先輩たちの仕事

中国を一つの軸として
世界のニュースと向き合う

記者とは
記者 報道局 国際部 為井 貴規 (2005年入局)

社会の最前線で取材し、伝えたい

大学では、アメリカ政治のゼミに所属するなど国際政治を学びました。休みになるとアジアや中東、アフリカ、アメリカなど、大学で学んだ地域に足を運び、その土地に暮らす人々の生活や考え方に触れました。こうした経験を通じて、「社会でいま何が起きているのか」、現場で取材し、それを伝える記者の仕事を目指すようになりました。就職活動では、新聞社の採用試験もうけましたが、テレビ局では、学生時代から「NHKスペシャル」などのドキュメンタリー番組が好きだったこともあり、NHKを志望しました。
初任地は名古屋放送局です。最初の3年間は、愛知県の事件担当として、いわゆる夜討ち朝駆けの毎日を過ごしました。先輩記者や取材先から取材のイロハを学びながら、県内で起きる事件や事故、その背景を必死になって追いかけました。当時の経験が、国際ニュースを取材するようになった今でも、自分の基礎になっていると感じます。

海外派遣制度で北京の大学へ

名古屋放送局には、6年間在籍し、事件担当の後、空港担当や経済担当として幅広い取材を経験しました。異動のタイミングでは、海外特派員になりたいという目標を持っていたことから、希望を出して、東京の報道局国際部に配属されました。
国際部で取り組んだのは、中国に関する取材です。国際社会で存在感を増す中国に関心はあったものの、実は、当時は中国語を話すことができませんでした。国際部の最初の2年は、中国語を学びながら、出張ベースで中国に取材に行きました。ただ、中国報道を本格的に志す上で、中国語の習得は重要です。また、異なる政治体制のもと、当局の規制を受ける中国メディアの現状などを理解したいという考えもあり、NHKの海外派遣制度に応募しました。この結果、国際部3年目は北京にあるメディア人材を輩出する大学に1年間籍を置き、中国語を学びながら、中国メディアの記者やアナウンサー、メディア業界を目指す学生たちと交流しました。

中国のあらゆる現場に足を運んだ5年

海外派遣を終えた後は、2014年から特派員として上海支局に3年、北京の中国総局に2年勤務しました。この際、北京の大学で研修生として学んだ経験は大きな助けとなりました。取材で使う中国語はもちろんですが、多様な中国社会で生きる人々がどのような環境で生活しているのか、研修生として学んだ経験をもとに取材を深めました。
去年夏まで中国で勤務した5年間は、政治や経済、社会問題、事故や災害など、中国のあらゆるニュースを取材しました。中国共産党の重要会議が開かれる北京の人民大会堂、超高層ビルが建ち並ぶ上海の金融街、経済発展から取り残された地方の農村など、中国各地の現場に足を運びました。巨大な隣国と日本はどう向き合っていくべきなのか、駐在する各国の外交官や企業関係者とも多くの意見を交わしました。心に残っているのは、「いま何が起きているのか」、現場で取材に応じ率直に話をしてくれた中国の人々です。中には、中国では敏感な政府への批判までリスクを覚悟して、本音で語ってくれた人もいました。中国社会で生きる人々の本音や息づかいに触れ、取材した日々は、かけがえのない経験です。

世界のニュースを深く、わかりやすく

中国から帰国後は、報道局国際部のデスクをしています。各国に駐在する特派員や国際部の記者と連携して取材の計画を立て、ニュースの放送につなげる仕事です。国際報道の難しいところは、海外で起きている事象を、日本でいかに深く、分かりやすく伝えるかです。インターネットの普及によって、あらゆる情報が瞬時に世界を駆け巡るなか、「速報性」「正確性」に加え、「わかりやすさ」を意識しながら、世界のニュースと向き合う毎日です。
NHKは、各取材分野に専門知識を持ち、「何を取材し、どのように伝えるのか」真剣に議論を交わせる“同志”ともいえる仲間が多く、記者として「知りたい」「伝えたい」という思いを実現しやすい職場だと思います。 私は、中国を専門分野とする記者として、今後も変化する中国と世界の国々との関係を、様々な角度から取材を続けたいと考えています。

私のリアルとは

日本国内、海外を問わず世界中のあらゆる現場に、そこで暮らす1人1人のリアルがあります。記者の仕事は、取材を通じて、そのリアルに触れるものです。そこには、心を動かされるリアルがあり、ときに想像もしなかったようなリアルがあります。記者として、少しでもそのリアルに近づき、多様な社会のいまを伝える努力を続けたいと思います。