先輩たちの仕事

普段は聞こえてこない声を伝え
見ている人に「気づき」を与えたい

ディレクターとは
ディレクター(報道番組) 報道局 社会番組部 柳田 理央子 (2013年入局)

学者よりメディアなら大勢の人に伝わる

学部時代は、国際政治ゼミで武力紛争下の女性に対する性暴力について研究しました。大学卒業の年に東日本大震災が起こり、大学院に入ってからは、避難所や仮設住宅で女性達にハンドマッサージをするボランティアをしながら、避難生活の中で女性が強いられる困難な状況について研究しました。
将来は国際機関で働きたいと思い、そのために大学院へ進んだのですが、このまま研究者になろうかと考えた時期もあります。けれど、論文を書くよりもメディアで伝える方がもっと多くの人に現状を知ってもらうことができるのではないか、関心を持っていなかった人たちにも、テレビなら映像を通してわかりやすく伝えられるかもしれない、と考えるようになり、NHKを志望しました。

離島でのんびり取材した贅沢な時間

初任地は松山放送局です。1年目は主に、四国4県向けのニュースのリポートを担当しました。月1本のペースで、約4分間のリポートの取材・構成・ロケ・編集を自分で行います。最初は何を撮ったら良いかも分からず、ベテランカメラマンさんと一緒にロケに行き、現場で教えてもらいながら仕事の基礎をおぼえていきました。
松山での忘れられない思い出は、数十年来の念願が叶って橋が架かるという離島で、島の人達の悲喜こもごもを描いた「にっぽん紀行」を作ったことです。数ヶ月通い続け、歩き回って取材しました。小さな島だったので、「あの子また来てる」と、島中の人達におぼえてもらって。おいしい魚や大量のみかんをもらったり。ゆっくりじっくり取材ができて、本当に豊かで贅沢な時間でした。

ニュース番組のディレクターって?

5年目に東京の放送センターに異動になり、「おはよう日本」の7時台の特集を制作しています。最近では、トランスジェンダー向けの専用下着について。トランスジェンダーの人たちが感じている心と身体の負担を少しでも軽減しようとする取り組みを取材しました。「おはよう日本」は朝、何かしながら見ている人が多く、男女問わず幅広い年齢層の方が見ている番組です。何気なく番組を見ている人にも、こんな問題があるんだなと知ってもらうきっかけとなるような特集を作っていきたいと思っています。
特集以外にも、翌朝4時半から放送するニュースを夜のうちに制作する、泊まり勤務もあります。大きな事件が起きるとみんなで分担して、短時間でバーッとニュースを作り上げることも。時間との闘いです。

ディレクターは周りを巻き込む仕事

ディレクターは一人では何もできません。カメラを回すのはカメラマンだし、インタビューするのはアナウンサーだったり。取材の意図をチームに明確に伝えられれば、みんながその方向に動いてくれます。みんなでやることで自分にはない発想が出たり、現場で全く違うことが起こって、その方が面白かったりということもあります。
取材先にも、あなたのこういうところを伝えたくて取材しているのだとわかってもらうことが大切です。時には話したくないようなことも聞かなくてはいけませんが、それを社会に伝える意義を共有できていれば、語ってもらえます。
仕事を通じて実現したいのは、困っている人の助けになるということ。大きな声なら我々が取り上げなくても聞こえてきます。普段の生活では聞こえてこない小さな声にきちんと耳を傾けて伝えること。マスコミの意義はそこにあると思います。

私のリアルとは

これまで取材をしてきた中で、「世の中には自分の価値観ではかれない、いろいろな人がいるんだなあ」と感じています。自分の狭い世界にとらわれず、たくさんの人のリアルな声を聞いていきたいと思います。