NHK札幌放送局

樺太・千島戦争体験の絵(4)色丹島のニコライ大佐

樺太・千島戦争体験の絵

2018年8月17日(金)午後4時00分 更新

戦後ソビエト軍が占領した北方四島の1つ、色丹島。人々がソビエト軍の監視のもとで生活を強いられるなか、兵士と日本人の子どもが接するという意外な事実があった。

男は流ちょうな日本語で話しかけてきた

小樽市の遠藤一郎さん(82)は、70年以上も前の1人の男との出会いを鮮明に覚えている。遠藤さんが絵に描いたのは昭和20年9月、家にやってきた青い軍服を着たソビエト軍の将校だった。男は流ちょうな日本語で、当時10歳だった遠藤さんに話しかけてきた。

“めんこい(かわいい)子どもだね”といいながら私の頭をなでてくれたんです。かっぷくのよい兵隊で、子ども心にすごいなと思いました。大きく見えた。あんな大きな人間を見たことないですからね。

男は「憲兵のニコライ大佐」と名乗った。

真っ白なパンが入った紙の包みを

ニコライ大佐は、無線局のそばにあった遠藤さんが暮らす家をたびたび訪れるようになった。ある日、一家に真っ白なパンが入った紙の包みを手渡した。遠藤さんは「初めて白いパンを見ましてね、おいしかった」と話した。子どもたちがパンを食べる代わりに、ニコライ大佐は日本の夕食を食べるようになった。

食卓では、ソビエト軍の兵士と集落の人との間でトラブルが起きていないかどうかや、日本の文化や習慣について細かく聞かれたという。

“日本人は一日どのくらいご飯を食べるんだ、茶碗に何杯食べるんだ”と全部聞いているんです。おそらく日本を統治するための資料作りをやっていたんじゃないかな。

遠藤さんは、ニコライ大佐が情報収集をしていたとみている。

「しっかり勉強しないと日本はだめになる」

食後には、遠藤さんたち兄弟に勉強を教えてくれたこともあったという。ある日、遠藤さんの学校の教科書を見たニコライ大佐が語りかけた。「日本は戦争に負けて悲惨な状態だけど、若者がしっかりとした勉強しないと日本はだめになる。俺が教えてやる」。

ニコライ大佐が教える中で特に記憶に残っているのは算数の勉強だった。まだ学校で習っていなかった分数を実演しながら教えてくれた。

1枚の紙をナイフで半分に切ると“これが2分の1だ。さらに半分に切ると4分の1だ”と実演してくれた。勉強は割り算やかけ算、だんだん高度になっていった。学校で教えてくれる内容より厚みがあるから面白かった。

今でも不思議

遠藤さんとニコライ大佐との関わりは、一家が色丹島を追われるまでの2年近く続いたという。故郷を奪ったソビエト軍の兵士と過ごした時間をどう解釈すればよいのか。今も答えを見いだせずにいる。

なぜ遠藤家と兄弟に対してソビエト軍の憲兵隊が優しい態度をとったのか、当時では考えられないようなつきあいをしていたわけです。なぜかというのは今でも不思議です。

遠藤さんは複雑な表情で話した。

※動画はこちらでご覧いただけます。

(2018年8月16日放送)

#樺太千島戦争体験の絵

関連情報

樺太・千島戦争体験の絵(5)おばさんの腰巻きに敬礼

樺太・千島戦争体験の絵

2018年8月20日(月)午後5時30分 更新

樺太・千島戦争体験の絵(2)国後島から決死の脱出

樺太・千島戦争体験の絵

2018年8月15日(水)午後3時30分 更新

樺太・千島戦争体験の絵(8)ソビエト軍上陸後に少年が出会っ…

樺太・千島戦争体験の絵

2018年8月30日(木)午後4時00分 更新

ほっとニュース北海道

ほっとニュース北海道

熱々で最新の“HOT”な、そして、安心して“ホッと”するニュース・情報番組。 その日のニュースを深く分厚く、道内7つの放送局のネットワークで地域情報を多彩に伝えます。プロ野球、Jリーグなどのスポーツ情報も毎日伝えます。

上に戻る