先輩たちの仕事

番組のテーマや意図を読み解いて
それを音で表現していく

音響デザイナーとは
音響デザイナー デザインセンター 音響デザイン部 東本 佐保 (2014年入局)

偶然知った音響デザイナーの仕事

就職活動中に友達から「NHKには、こんな仕事あるんだって」と教えてもらったのが音響デザイナーの仕事でした。早速ホームページを見て、面白そうな仕事だと思いました。しかも専門知識は必要ないと書いてあって、これなら私にも出来るかも? と興味を持ちました。学生時代は心理学を学ぶ一方で、オーケストラサークルに所属し、ホルンを演奏する毎日でした。もともと音楽は好きだったので、ぼんやりとですが将来は音楽に関わる仕事ができたら良いなと考えていました。
面接で聞かれたのも、NHKの番組を見てどう思ったか、これからテレビはどうなると思うかといったことでした。専門的な知識は一切問われませんでした。入局するまでは、番組にあわせてただ曲をつける仕事だと思っていたのですが、番組の全ての音をコントロールする仕事なのだと分かり、想像していたより面白い仕事だと感じました。

3年目で「とと姉ちゃん」1週間分を担当

とにかく先輩たちの仕事を見ながら、音響デザインの基本的な考え方から技術まで、徐々に学んでいきました。入局3年目に連続テレビ小説「とと姉ちゃん」のチームに入ることになりました。
最初はアシスタントとして生音と環境音の担当をさせてもらいました。ドラマでは、役者さんのセリフ以外の全ての音を音響デザイナーが後からつけていきます。立ち上がったときの衣擦れの音、机にコップを置いたときの音などが生音。これは、実際に後から録音したり、補強したりします。環境音はその場を取り巻く音で、スズメの鳴き声や、子どもの走る足音など。「とと姉ちゃん」は昭和の設定だったので、外からSL の音が聞こえてくるだろうか、などといった時代考証も行います。
22週目に1週間分を全て担当させてもらいました。作曲家の方に作って頂いた「とと姉ちゃん」用の約180曲のオリジナル曲から、「このシーンにはこの曲をかけよう」などと、音の設計を行います。仕事の難しさや責任、一切の妥協を許さない先輩たちのすごさを実感することのできた貴重な経験でした。

ドキュメンタリーのテーマを音で表現

現在は、情報・構成番組グループの一員として、「クローズアップ現代+」「ドキュメント72時間」などの音響効果業務を担当しています。番組のテーマや意図を音で表現していくことが大きな仕事になります。例えば災害がテーマの場合、差し迫った状況であることを音でどう伝えるか。この部分は大きな問題であるということを自分で読み取り、それを曲で表現します。
例えば、行政の問題点がテーマである番組において、被害者の方のインタビューに必要以上に悲しい曲をつけてしまうと、その方のドラマのようになってしまい番組の意図が伝わらなくなります。人が泣いているから悲しい曲、衝撃的なシーンにはショッキング曲などと単純につけていくと印象を操作してしまうこともあり、そこは難しいですね。自分の考え方が出る仕事だと思います。

音について真剣に話し、衝突することも

ドキュメンタリーは放送当日に映像ができることも多いので、前もって提案票を読むところからスタートし、試写などに参加してディレクターと意見を交換します。番組はこういう流れになりそうだなと予測して、音楽や効果音を準備しておきます。音を入れるタイミングが放送間近になることもあり、結構ハラハラすることもあります。
NHKは番組作りに真摯で熱い人が多いです。ディレクターやプロデューサーと音についても真剣に話し合えます。時には衝突もありますが、言われたことをやるのではなく、自分の考えもぶつけ合い番組を作り上げていくやりがいは大きなものです。
音の表現を通じて、見た人の心に残る番組を作ることを目指しています。最近ではCGやVRの技術が進歩しているので、それに対応した最先端の音響表現などにもどんどんチャレンジしていきたいです。

私のリアルとは

リアルを伝えるために音がどういう役割を担えるのか? をいつも考えています。そのために、現場を知っているディレクターとの会話を大切にすることを心がけています。自分の視点を的確に音で表現するには、まだまだ修行が必要です。