NHK札幌放送局

WEBニュース特集 ブラックアウト 知られざる要因

北海道WEBニュース特集

2019年9月9日(月)午後3時04分 更新

去年の胆振東部地震では、北海道がほぼ全域にわたって停電するブラックアウトが起きました。これまで、その大きな原因と指摘されてきたのが道内最大規模の苫東厚真火力発電所の停止です。しかし、北海道電力などへの取材から、これに加えて意外な要因が、ブラックアウトの発生に大きく関わっていたことが分かりました。
                              (2019年9月5日 放送)

【緊迫、ブラックアウトの瞬間】

北海道電力中央給電指令所。全道の電力の需要と供給を調整する北電の心臓部です。ここで指揮を執っている森田將敬指令長に話を聞きました。森田指令長は地震の当日、全道の発電所などと連絡を取り、停電の回避に追われたと言います。その時の様子について、「警報音がいろいろ鳴り響いて系統全体が異常を示していた。とにかく異常な事態、これまでに起こったことのない事態が発生したと、そういう思いでした」と話しました。


【停電の知られざる要因】

当時、道内で稼働していたのは、最大規模の苫東厚真火力発電所、規模の小さい3か所の火力発電所、それにいくつかの水力発電所でした。これまで、このうちの苫東厚真火力発電所にある3基の発電機が相次いで停止したことが、ブラックアウトを引き起こしたとされてきました。

しかし、今回の取材で、森田指令長はもうひとつの要因について初めて語りました。森田指令長は、「引き金としては苫東厚真になるかもしれませんが、それと同時に地震の揺れによって送電線の事故が発生したということが大きな原因、複合要因です。送電線が健全であればブラックアウトには至らなかった」と指摘したのです。


【カギは「ジャンパー線」】
森田指令長が語った送電線の事故とはどのようなものだったのか。その送電線は、道央と道東を結ぶ「狩勝幹線」です。このある部分が、揺れによってトラブルを引き起こしていました。

その現場を北電の職員とともに訪れると、職員は「地震発生の際に電線の揺れによって、“ジャンパー線”も振動して揺れました。それが鉄塔側に近づいたことで地絡事故が発生しました」と説明しました。このジャンパー線、送電線の一部で放物線の形をしていて、ショートを避ける役割を果たしています。このジャンパー線が、地震の揺れで想定していた範囲を超える動きをしたのです。


【“頼みの綱”も切れブラックアウトに】

研究機関の電力中央研究所が、震度7程度の地震をもとに事故に至る過程をCG・コンピューターグラフィックスで再現しました。このCGで、ジャンパー線は電流が流れたままの状態で、揺れ始めます。揺れ幅は次第に大きくなり、鉄塔に接近。ジャンパー線と鉄塔が接触しそうになった、その時、恐れていた現象が起きました。「アーク放電」と呼ばれ、空気など気体に電流が流れる現象です。これによって送電線がショートし、電気を送れなくなりました。この時、北電は道東の水力発電所からの電力でなんとか持ちこたえていました。しかし、狩勝幹線などの大きな送電線がアーク放電によって次々とショートし、水力発電所からの供給も途絶えてしまいました。苫東厚真火力発電所の停止、そして、想定外の事故で送電線が寸断されたことがブラックアウトを決定的なものにしたのです。


【北電、対策工事を進める】

今年6月、北電は厚真町や安平町でジャンパー線の対策工事を実施。ジャンパー線が鉄塔に触れないように、特殊な部品を取り付けました。これによって、震度7程度の地震が起きても、送電線と鉄塔の間に一定の距離が保たれ、ショートを防止。事故のリスクを減らすことができるとしています。一連の対策について北電の藤井裕社長は、「今回の地震で起きたその原因となりうるところ、ここを一つ一つ潰していくことが大事だ」と述べました。


【「想定外」が常、北電は緊張感を】
北電では、こうした送電線の対策に加えて、新設された石狩湾新港の火力発電所の稼働、本州から電力を融通する送電線の増強を行ったことで、ブラックアウトのリスクはできるだけ低くできたとしています。とはいえ、今後も「想定外」の事態が起こらないとは限りません。去年、北海道が陥ったような危機を二度と起こさないためにも、北電には常に緊張感を持って十分な備えをしておいてほしいと思います。

(札幌放送局 山内洋平記者)

関連情報

WEBニュース特集 16歳の死が問いかけるもの ~道立高校…

北海道WEBニュース特集

2019年5月10日(金)午後6時00分 更新

WEBニュース特集 子どもを事故から守るには

北海道WEBニュース特集

2019年5月14日(火)午後5時30分 更新

WEBニュース特集 巨大津波から命を守るために

北海道WEBニュース特集

2018年6月1日(金)午後0時00分 更新

上に戻る