先輩たちの仕事

問われるのは、知識や技術ではなく
世の中を見る目

ディレクターとは
ディレクター(報道番組)報道局 社会番組部 篠崎 貴志 (2013年入局)

キャリア採用で民放からNHKへ

大学では社会学専攻で、マスコミ関係の授業をとっていました。どこにでもいる大学生で、漠然とテレビ局を志望していたものの、何をどう努力すればなれるのかもわかりませんでした。そんな中でも意識的にしていたのが、いろいろな物事に触れることです。ひたすらテレビを観る、映画を観る、本を読む、海外一人旅に行く、人と出会う場には必ず出て行く、などなど。テレビはドラマ、バラエティー、報道番組などジャンル問わず見ていました。
民放テレビ局に就職し、報道番組を担当していました。5年ほど働いた後、キャリア採用でNHKに入局しました。NHKの場合ディレクターはずっとディレクターとして仕事ができ、報道番組も「NHKスペシャル」や「クローズアップ現代」のような長尺の番組がある。1人のディレクターがつくれるものがたくさんあるのもNHKの魅力だと思いました。

初任地長野でNHKの流儀を学ぶ

民放とNHKでは番組のつくり方も違います。NHKにはNHKの流儀があるので、初任地の長野放送局ではそれを学んでいきました。「NHKのど自慢」や高校野球などNHKらしい番組にも携わることができましたし、とても楽しかったですね。
地域放送局に行くと、地域放送局ならではの洗礼があります。長野放送局でディレクターをする上で、通らなければならないのが山関連の番組でした。忘れられないのは、北アルプスの涸沢という場所に集う人々に密着した「ドキュメント72時間」です。片道6時間の登山と1週間のテント生活。「72時間」の最中に大雨に見舞われて撮影を一時中断するなど散々なロケに…。でも、ロケの神様は舞い降りるもので、最終日には奇跡的に雨が上がり、最高に美しい朝焼けが出現。大自然の神秘と、それに魅了される人々の表情は、番組のこの上ないラストシーンになりました。

ニュースウオッチ9のディレクターに

長野で4年弱過ごし、東京の放送センターに異動になりました。「おはよう日本」で2年間、現在は「ニュースウオッチ9」で日々の放送に携わっています。番組メンバーの独自取材はもちろん、他にも政治部や社会部の記者、各地方放送局の取材など、NHKが持つすべての情報・映像を総動員して、その日のニュースをつくりあげていきます。
一番の醍醐味は、番組の総責任者、有馬・桑子両キャスター、プロデューサー、ディレクターが一同に会してニュース項目について議論する「円卓会議」です。「どんな切り口で伝えるか」「この情報も盛り込んだ方がいいのでは」など、意見を出し合って方向性を決めていきます。
ニュースの各項目を担当するディレクターはこの円卓会議に、たたき台のVTRやコメントの案を持参するのですが、「これじゃ伝わらないのでは?」と厳しい意見を受けることもしばしば。
問われるのは、知識や技術ではなく、「世の中を見る目」です。これは日頃からいろいろな物事に触れ、いろいろな人と話をして、いろいろなことを考えていないと身につきません。自分の人間力を試されているような気がしつつ、刺激的で成長を実感できる毎日を送っています。

アイデア次第で挑戦させてくれる

「ニュースウオッチ9」のように大勢の知を結集させ、自分一人では到底できないようなものを生み出せるところも規模や人員の多いNHKならではですが、関心を持ったテーマをじっくり掘り下げることができることもNHKの良さだと思います。
昨年の夏、もともとニュースの特集企画として制作したテーマを深めて、「戦争と幻のオリンピック」というNHKスペシャルの番組を制作しました。この番組では、有名スポーツ選手とロケをしたり、象徴的なシーンをアニメで表現するなど、演出面でも工夫を凝らしました。半年ほどかけて一つの番組にじっくり携わることができました。年齢や実績を問わず、アイデア次第でどんなことにでも挑戦させてもらえる環境がNHKにはあります。

私のリアルとは

テレビは必ずしも「リアル」をありのままに伝えているわけではありません。編集し構成しナレーションをつけ、多かれ少なかれストーリー仕立てに料理しています。その時に大事なのは、「リアル」に嘘をつかず、「リアル」以上にその本質を伝えるよう料理することです。ディレクターが100人いれば、100通りの番組ができます。自分なりの視点で、上手に「リアル」を料理するために日々精進しています。