NHK札幌放送局

【取材の現場から】北海道150年への様々な思い

札幌局編成スタッフ

2018年12月20日(木)午前11時30分 更新

北海道と名付けられて150年。そのはるか昔からこの地に住んできたアイヌの人々にとっては、どんな時代だったのでしょうか。12月20日(木)、ETV特集「アイヌらしく 人間らしく~北海道150年 家族の肖像~」で放送します。

北海道大学でアイヌの歴史や社会制度を研究してきた石原真衣さん。博士論文では、近代化にともなう社会構造の変化や、同化政策の中で、アイヌの血を引く人々がたどった過程を明らかにしました。

その中で特に注目したのが、アイヌの出自を隠し、沈黙して生きてきた人々の存在でした。真衣さんの祖母や、親戚たちも、このような一人でした。
同化政策や差別、偏見の中で、生きていくため、アイヌの文化やコミュニティに背を向けざるを得なかった、数多くの人々。こうした人たちは、世代間でも分断され、アイヌのルーツを持つ者どうしでも分断され、「サイレント・アイヌ(=自分が何者か分からず、声を上げることさえできない存在)」になっていったと、真衣さんは指摘します。
その上で、この150年の歴史を見つめることは、異なる民族やルーツ、異なる文化をもつ人たちが、理解しあうということだと、希望を込めて未来を展望しました。

真衣さんは博士論文には書ききれなかった、たくさんの人たちの思いを、いま、1冊の本にまとめようとしています。一口に「アイヌのルーツを持つ」と言っても、経験してきたことや、今思っていることは多様であり、そうした声を世間に広く届けたいという願いから、出版を企画しました。
真衣さんの本には、若者からお年寄りまで、様々な立場の人たちが率直な意見を寄せています。

【写真:母・イツ子さんから家族の話を聞きとる石原真衣さん】

この1年間、「北海道150年」取材チームは、様々な声を聞いてきました。
番組には盛り込めませんでしたが、札幌市内に暮らす70代の女性が、印象的な話をしてくれましたので、少しご紹介させてください。

今回の「150年記念式典」には、若い世代のアイヌの人たちが多数参加し、伝統的な歌や踊りを披露しました。彼女もお子さんが出演するなど、周囲からは「すごいね、誇らしいね」と言われます。当然、子どもの活躍が嬉しくないわけはありません。しかし、彼女はその胸中を「すごく複雑」と表現していました。

開拓の歴史は、その一方で、アイヌの人たちに長く暗い影を落としてきたからです。子どもが晴れの舞台に立つ喜びの一方で、「私より上の世代の人たちは、正直、(北海道150年のおまつりは)いやなのさ。大変な目にあってきたからね」という思いがありました。
そして、彼女はこう言いました。「でも、子どもたちにはそういう負なものを引き継がせたくないの。卑屈になるから」。
そう、いつの時代も、次の世代を思って、親たちは選択を重ねてきたのです。
その思いの深さに、私は言葉が出ませんでした。

2020年に向けて、アイヌ新法や、民族共生象徴空間の検討が進んでいますが、その成果が表面的なもので終わらないように、報道に関わるひとりとして、努力を続けていかなくてはいけないと感じています。

一つひとつの家族に、次の世代によりよい未来を残そうと、踏ん張ってきた先人たちの姿、かけがえのない物語がありました。
番組でご紹介できたのはそのごく一部ですが、いまこの国に生きる多様な人たちが、過去を振り返り、ともに未来を考えていく一助になれば、これ以上の喜びはありません。


ETV特集 アイヌらしく 人間らしく~北海道150年 家族の肖像~

2018年12月20日放送


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