NHK札幌放送局

札幌 福祉事業所が作る “ひと味違う” グルメサイトとは

ほっとニュース ミニ

2019年2月22日(金)午後5時20分 更新

今夜は友達と飲み会!そんな時、飲食店を探すのに便利なグルメサイト。みなさんはふだん、どんな条件で検索していますか?
いま、あるサイトが注目を集めています。

バリアフリーの情報発信

その名も「車いすでも入れる美味しいお店」というグルメサイト。「スープカレー」や「ジンギスカン」など、北海道らしい料理のジャンル一覧の下に、「店内に段差なし」や「傾斜あり」「通路の幅が90センチ以上」といった条件が12項目、イラスト入りで並んでいます。

飲食店のメニューだけでなく、バリアフリーの情報が細かく掲載されていて、これらの条件から検索することができるのです。
こちらのサイトには、札幌市内24の店に関する情報が載っています。

サイトを立ち上げたのは、佐藤成二さんと介護福祉士の平間栄一さん。きっかけとなったのは、車いすを利用する佐藤さんのある経験でした。

「(店舗の)サイトを見たらバリアフリーと書いてあったので、事前予約して行ったんです。でもその店は地下にあって、エレベーターがなかった。店としては車いすの方も来てくださいという気持ちで案内されたと思うんですけど、こちらとしては行けなかったんです」(佐藤成二さん)

誰でも入れると思っていたのに、入れない。そんな思いを少しでも減らせないか。
佐藤さんの話に耳を傾ける中で、平間さんはバリアフリーに配慮した飲食店を紹介しようと思い立ち、4年前に佐藤さんと2人でグルメサイトを立ち上げました。

「障害のある人たちみんなが外食する選択肢がどんどん増えるし、いいんじゃないかと思いました」(介護福祉士 平間栄一さん)

グルメサイトの取材現場

サイトの内容は、店で直接取材した情報が元になっています。

取材の中心となっているのは、障害のある人たち。

この日訪れたのは、くん製やカクテルが売りの地下にあるバーでした。

店自慢のパスタやカクテルがテーブルに並びます。料理の写真はプロのカメラマンが撮影。

取材チームがチェックするのは、料理の味付けや盛りつけだけではありません。実際にテーブルについた際に、車いすの高さにテーブルが合うか、足元が引っかかったりしないかなど、使いやすさを確かめます。

今回取材した店では、昨年12月にオープンした時から店内の間取りなど、障害者の利用を意識していたそうです。

段差がない床、そしてテーブルとテーブルの間も余裕をとった作りになっています。

取材の目的は単に店を「評価」するのではなく、障害者のちょっとした “気づき” を伝える機会でもあります。

ガラスで外側が見える入り口の扉。実は車いすを利用する人にとってうれしいポイントがあるそうです。

「自分の力だけでは開けられないのですが、扉が透明だと、私が外から店に来ても中の店員さんから私の姿が見えるので開けてもらいやすいんです」

取材で大切にしているのが、店とのコミュニケーション。感じたことや、あると嬉しいサービスなどもアドバイスします。
この時話題になったのは、ストローの太さについて。

「シチューを食べるとき、店の人に “ストローお願いします” というと細いストローしか出てこないことがあります。太いストローだったら具ごと吸えるんですよね。上半身に障害がある僕としては、ストローも細いのじゃなくて、なるべく太目で。ストロー1つあれば、自分の力で、自分で飲める。助けがなくてもできる」

「ストローが太いのがいいというのは初めて聞いたので勉強になります」(店主)

運営は福祉事業所

情報をサイトにまとめているのは、札幌市内の福祉事業所です。

車いす利用者の佐藤さんと介護福祉士の平間さんの2人でサイトの更新をしてきましたが、昨年6月に福祉事業所を設立。現在18人がこの事業所に「利用者」として登録され、取材や広告の募集などにあたっています。

「 “すごい参考になりました” と言っていただける人がいて、ちょっとでも助けになれたんだなと思って、うれしいです」(利用者)

グルメサイトの運営は、事業所と利用者の双方にメリットをもたらしました。

福祉事業所が抱える最大の悩み。それは利用者に支払うお金、いわばお給料をなかなか上げられないということでした。

平間さんたちが運営する福祉事業所は「就労継続支援B型」にあたります。重い障害などで「フルタイム」で働くことが難しい人にも勤務時間などが配慮されています。

一方で、作業にあたった利用者への「工賃」つまり給料がなかなか上がりません。平成29年度の時給の全国平均で205円。道内の平均で245円です。

「箸を袋に入れたり、内職みたいな仕事をたくさん頑張って取って来るんだけど、なかなか利益が出ないというのが現状としてある」(介護福祉士 平間栄一さん)

ところが平間さんたちの作業所ではサイトの運営により、広告料などが安定的に事業所に入るようになり、支払う時給は最大で500円。全国平均の2倍以上です。

この事業所では、利益の約4割がサイト運営による収入だといいます。グルメサイトが工賃の引き上げに大きく貢献しているとのことです。

障害者に役立つ情報の発信とビジネスとの両立。その可能性はさらに広がると平間さんは考えています。

「企業とタイアップして、利益をしっかり出していきたい。いろんなツールに増やしていきたいっていうのと同時に、全国で1つのツールとして確立していきたいなと思うんですよね。福祉で困ったらこれを見れば解決するという情報サイトはまだまだないんですよね。世の中に。そうしたツールで障害のある人が当事者となって活躍し、収入をちゃんと得ていける仕組みを作っていきたい」(平間さん)

これからは飲食店だけでなく、美容院やネイルサロンなどさまざまな分野に広げ、検索する人や掲載店舗のどちらもどんどん増やしていきたいと意気込んでいます。

このサイトをきっかけに、お店を選ぶときの判断材料として、おいしさやおしゃれさだけでなく、“どんな人にも配慮した優しいお店” という物差しが広がってほしい、と話す平間さん。

多くの人に気づきをもたらす取り組みの、今後の発展に注目です。

(2019年2月13日放送)

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