてやっている部分もありますから。攻めて攻めて相手を圧倒するという気持ちの部分と、技術面と、戦う部分というところはより植え付けてもらいました。」(福森晃斗選手)

ほかにもペトロヴィッチ監督は印象的なことばをいくつも残しています。ミーティングなどで繰り返し耳にすることで、選手たちにも影響を与えているのです。

大きな成果を見せ始めたアジア戦略

コンサドーレが好調なのは成績だけではありません。野々村社長就任以降のクラブの売り上げは右肩上がり。今シーズンは過去最高になる見通しです。

「単純に仲間が増えているんだと思うんですよね。仲間を増やさないと売り上げも増えないし、売り上げが増えないとチームも強くなれないんですよ。僕もサッカーあがりなんで、当然トップチームをどう強くするかってことを考えたときに、自分たちでできることはもちろん一生懸命やるけれど、得意じゃないことは得意な人たちを仲間にして売り上げを伸ばしていこうっていうような狙いを持ってやってきた。当然、選手のがんばりもありますけど、良い方向に転がってるかなと思います。」(野々村社長)

コンサドーレが掲げるスローガンは「北海道とともに、世界へ」。世界へ羽ばたくために、Jリーグのなかでも率先してベトナムやインドネシア、タイなどから選手を獲得し、アジア戦略に力を入れてきました。

とくに影響が大きかったのは、今シーズン8得点の活躍を見せたミッドフィルダー、チャナティップ選手の加入。小柄ながら華麗なテクニックを持ち、“タイのメッシ” とも呼ばれる選手です。

チャナティップ選手加入後、大勢のタイ人サポーターが札幌ドームへ観戦に訪れていますが、同時に北海道観光を楽しんでいく人も多く、外国人観光客全体の消費、経済にも影響を及ぼしています。

母国タイでもJリーグへの関心が高まりを見せていて、Jリーグのタイ語版 facebook のフォロワー数が日本語版の2倍にあたる35万人に急増。また、チャナティップ選手が自費で建設したサッカー場では、子どもたちがJリーグをひとつの目標として日々練習に励んでいます。

「(第2、第3のチャナティップ選手として)結構、アジアにもいい選手はいるので、育てれば十分Jリーグでもできるような選手を常に狙っておくのは大事なことかなと思ってます。タイの子どもたちにとってもJリーグ、北海道に来たい子が増えているのは良かったことですね。」(野々村社長)

J1では過去最高となる4位の成績を残し、巧みなアジア戦略で日本とタイのサッカー界にも変化を生み出しているコンサドーレ札幌。来シーズンの活躍がますます楽しみです。

2018年12月7日放送
北海道クローズアップ
「躍進!コンサドーレ~チーム改革の秘密に迫る~」より

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北海道の“いま” を見つめ続ける報道番組 1993年4月に放送を開始した「北海道クローズアップ」。 昨年度は、大きな被害を出した胆振東部地震について、被害の深刻さやそれに立ち向かう人々の姿を様々な角度から伝えてきた。また、AI農業の最前線や、TPPなどで貿易の自由化が加速する中での人々の新たな取り組みなども見つめ、北海道の様々な課題に向き合ってきた。この26年間の放送回数は、746回を数える。 平成から新たな時代にかわる節目の今年、番組では新たに新キャスターを迎え、番組の更なる飛躍を目指す。北海道の“いま”を、より分かりやすく、より深く。 「北クロを見れば、今の北海道がわかる!」 そんな報道番組をめざし、新たな可能性を探っていく。

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