NHK札幌放送局

WEBニュース特集 地震から2か月 やるせない思い

北海道WEBニュース特集

2018年11月13日(火)午後3時30分 更新

「ああ、終わったな」。地震直後に駆けつけた作業中の炭火小屋は強い揺れで出火。火は一昼夜燃え続け全焼してしまいました。 

「今が潮時かもしれない」

むかわ町で木炭の製造を営む伊藤吉英さん(69)は地震で作業場を失いました。炭焼きを始めたのは18年前のことでした。20年以上務めた地元の会社を辞めて挑んだ新しい仕事でした。炭焼きの経験がない中、妻の静子さんと試行錯誤を重ねながら販路を広げ、取引先は札幌や室蘭など道内各地に広がりました。

火事による被害は、2人で積み上げてきた経験や仕事のやりがいを一瞬にして奪い去りました。「今が潮時かもしれない」。2人で話し合い、廃業することにしました。静子さんは「18年間、長いようで短かったね」と夫に語りかけました。

11月に入り、炭を買いに来た日高町にある居酒屋の経営者の男性にやめることを伝えました。3年間、購入してくれたお得意さんでした。男性は「一般で売っている炭より、はじけないし、においもないし、火持ちもよかった。残念ですね」と寂しそうにつぶやきました。静子さんの目は潤んでいました。

静子さん「いい炭と褒められていたから自慢だったのね。こればっかりは仕方ない」
伊藤さん「もうちょっと仕事を頑張りたかった。落胆はけっこうあったね。悔しいけど終わったなという感じ」

営業再開を阻む資金難

資金難から廃業を決断する事業者も少なくありません。清川眞千子さん(69)は創業から100年がたつ老舗旅館を30年にわたって経営してきました。地域からも親しまれてきましたが、その歴史に終止符を打つことにしました。

今回の地震で客室の壁がはがれるなどの被害を受け、建物は「一部損壊」の判定を受けました。営業を再開させるには耐震工事などで少なくとも2000万円かかります。

清川さんは「私はもう70歳。借金を返していけないの」と力なく話しました。返済の見込みはなく、子どもは町を離れて後継者もいないことから、旅館再開を断念することにしました。建物は11月中に解体します。

清川さん「自分たちで旅館を守っていかないと、とわかりながらも“やめるなら今だ”という気持ちになってしまった」

廃業を食い止められるか

被災が引き金となって廃業に追い込まれた事業者たち。むかわ町商工会によりますと加盟する200あまりの事業者のうち7割ほどが被災し、18億3000万円の被害が出ているということです。
「このまま廃業を見過ごすわけにはいかない」。商工会では廃業を少しでも食い止めようと仮設店舗の建設を計画し、来年春ごろまでに完成を目指しています。また、まちづくりの将来像を話し合う場もつくる予定です。

地元商工会の山崎会長 廃業した被災商店の跡地で
むかわ町商工会 山崎満敬会長「廃業が早まる事業者が相次いで残念でならない。今後はいろんな人の知恵を借りながら、やっと復興できたなという日が来るように前に進めていきたい」

まちをどのように復興へと導いていくのか、被災地は難しい課題に直面しています。

(2018年11月5日放送)

室蘭放送局 遠藤英訓記者


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