NHK札幌放送局

「ファイト! 糸くずのような命の唄」取材記

番組スタッフ

2019年10月8日(火)午後3時39分 更新

北海道クローズアップで2回シリーズでお届けした、冒険家・荻田泰永と12人の若者たちの北極冒険物語。ついに総集編、50分で全国放送です。 

10月14日(月・祝) 10:30~11:20 総合 (北海道向け)
※総合の放送時間変更です。
10月15日(火)   19:00~19:50 BS1


極地冒険家の荻田泰永が、初心者の若者たちとともに1か月がかりで北極圏の氷上600kmを歩く冒険に挑んだ。就職2年目で壁にぶつかる営業マンや、北極の「色」を見たいと憧れる美大生、未知の世界に行ってみたいという牛乳配達店の息子など。圧倒的な大自然と仲間たち、命がけの真剣さに貫かれた冒険家の生き様にふれながら葛藤した若者たちの心の機微を描く。

取材記

あれは20数年前のことになる。
大学3年生だった私は、彼らのように、もんもんとしていた。「好きな仕事をすれば良い」と自由を与えられたものの、そんな仕事は見つからず、「何でもいいからやってやる」という思い切りの良さも持ちあわせず、もんもんとしていた。数十枚ものエントリーシートに「御社を希望する理由はうんぬん」と形式ばった言葉を連ねる友人たちを軽蔑し、それ以上に、軽蔑するばかりで何もしない自分に失望して。
そんな時、テレビで見たのが南極の番組だった。その瞬間の「ここに行ってみたい」という気持ちにすがり「極地に行けるかもしれないから」という理由を見つけて受験したのが、その後の勤め先となったテレビ局の試験だった。

 今回の冒険、本番には同行できなかったが、出発直前に現地・バフィン島で行われた訓練合宿に参加することができた。彼らと過ごした3泊4日の氷上キャンプ生活。私にとっては、20数年前の原点に帰る体験だった。一瞬で手袋が吹っ飛ばされる強風、氷点下30度を下回る気温、テントの内側をびっしりおおう霜、指先の凍傷、音もなく流れるオーロラ。そして何より、興奮していたり、不安だったり、揺れ動く若者たちの姿。同じ場に身をおけたことは、ディレクター冥利に尽きる。

 一方で、今回の番組制作の難しさは、制作者である私が冒険に同行していないことにあった。訓練合宿を終え、彼らが冒険本番に旅立った後は、日本で待つしかなかった。伝わってくるのは、毎日の定時連絡で報告される現在地点プラスαという程度。冒険中の映像は、同行した柏倉カメラマンが記録していたが、帰国後でなくては見られない。若者たちが何を感じているのかも、後から確かめるしかない。

 こうした制約の中、心がけたことと言えば、焦らないことだ。若者たちが帰国した後は、早く話しを聞きたい思いをぐっと我慢。いったん、彼らとコンタクトをとることを控えて、柏倉カメラマンが撮影した膨大な映像を整理し、丁寧に見る作業を進めた。続いて、発起人であり、若者たちとともに歩いた冒険家の荻田さんへのインタビュー。こうして集めた情報を、一枚の地図に落とし込み、いつ、どこで何が起きていたのか、冒険の全体像を把握することに務めた。ここまでに、およそ2週間。最後に、満を持して行ったのが、若者たち個人の心情に関わるインタビューだった。

 帰国から2週間という時間は、若者たちにとって、必死になって冒険していた時点の熱さと、後から振り返って自分を客観視する冷静さとが、ほど良く混じり合う上で、役に立っていた。彼らが紡いだ言葉は、みずみずしくスリリングな発見と、広大無辺な中で自身と向き合い続けた者ならではの深みとを併せ持っていた。「あの映像の瞬間、そんなことまで考えていたのか」「荻田さんの言葉を、そういうふうにとったのか」「カメラに映っていない場所でそんなことがあったのか」。聞いていると、初心者の集まりだった若者たちが、ある時は意識的に、ある時は無意識的に、互いに影響し合いながら、チームとして成熟していく様子が浮かび上がり、涙が出そうになった。

 一連の取材を通し、しみじみ感じたのは、人生の前提条件は、いつも変わらないということだ。彼らも、私も同じ。赤ちゃんも、いまわの際を迎えた者も同じ。人生は一度きりで、時間は限られている。若者たちの話を聞けば聞くだけ、俺はどうなんだと自らへの問いが湧いてくる。生きることに対する真剣さは、北極を歩いた者たちだけが求められているものではない。

NHKプラネット北海道 田辺陽一

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