NHK札幌放送局

WEBニュース特集 新観光列車、期待の訳は

北海道WEBニュース特集

2019年7月31日(水)午後6時08分 更新

7月28日、運行が始まった新しい観光列車「風っこそうや」号。稚内駅には多くの鉄道ファンが訪れ、満席状態となりました。この列車、関係者からは特別な期待が寄せられています。いったい、どうしてなんでしょうか。
                             (2019年7月29日 放送)

【風っこ、28日運行開始!】

日本最北端のJR宗谷線を走る「風っこそうや」号。28日に運行が始まりました。8月12日までは稚内と音威子府、そのあと9月8日までは音威子府と旭川の間を、土日と祝日に1往復します。車両は窓ガラスが外され、宗谷のさわやかな風を感じることができる特別な仕様です。

もともとは27日に運行が始まる予定でしたが、大雨のために運休となりました。1日遅れの運行に、待ちわびた鉄道ファンは、「こういう列車に乗るの初めてで、北海道もしばらくぶりですのですごくすてきです」と興奮気味に話していました。この車両は自前ではなく、JR東日本から借りる異例の対応。それだけ特別な意味を持った列車です。

【存続の岐路に立つ宗谷線を走る】

その理由は、JR宗谷線が存続の岐路に立っているからです。風っこそうや号が走る宗谷線は年間50億円もの赤字が出ている路線。そのなかでも、今回、風っこも走る稚内ー名寄間はJRが「単独で維持することは困難」と発表した区間です。沿線の駅の1日の平均利用客が1人以下という駅も多く、100円の収入をあげるのに700円あまりの経費がかかっています。存続のためには収支の改善が不可欠。このため、「夏の宗谷線の雄大な自然」というテーマを掲げ、これを楽しむことに特化した観光列車を導入することで、観光路線としての存在感を高め、少しでも収益の上積みにつなげようという狙いがあるのです。

【自治体も期待をかける】

50億円もの赤字の解消は、もちろん簡単ではありません。ただ、路線の存続を目指す沿線自治体の中には、赤字を少しでも減らすにはこの列車を頼みにするしかないと、すがるような思いを寄せるところもあります。その様子が現れていたのは、7月11日、JR北海道が首都圏で行った風っこのPRイベントです。そこには沿線の名寄市の幹部の姿がありました。懸命の様子で、JR北海道の社員とともに、1日で2000枚のチラシを配り、利用を訴えました。名寄市総合政策部の石橋毅部長は「できることは一生懸命やって、JR北海道は厳しいけれど必要な線路なんだってことを全国にしっかりと訴えていきたいと思っています」と思いを込めて話していました。

自治体だけでなく民間レベルでも何とかして存続を図ろうという動きもあります。例えば、音威子府村では住民グループがクラウドファンディングで資金を集め、風っこの利用客を歓迎するてぬぐいなどのおもてなし道具を用意しました。

【存続に向けて試金石に】

存続の危機に直面しているのは、宗谷線だけではありません。宗谷線と同じように、JRが「単独では維持困難」としているのは、全部で8区間あり、赤字額の合計は120億円に上っています。国からの支援がなくては路線を存続できない状況ですが、国は支援の継続に条件を出しました。その条件は、来年度までに「JRと沿線地域が一体となって収支改善の見える成果を出す」というものです。これまで、沿線の自治体の中には存続を主張しながらも、まずはJRが努力すべきだとして「自分たちはなるべく負担は背負いたくない」という姿勢のところもありました。ただ、状況はがけっぷちで、残された時間はもはや少なくなっています。例えば▽利用の少ない無人駅の廃止や、▽駅の除雪コストを自治体が肩代わりするというような、自治体も痛みを伴うような、一歩踏み込んだ行動も必要な段階に来ています。今回の風っこが成功するかは、JRと自治体とが、うまく協力関係を築いて存続への道筋をつけられるかどうかを占う、試金石になると言えます。

(札幌放送局 永田真澄記者)

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