NHK札幌放送局

WEBニュース特集 大災害 医療を継続させるには

北海道WEBニュース特集

2019年6月26日(水)午後6時00分 更新

企業や自治体が大地震など大災害に備えてあらかじめ、どうやって業務を継続するかを策定しておくのがBCP=「業務継続計画」です。
とりわけ医療機関では、“命を守る”という機能を継続させるという点からBCPの策定が喫緊の課題で、国は災害時の拠点となる病院では策定を義務づけています。
去年9月の胆振東部地震で道内のほぼ全域が停電する「ブラックアウト」が起きた際には、400近い病院で人工透析が出来なくなるなど影響が広がりました。まさに“命を守る”という機能の継続が迫られる事態となりました。 道内の医療機関でのBCPの策定はどう進められているのか、現状を取材しました。
                             (2019年6月25日 放送)

【BCP備えていた病院でも】

札幌市手稲区にある「手稲渓仁会病院」は、災害時に24時間受け入れ可能な災害拠点病院です。
この病院では、すでに去年1月にBCPを策定していました。しかし、胆振東部地震を受けて課題が浮かび、改訂が必要になりました。

【課題1 自家発電機の燃料確保】

1点目は、治療に必要な電力をどう維持していくかです。
この病院では、地震による停電の直後、4機ある自家発電機が自動的に稼働しました。備蓄している燃料は3日分ありましたが、さまざまな医療機器で電気が使われて発電機をフル稼働させたため、1日半しかもちませんでした。
このため改訂では、医療機器の使用に優先順位をつけたほか、燃料を供給する業者に有事の際は優先して納入してもらう独自の協定を結びました。

【課題2 食料の備蓄】

2点目は、食料の備蓄です。
この病院では入院患者用の非常食を3日分蓄えていましたが、医療スタッフ用の食料は備蓄していませんでした。
改訂では、入院患者用の非常食の備蓄を5日分にするほか、医療スタッフ用の食料を蓄えることも検討しています。

【課題3 人手の確保】

3点目は、人手の確保です。
どの程度の規模の地震で病院に駆けつけるのか明確な規準がなかったため、医師や職員が足りず、少ない人数で診療を続けました。
このため震度5以上で、病院から5キロ以内に住んでいる人は出勤することなどを決めました。

手稲渓仁会病院 成田吉明院長

BCPを改訂することについて、手稲渓仁会病院の成田吉明院長は、「何事もなくても定期的に見直さなければいけないでしょうし、ある災害をもとに同じことが起きたら、このマニュアルで対応できるだろうかと見直していくのが現実的だ」と話しています。

【進まぬ病院でのBCP】

BCPを作っていた病院でも大きな災害が起きると万全とはいかないという現状があるなか、実は多くの病院で、BCPを策定すらしていないことがわかっています。
去年の胆振東部地震を受けて厚生労働省や道は、小規模な診療所を含めた道内975施設を対象にアンケート調査を行い、63.5%の619施設から回答を得ました。その結果、全体では81.6%、505施設が策定していませんでした。

【BCP策定を進めるには・・・】

兵庫県立大学大学院 室崎益輝教授

BCPの策定が進まない現状について、兵庫県立大学大学院の室崎益輝教授は、「一番問題なのは、事業継続計画を作る意義があまり病院の方に理解されていないと思う。事業継続計画を作ろうと思っても時間的ゆとりがなく、忙しくてあとまわしになっているのではないか」と指摘しています。その上で、室崎教授は病院での策定を進めるためには、「病院にだけ責任を押しつけてはいけない。行政や防災関係の専門家も含めて病院にアドバイスをして一緒に計画作りをする体制を作らないといけない」と話しています。

道は、すでにBCPを策定したほかの病院の参考事例をホームページで紹介したり、病院に立ち入り検査を行った際に策定を促したりしていくということです。
北海道では、去年大きな地震を経験しただけにさまざまなところがサポートして病院のBCPの策定に結びつけていく必要があります。

札幌放送局:永井華子キャスター 
板橋健次ディレクター
福岡由梨記者    

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