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WEBニュース特集 巨大津波から命を守るために

北海道WEBニュース特集

2018年6月1日(金)午後0時00分 更新

巨大地震のおそれが指摘される太平洋の千島海溝沿い。沿岸の地域では、大津波に備えて住民が速やかに避難するための態勢づくりが進められています。ほとんどの自治体ではすでに避難に関する計画もできていますが、中には大まかな方針を示すだけで具体的にどうするのか決まっていないところもあり、住民からは不安の声が出ています。

道内最大の津波想定の浜中町では

道東の浜中町には、大地震が起きた場合、道内で最大の34メートルの津波が押し寄せるおそれがあるとされています。町民のおよそ3人に1人は65歳以上。平地の広がる町では避難に車が欠かせませんが、車のない高齢者などの支援は、実は自治会や町内会に任されています。

住民からは不安の声も

漁業者の清野薫さんは、近くに住む91歳の小島利子さんを車に乗せて一緒に避難することなっています。しかし、清野さんが仕事などで迎えに行けない時に、誰が代わりになるのかなど、細かいところは決まっていません。近くに家族のいない小島さんは「歩いて避難しても周りに迷惑をかけるだけ。迎えがなければ避難をせず家にいる」と話しています。清野さんは「高齢者などを二重三重で支援する態勢を考えていかなければいけない。とても不安だ」と話しています。

人手不足で対応に限界

高齢者などの支援がなぜ地域任せなのか。町の庁舎にいる職員はおよそ160人。そのうち防災担当はわずか3人しかいません。浜中町の石塚豊防災対策室長は「人がたくさんいればそれなりに出来ることもあると思うが、現実的に難しい部分がある」といいます。

南海トラフ備える高知県黒潮町は“総力戦”

一方、以前から南海トラフ巨大地震の危険性が指摘されてきた西日本では、世帯ごとの具体的な避難の備えができているところがあります。太平洋に面する高知県黒潮町です。この町にも、最悪の場合、浜中町と同じ34メートルの津波が押し寄せると想定されています。町民の実に8割は浸水域に住んでいます。

町の全職員が防災業務兼務

危機感を強めた町は東日本大震災の2年後、「犠牲者ゼロ」を目標に掲げました。そのキーワードは「総力戦」。およそ200人の全職員が防災業務を兼務することにしたのです。町内を14の地域にわけて職員を割りふり、地域内の地区長などと日ごろから連絡を取り合い、訓練や会議などにも参加するようにしました。

1世帯ごとの避難態勢明確に

これをいかして町は浸水域にあるおよそ3800世帯すべてを対象に、それぞれ承諾を得たうえで、1世帯ずつ個人情報も含めた「避難カルテ」を作成しました。カルテには「避難方法は徒歩か車か」「車イスは必要か」「避難訓練でかかった時間」など書き込む項目が11あります。

中には「防災となり組」として、避難を支援する近所の人は誰か、3番目まで書く欄も設けられています。この結果、たとえば世帯の中の1人1人がどのように避難するか明確になり、世帯の中で対応できない場合は地域で支える態勢ができているか、町と住民が具体的に把握できるようになったということです。黒潮町区長会の森岡健也会長は「カルテが出来たことで各家庭の事情も把握出来るし、安否確認も出来る。みんなが一緒に逃げることで命をつないでいきたい」と話しています。

先進事例参考に実効性ある態勢を

浜中町は、今後、こうした取り組みを参考にしていきたいとしています。沿岸部の自治体は、地域任せにせず、犠牲者を1人でも減らすために何ができるか、各地の取り組みも参考にしながら、実効性のある態勢を作る必要があると思います。(2018年5月31日放送)

釧路放送局 種綿義樹記者


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