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WEBニュース特集 地方議会 危機の活路は

北海道WEBニュース特集

2018年3月1日(木)午後0時00分 更新

月給14万円。これは北海道内のある村の議員の報酬です。手取りだとさらに少なくなります。補欠選挙を除く道内144の町村の直近の議会選挙の実に3分の1で、無投票や定員割れになっている現状で、存続の危機に立たされている地方議会。私たちに最も身近であるはずの地方議会が活路を見いだす方策は。 

“24時間議員”でも報酬は少ない

定員8の上川の占冠村議会は、1人の議員が任期途中で辞職し、現在も欠員が続いています。議長を務める相川繁治さん(80歳)は、30年近く村議会議員を務めています。「信念として、365日24時間、議員であると思っている」と話す相川さん。

相川さんは、日々の活動として、新聞の切り抜きなど地元の情報を集めることを欠かしません。手帳には村の懸案事項がびっしりと書き留められています。
村民から「除雪を手厚くして欲しい」「子育て支援を充実して欲しい」などと相談や要望を受け、その実現に向け活動しています。
しかし、この村の議員報酬は月額14万円。手取りだとさらに少なくなります。このため、ほとんどの議員がほかの収入に頼らざるを得ず、他の仕事と兼業したり年金と合わせて生活しています。

議員の仕事にやりがいや責任を感じていると話す相川さんも、兼業していた農業を家族や知り合いに手伝ってもらいながら、何とか乗り切っていました。
こうした状況はほかの道内の町村も同じ傾向です。町村議会議員の報酬は平均で月額18万円。「議員報酬だけでは生活ができない」「兼業するにしても、仕事への負担があまりに大きい」として、立候補をためらう人が多いのが実態です。

理解得られるか? 報酬アップ目指す議会

こうした中、議員報酬の引き上げを検討しているのが十勝の浦幌町議会です。
3年前の選挙で定員割れとなったのをきっかけに、有効な対策を検討してきました。 2月6日に議会が開いた報告会で初めて、報酬を月額3万7000円増やして21万2000円とする案を町民に提示しました。
議員報酬の額に明確な根拠がなかったため、報酬の引き上げを検討するにあたって、「浦幌方式」という独自の基準を作りました。
議会出席に加えて、視察、町民対話、質問準備など、議員としての活動日数を割り出し、町長の給料の30%が適当だと算出しました。

この日の報告会では、議員の仕事に理解を示し、報酬の引き上げ案に賛成する意見が多かったということですが、現状のままでいいという意見もありました。
浦幌町議会の田村寛邦議長は、「なり手不足の問題について町民に理解していただきながら出来ることをやっていきたい」と話しています。

進む議会離れ

議員報酬を上げるのはそう簡単ではありません。 多くの自治体で財政状況が厳しくなっていて、引き上げには住民の理解が不可欠です。
取材を通して、住民にとって身近なはずの地方議会が身近に感じられなくなっているという声も聞こえてきました。
背景には、議会でなく、行政に直接要望や意見を伝える機会が増えていることや、財政状況の悪化で、議会による政策判断の余地が少ないことなどが指摘されています。

住民巻き込み関心高めろ

議会活動に関心を持ってもらうことで、議員のなり手の確保につなげようとしている議会もあります。十勝の芽室町議会は、5年前から「議会モニター制度」を導入しています。
公募した20人の町民をモニターに委嘱。モニターとなった町民は、日頃から議会や委員会を傍聴します。その上で、年に3回、議員と対話する機会があります。
この会合では、議員が議会について直接、説明するとともに、モニターからも提言や率直な疑問を出します。

お互いに意見を交わすことで、モニターの町民に議会の仕組みや、議論されている内容に理解を深めてもらい、議会を身近に感じてもらおうという狙いがあります。参加した女性は、「議員が町のことを一生懸命考えてくれているという“芽室愛”みたいなのが伝わってきました。自分にも出来ることを探していこうと思いました」と話していました。
芽室町議会の広瀬重雄議長は、「『議会はこういう活動をやっている』『こんな議論をしている』ということを見てもらい、モニター制度がきっかけとなって『自分も議員に出てみたい、やってみたい』となれば、なり手不足の解消の1つの制度ではないか」と話していました。

社会全体で環境作りを

地方議員のなり手不足の解決に向けて、対策に動き出した議会。 地方議会に詳しい専門家は、即効性のある解決策はないものの、立候補しやすい環境を作ることが効果的だと話します。

北海学園大学の山本健太郎准教授は、「地道にできることとしては、議員の待遇を改善すること、議会への出席など議員の拘束日数を減らすこと、それに議会の開催時間帯を後ろにずらすといった対策があります。さらに、われわれ社会の側としても、普通の会社員であっても会社を辞めずに選挙に立候補できるようにする、あるいは兼業のための時短を認めるなどが考えられます」と指摘しています。
各地で行われている選挙に続き、来年春には統一地方選挙が行われます。 地方議会は誰のためにあるのかを住民が納得できなければ、議会の存続そのものが危ぶまれます。
私たちの生活に大きく関わる地方議会を活性化していくために、議会だけでなく、企業や私たち一人ひとりも関心を持ち、考えていくことが必要です。(2018年2月28日)

帯広放送局 鈴木啓太記者/札幌放送局 北井元気記者


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