NHK札幌放送局

WEBニュース特集 ウポポイでなぜ慰霊? #アイヌ

北海道WEBニュース特集

2019年10月25日(金)午前11時00分 更新

来年4月24日に白老町にオープンする『民族共生象徴空間』=「ウポポイ」。博物館や体験学習ができる施設が整備されますが、ウポポイが担う役割は展示や文化の継承だけではありません。実は「慰霊」という大切な役割も負っています。各地の大学が研究目的で保管しているアイヌの人たちの遺骨の多くがウポポイに集められ、慰霊されることになっているのです。ただ、この「慰霊」のあり方について議論が起きています。(2019年10月23日 放送)

【アイヌの遺骨がウポポイへ】

ウポポイに整備された慰霊施設はことし8月にすでに完成しています。各地のアイヌの墓標をイメージしたレリーフで彩られた納骨堂のほか、カムイノミといった伝統儀式ができる施設も設けられました。
アイヌの遺骨は明治から昭和にかけて、研究目的で掘り出され、2000体以上が各地の大学で保管されたままです。「先祖の骨を返してほしい」と大学に対してアイヌの人たちからは提訴が相次ぎ、和解を経て、いま返還が始まっています。ことし国は遺族や掘り出された地域がわかる遺骨は、申請があれば返還する方針を決定。しかし、遺骨の多くは記録がずさんで、返還されるのは一部にとどまる見通しです。そこで、大部分の遺骨がウポポイに集められ、慰霊されることになったのです。


【慰霊施設には期待の声】

北海道アイヌ協会の加藤忠理事長は「博物館だけでなく、慰霊施設も立派なものを国で用意してくれたのはとてもうれしい」と話します。慰霊施設の整備を求め、当時の鳩山総理に直談判するなど、各地でバラバラになった先祖の骨を取り戻し、供養したいと奔走してきました。活動の中で、明らかになってきたのが、保管の実態。慰霊とはあまりにほど遠い現状でした。加藤理事長によりますと、各地の遺骨は、「文化財」として見せ物のように展示されたケースがあったほか、ほこりをかぶって放置された状態のものもあったというのです。加藤理事長は「非常に粗末に扱われていた」と指摘した上で、「この先、安心して慰霊できる場所ができること自体が大きいメリットだ」と今回の施設の意義を説明します。

特に加藤理事長の思いが込められたのは、施設内に立つ高さ30メートルのモニュメントです。アイヌを見守る神、シマフクロウが描かれました。加藤理事長は「モニュメントは近くの国道から見えるように立っていて、通る人が『あれは何だろう』と思うだろう。誰でも訪れることができるよう施設を開放したい。ウポポイに目を向けてもらうことで日本社会が、少しずつでも共生の社会に向かって欲しい」と期待を語ります。


【遺骨の集約には批判も】

しかし、一部からは批判も出ています。返還活動に取り組んできた浦河町杵臼地区のアイヌの団体、「コタンの会」もそのひとつです。10月はじめ、「コタンの会」は北海道大学から遺骨の引き渡しを受け、ほかの先祖も眠るふるさとの墓地へ再び埋葬しました。故郷とは関係のない白老町のウポポイに遺骨を集約する国の方針に反対しています。

コタンの会の清水裕二さんが「(遺骨に)“帰ってきてよかったよね”と声をかけてやりたいと思う」と安堵の声を漏らした一方、葛野次雄さんは「誰がどう言おうと遺骨はふるさとで眠ることが一番よいことだろう。それに比べて、ウポポイはどうなのか」と疑問を投げ掛けます。


【遺骨の問題は解決していない】

遺骨は仮に返還を受けても、慰霊できる態勢が整えられない地域が多いのも事実ですが、集約後にどうするのか、議論することが重要です。
先住民政策に詳しい神戸大学大学院の窪田幸子教授は「非常に短い時間で決められたことなので、十分に返還が進んだとはいえない。慰霊の施設に納められても、まだ返せるものはあるはずだ」と指摘します。
実際、「コタンの会」が今回引き渡しを受けた遺骨は北海道大学が独自に調査を続けた結果、最近になってわかったものです。まだ調査の余地はあるとみられます。
窪田教授によりますと、オーストラリアでは国立博物館に調査拠点を設け、専任スタッフを置いた上で、遺骨に付随した資料だけでなく当時の新聞記事を照らし合わせるなど、調査を続けているといいます。
今回の集約で大学側の責任がなくなるわけではありません。当時の研究倫理では許容されていたことはいえ、多くが無断で持ち出されたことは事実です。
窪田教授は国や大学が謝罪をしていないことを指摘した上で、「大学そして研究者、国は責任を持ち続けなければならない」と話します。そして「本当の意味での民族共生象徴空間とするには、これをきっかけとしてアイヌ民族の新しい関係性を作り出していくべきだ。単に踊りを見せたり、文化をみせたりだけではく、もっと彼らが積極的に実質的に関わっていけるような場所になっていく機会にできないか」と提案します。
さまざまな議論がある慰霊施設。国や大学がこれまでしてきたことをあらためて認識し、アイヌの人たちとの新しい関係作りのきっかけにしてほしいと考えます。

(札幌放送局 福田陽平記者)

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